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ソフトバンク、5G時代の主要技術を先取る「Massive MIMO 2.0」~「混雑時の低速撲滅」目指す

 ソフトバンクとWireless City Planningは、「SoftBank 4G」に新たな通信技術を導入する。9月22日から商用展開を開始。全国の都市部より提供を開始し、エリアを順次拡大していく方針。

 今回導入される4つの技術は、LTEのマルチアンテナ技術「MIMO」を拡張したもので、次世代の「5G」の要素技術と目されているもの。

 ソフトバンクはこれらを「低速撲滅」のための技術と位置づけ、混雑するエリアでも快適に通信できる対策として導入する。SoftBank 4Gに対応するすべての機種が、今回の新技術に対応する。ただし、2014年以前に発売された端末では、東名阪エリアのみの対応となる。

Massive MIMO 2.0

 「MIMO」は、送信側(基地局)と受信側(スマートフォンなど)がそれぞれ複数本のアンテナ使って通信することで、一度に送信するデータ量を増やし、高速に通信するという技術。アンテナを2本ずつ使う「2×2 MIMO」や、4本ずつ使う「4×4 MIMO」などが実用化されている。

 ソフトバンクが2016年に導入した「Massive MIMO」は、ユーザー側の端末ではこれまで通り、2本のアンテナを使う一方で、基地局のアンテナを数十~数百本に増やして通信する技術。多くのアンテナを操作することで、電波の発射方向を制御し、データを送りたい端末に集中させる(指向性を持たせる)。

 すると、同じ空間内で効率的に電波を送信できるため、他の端末との干渉を防ぐことができる。同じ空間内で複数のユーザーに対してデータの送受信が可能となり、端末が多数存在する(混雑している)状況でも、低速にならず、安定して通信できる、というのが、Massive MIMOの概要だ。

 今回、同社はこれを強化し、「Massive MIMO 2.0」として展開する。具体的には、利用する帯域幅を20MHz→30MHzへと拡大。さらに3.5GHzのTD-LTEネットワークにもMassive MIMOが導入される。

 また、Massive MIMO技術をベースとして「Distributed MIMO」「MultiUser MIMO」「UL MultiUser MIMO」という3つの技術を導入する。

Distributed MIMO

 新たに導入される「Distributed MIMO(分散型MIMO)」は、大ゾーン基地局の中に複数の小基地局を配置する技術。複数の基地局の動作をクラウド上で一括管理する「基地局のクラウド化(クラウドRAN)」が前提となっている。

 小基地局同士を協調して動作されることで、干渉を防ぎつつ端末に向けて電波を送信できるようになる。基地局を高密度に配置できるようになるので、特に混雑するエリアで有効な技術といえる。

MultiUser MIMO

 LTEで導入された当初のMIMO技術では、1つの基地局(アンテナ2本)に対し、1つの端末(アンテナ2本)が対応し、データを送信する形だった(2×2 MIMO)。

 「MultiUser MIMO(MU-MIMO)」では、基地局側のアンテナをたとえば4本に拡張。2台の端末にそれぞれ2本、基地局側のアンテナを割り当てることで、高速に通信する。

 同社は、「Massive MIMO」技術の応用として、MU-MIMOを導入。下り通信時、最大4台の端末への同時伝送が可能になる。既存基地局のアップデートにより、順次導入される。

UL MultiUser MIMO

 「MU-MIMO」は下り通信(基地局からユーザー端末への通信)のみの技術だったが、「UL MultiUser MIMO(UpLink MultiUser MIMO/UL MU-MIMO)」では上り通信で同時伝送を実現する。

 9月には、AXGP基地局で2台の端末による同時接続が可能となり、将来的には同時に4台まで拡大される。SNS投稿や画像アップロードなども、より快適に利用できるようになるとしている。

“低速撲滅”がコンセプト

ソフトバンク テクノロジーユニット モバイル技術統括 モバイルネットワーク本部 本部長 野田真氏

 13日にソフトバンクが実施した発表会にて、同社のモバイルネットワークを統括する野田真氏が登壇。「Massive MIMO 2.0」などの新技術を紹介した。

 野田氏は「モバイル通信というとよく、600Mbpsといった、机上で計算される最大通信速度を競うものがあるが、ソフトバンクはそうではなく、快適に提供する通信環境をいかに提供できるかを追求したい」として、“低速撲滅”というコンセプトを紹介。混雑するエリア・時間帯で快適に通信できるようなネットワークの構築へ取り組む姿勢を示した。

8月に開催された「Pokémon GO STADIUM」での反響や、5Gに向けた取り組みも紹介

 デモンストレーション動画として、東京・立川市のMassive MIMOエリアで行った実証実験を披露。Massive MIMOに対応するエリアにおいて、複数ユーザーがいる場合に、他社よりも高速にダウンロードできるとアピールした。

デモンストレーション動画