レビュー

「Nothing Phone (1)」レビュー、ユニークなのは“光る背面”だけじゃない

 英国のNothing Technologyが発表した、「Nothing」ブランドとしては第1号のスマートフォンとなる「Nothing Phone (1)」。日本では8月から販売される予定で、国内向けの価格は8GB+256GBのモデルが6万9800円となっている。

 発表時は、背面が光る「Glyph Interface(グリフインターフェイス)」と呼ばれるしくみが大きな話題になった。

 しかし、「Nothing Phone (1)」のユニークさはそれだけにとどまらない。「ワクワクを失った市場に何か新鮮なものを」という思いのもとに開発され、ハードウェアとソフトウェアの両面で、ユーザーの好奇心をかきたてようとする、意欲的な要素が盛り込まれている。

 Nothing Technologyのカール・ペイ(Carl Pei)CEOが「自分たちで使いたい、そして友人や家族にも見せたいと思えるような製品にした」と思いを語った「Nothing Phone (1)」は、いったいどんなスマートフォンになっているのだろうか?

 そこで本稿では、「Nothing Phone (1)」のレビューをお届けする。

“開封”も体験のひとつ

 「Nothing Phone (1)」のパッケージを手にした人は、それがスマートフォンの箱であることに気づかないかもしれない。

 人によっては、特装版のCDアルバムのような印象を抱かせるその箱には、端のほうに文字が小さく記されており、ほかでもない「Nothing Phone (1)」のパッケージであることを示している。

 パッケージの開け方も、スマートフォンにしてはきわめて独特だ。お菓子の箱などによくあるジッパー加工が施されており、小さなつまみを持ち上げて引っ張っていくと、「Nothing Phone (1)」が姿を現す。

 Nothing Technologyが掲げる“ワクワクするような体験”は、パッケージを開けるところから設計されたかと思わせるしかけだ。

遊び心が入ったクリアボディ

 「Nothing Phone (1)」のカラーはホワイトとブラックの2種類で、本稿では前者をレビューする。

 その数、実に400以上にのぼるという背面のパーツは、それぞれ微妙に異なる雰囲気をまとっている。Nothing Technologyの共同創業者(Co-founder)であり、マーケティング統括(Head of Marketing)のアキス・イワンジェリディス(Akis Evangelidis)氏によれば、「白色の部分も微妙に色が違う」。

 よく見てみると、色だけでなく、表面の加工も異なっていることがわかる。さまざまなパーツが配置された「Nothing Phone (1)」の背面は、不思議と調和している印象を与え、開発陣がひとつの作品をめざしたことを垣間見せる。

 ただ、中央の円と、そこから少しはみ出したような切れ込みはまるで果物のよう。白いボディに、2つのカメラ、中央の円という組み合わせから、iPhoneを意識したのだろうか、とつい考えてしまった。

 洗練された近代アートのような雰囲気をもつ「Nothing Phone (1)」だが、実は遊び心も隠されている。そのひとつが、背面下部の“ゾウのような”パーツ。

 カール・ペイ氏は「人の温かみを感じられるプロダクトを提供したい」と語っており、一見無機質なデザインのなかに、開発陣の思いが宿っている。

“ゾウのような”パーツも

 「Nothing Phone (1)」は、6.55インチのフレキシブルOLEDディスプレイを搭載する。

 カール・ペイ氏が「通常の2倍のコストがかかるが、譲れなかった」と語ったのは、四方のベゼルの厚みを均一にすること。特徴的な背面同様、前面にもNothing Technologyの哲学が息づく。

付属品やアクセサリーから垣間見えるこだわり

 「Nothing Phone (1)」の付属品や、今後提供されるというアクセサリーのデザインからも、「Nothing」ブランドの一貫したコンセプトが感じられる。

「Nothing Phone (1)」の付属品。中央はSIMピンで、SIMピンとしてはユニークな見た目をしている

 詳しい販売情報はまだ明らかになっていないが、純正のアクセサリー類としては、最大45W出力の充電アダプター、端末を保護するクリアケース、ディスプレイ用のスクリーンプロテクターが用意される。

充電アダプター
左:スクリーンプロテクター、右:クリアケース

唯一無二の「Glyph Interface」

 そして、「Nothing Phone (1)」における最も大きな特徴のひとつが「Glyph Interface」だ。

 974個の光るミニLEDライトで構成される「Glyph Interface」は、ユーザーにメールの受信や通話の着信、充電の進捗などを伝える。また、撮影時には被写体を照らす役割も果たす。

 メールや通話の相手によって光り方のパターンを変えられることに加え、「Flip to Glyph」というユニークな機能もある。

 これは、「Nothing Phone (1)」のディスプレイ側を下にして机などに置くと、通知が「Glyph Interface」の光だけになるというもの。スマートフォンなどから少し距離を置く、デジタルデトックスの考え方を意識した機能と言えそうだ。

「Glyph Interface」の設定。ミニLEDライトの明るさなども変えられる
「Flip to Glyph」

“素のAndroid”にかなり近い「Nothing OS」

 「Nothing Phone (1)」は、Android 12ベースの「Nothing OS」を搭載する。

 プリインストールアプリは極力抑えられており、収益性を犠牲にしてでも、ユーザーにとって不要なソフトウェアを指す“ブロートウェア”はゼロにしたという。

 カール・ペイ氏による「Androidのデフォルトアプリには良いものがたくさんあり、私はAndroidのデザインが好きです」という言葉どおり、「Nothing OS」の使い心地は“素のAndroid”にかなり近い印象を受ける。

ホーム画面
プリインストールアプリの数は極力抑えられている
設定画面

Nothingならではの細かいアレンジも

 一見すると“素のAndroid”と大きく変わらないように感じられる「Nothing OS」だが、細部でアレンジされている。

 たとえば、ステータスバーを下にスワイプすると現れる「通知ドロワー」。多くのユーザーが頻繁にアクセスするであろう、ネットワーク設定とBluetooth設定の2つを円形で大きく表示することで、視認性とアクセス性を向上させている。

通知ドロワー

 また、プリインストールアプリの「レコーダー」アプリは、どこかレトロな雰囲気が漂うものとなっている。録音データの再生時は、アナログテープのリールのような部分を動かすことで、再生位置を調整できるしくみだ。

 そのほか、「Nothing」独自の壁紙や着信音なども用意されている。

 ユニークなのは、ホーム画面に設置可能なNFTウィジェットにまつわるストーリーだろう。Nothing Technologyのエンジニアチームが、「Nothing Phone (1)」のバグなどを修正するなかで、NFT(非代替性トークン)に対するチームの興味が高まった。これがきっかけとなり、同ウィジェットの採用に至ったという。

「Nothing」の壁紙
「Nothing」の着信音
ウィジェット類

カメラの台数は「多いほうが良い」とは限らない

 「Nothing Phone (1)」のアウトカメラは2眼構成で、メイン50MP(F値1.88)+超広角50MP(F値2.2)という構成。

 メインカメラにはソニー製センサー「IMX766」が、そして超広角カメラには、サムスン製センサー「JN1」が採用されている。

 現在のスマートフォン業界では、3眼構成や4眼構成のカメラを搭載する端末も珍しくない。しかし、カール・ペイ氏は、「Nothing Phone (1)」の発表イベントの場で、「カメラが多ければ多いほど良い」という昨今の風潮に異を唱える。

 「重要なのはカメラの台数ではなく、その品質だ」と強調する同氏の姿勢が、「Nothing Phone (1)」のアウトカメラのシンプルな構成に反映されていると言えるだろう。

「Nothing Phone (1)」による作例(本稿の作例は、すべてタップorクリックで元ファイルへアクセス可能)
0.6倍
通常撮影(1倍)
2倍
3倍
5倍
20倍
ポートレートモード
マクロ撮影にも対応する
通常撮影
2倍ズームで撮影
5倍ズームで撮影
夜景
カメラアプリのUIや設定

オープンなエコシステムへ、テスラとの連携など

 Nothing Technologyが掲げるのは「オープンなエコシステム」であり、「Nothing Phone (1)」とサードパーティ製の製品の連携も推し進める。たとえばアップル(Apple)のワイヤレスイヤホン「AirPods」については、バッテリー残量を確認できるという。

 発表会でも触れられていたとおり、今回の試用では、「Experimental Features(実験的な機能)」として、電気自動車で知られるテスラ製品との連携機能の存在を確認できた。

 「Nothing Phone (1)」の発表に先立って行われた報道陣向けのプレブリーフィングでは、カール・ペイ氏ら開発陣が今後の機能拡充への意欲を示しており、ワクワクするような機能の登場に期待しても良さそうだ。

テスラ製品との連携を示す「Connect to Tesla」
「Nothing Phone (1)」の主なスペック
項目内容
大きさ159.2 × 75.8 × 8.3mm
重さ193.5g
チップセットQualcomm Snapdragon 778G+
OSNothing OS(Android 12)
メモリーと内蔵ストレージ8GB + 128GB
8GB + 256GB
12GB + 256GB
ディスプレイ6.55インチ フレキシブルOLED(2400 × 1080)
Corning Gorilla Glass
120Hz駆動
アウトカメラ メイン50MP(ソニーIMX766)F値1.88
センサーサイズ1/1.56インチ
OIS、EIS
超広角50MP(サムスンJN1)F値2.2
センサーサイズ1/2.76インチ
画角114度
フロントカメラ16MP(ソニーIMX471)F値2.45
センサーサイズ1/3.1インチ
バッテリー4500mAh
33W有線充電
15Wワイヤレス充電(Qi)
5Wリバースチャージ
SIMカードデュアルSIM(nano-SIM)
5Gn1、n3、n5、n7、n8、n20、n28、n38、n40、n41、n77、n78
4Gバンド1、2、3、4、5、7、8、12、17、18、19、20、26、28、32、34、38、39、40、41、66
Wi-FiWi-Fi 6、802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4G/5G デュアルバンド
BluetoothBluetooth 5.2
FeliCa非対応
NFC対応
防水防塵IP53
生体認証顔、指紋(画面内)
ソフトウェアサポート3年間のAndroidアップデート
4年間のセキュリティパッチ適用(2カ月ごと)