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「Nothing Phone (1)」、英国・ロンドンから配信された発表イベントのようすは?

 英国のNothing Technologyは、「Nothing」ブランドの新製品として、Androidスマートフォン「Nothing Phone (1)」を発表した。英国・ロンドンでの発表イベントのようすは、YouTubeでライブ配信された。

 本稿では、その配信の内容をお届けする。なお、詳細なスペックなどは本誌別記事でご紹介している。

インターネット社会ならではのアプローチ

 配信ではまず、Nothing TechnologyのCEOのカール・ペイ(Carl Pei)氏が登場。どこかレトロな雰囲気漂うカフェで、リラックスした雰囲気の同氏は、「Nothing Phone (1)」に関するエピソードを披露する。

 「Nothing Phone (1)」に関しては、今回の発表前から、本体デザインの一部をSNSなどで見せるという手法がとられた。この背景には、「すべてのリーク情報をコントロールすることは困難」という、インターネット社会ならではの理由もある。とはいえ、カール・ペイ氏は、インターネット上で見られた「Nothing Phone (1)」へのポジティブな意見などに感謝しているという。

 また、「Nothing Phone (1)」の最初の100台は、刻印付きでオークションに出された。最初の「Nothing Phone (1)」は3000ドル(約40万円)以上で落札され、合計で10万ドル(約1400万円)以上が集まったようだ。

 ここまで語ったところで、「この場所は少し騒がしいですね、別の場所に移動しましょう」とつぶやいたカール・ペイ氏。舞台は映画館のような場所へ移る。

「Nothing Phone (1)」の独自機能「Glyph Interface」

 「最近のスマートフォンのリリースはかなり退屈で、たいていスペックや機能に関するものです。そこで私たちは、何か新鮮なものを市場に送り出したいと思いました。モダンなスマートフォンをキャンバスにして、その背面に面白いものをつくりました」と同氏は語り、「Nothing Phone (1)」の背面にある「Glyph Interface(グリフインターフェイス)」を披露した。

 「Glyph Interface」では、多数のLEDライトが光ることによって、メールの着信などをユーザーに知らせる。メールの送信者や電話の発信者などによって光るパターンを変えられるほか、充電の進捗を知ることもできる。

 続いてカール・ペイ氏は、サステナビリティに関する考えを述べた。

 「Nothing Technologyの創業以来、サステナビリティはずっと重要視してきました。ただ、私たちにとってサステナビリティとは、多くを語るべきものではありません。それよりも、実際に行動を起こし、事実を述べることが重要なのです」と語った同氏。「Nothing Phone (1)」で、再生アルミニウムが100%使用されているフレームを採用したことなどを紹介した。

“そのままで素晴らしい”Android

 「Nothing Phone (1)」は、Android 12ベースの「Nothing OS」を搭載する。この根底にあるのは、「“素の”Androidを最大限に活用する」という考え方だ。

 カール・ペイ氏は、「スマートフォンのエクスペリエンス(経験)の核となるのがOSです。なぜ、一部のAndroidブランドが重いOSを搭載するのか、私には理解できません。私はAndroidのデザインが好きですが、Androidの上に重いスキンを置くと、すべての動作が遅くなります」と語る。

 そのうえで、「Androidのデフォルトアプリには良いものがたくさんあります。だから、それらを私たち自身のもので置き換えるのはやめませんか。私たちの時間と労力は、ユーザーに付加価値を与えるようなものに集中させましょう。私たち(Nothing Technology)のビジョンは、人とテクノロジーの間に垣根がなく、スマートフォンをデジタルライフ全体のハブとして活用できる世界です」と、Nothing Technologyの目指す世界を紹介した。

オープンなエコシステムを構築

 開かれたエコシステムを目指すNothing Technologyは、「Nothing OS」と他社製品との連携も推し進める。同社がすでにリリースしたワイヤレスイヤホン「Nothing ear (1)」と「Nothing Phone (1)」の連携は言うまでもなく、サードパーティ製の製品もコントロールできるようにする。

 その第1弾となるのが米テスラの電気自動車で、ユーザーは車に乗り込む前にエアコンをつけておけるようになるなど、さまざまなコントロールに対応する。

派手な機能よりも、安定性と品質

 「ソフトウェアに関して言えば、私たちのアプローチは、機能をたくさん作ることよりも、安定性と品質を重視することです。なぜなら、スマートフォンは(人々の暮らしにとって)必要不可欠な製品であり、緊急事態が発生した際にも動作しなければならない可能性があるからです」とカール・ペイ氏。「派手な機能を多く搭載するよりも、安定性や信頼性のほうがはるかに重要」と強調した。

 Nothing Technologyのエンジニアチームも、品質の担保に多くのリソースを割いており、500人以上のエンジニアがバグの修正などを行っていたという。そのなかでNFT(非代替性トークン)に対するチームの興味が高まったことで、「Nothing Phone (1)」のホーム画面に小さなウィジェットが置けるようになった。

カメラの多さ、本当に重要?

 続いて、カール・ペイ氏は、「Nothing Phone (1)」のアウトカメラについて言及。「Nothing Phone (1)」は2眼構成のアウトカメラを搭載しており、「カメラが2つしかない」と見る向きもあるかもしれない。

 しかし同氏は、「カメラが多ければ多いほどいい」という風潮に異論を唱える。「最近のスマートフォンには3つから4つのカメラを搭載したものもありますが、実はカメラの数が多ければ写真の品質が良いというわけではありません。実際、こうしたブランドの多くでは、良いカメラを1つ搭載し、ユーザーを信じさせるために3種類の安価なカメラを搭載している」と語るカール・ペイ氏。

 そういった場合、長い目で見ればブランドに対する信頼が損なわれると警鐘を鳴らす同氏は、「だから、私たちは『Nothing Phone (1)』をシンプルにしました」とアピールした。

 「Nothing Phone (1)」のアウトカメラにはそれぞれ、ソニー製のセンサー「IMX766」と、サムスン製のセンサー「JN1」が採用されている。

2倍のコストをかけてでも貫いた、ディスプレイへのこだわり

 「Nothing Phone (1)」は、6.55インチのフレキシブルOLEDディスプレイを搭載する。最大120Hzのリフレッシュレートや240Hzのタッチサンプリングレートにサポートし、カール・ペイ氏が「バターのようになめらか」とたとえた操作感を実現する。

 また、ベゼルの厚さが四方で均等なそのデザインも、Nothing Technologyの並々ならぬ情熱が注がれた部分だ。

 カール・ペイ氏は「一般的なAndroidスマートフォンは、下部のベゼルがほかの部分より少し厚くなっています。これは、画面をマザーボードに接続するためのコネクタリボンがあり、それが追加のスペースを取っているためです」と説明。これに対して「Nothing Phone (1)」では、折り曲げられるフレキシブルOLEDディスプレイを採用したことで、下部のベゼルが厚くなる問題を解消した。

 ただし、この決断によって、通常のディスプレイの2倍のコストがかかったという。「この決断は、データで正当化することができません。果たして(『Nothing Phone (1)』は)商業的に成功するのでしょうか?」とカール・ペイ氏は語るが、同氏は「しかし、自分たちで使いたい、そして友人や家族にも見せたいと思えるような、誇れる製品をつくる必要があるのです」と続け、「Nothing Phone (1)」に込めた情熱をのぞかせた。

これはライブ? 発表会イベントの最後にはユニークな試みも

 「Nothing Phone (1)」に関する紹介のしめくくりとして、カール・ペイ氏は、チップセットに「Qualcomm Snapdragon 778G+」を採用したことや、4500mAhのバッテリーを備えていることなどを紹介した。

 日本では8月から販売される予定の「Nothing Phone (1)」は、7月16日に英国・ロンドンのコヴェント・ガーデンでお披露目され、18日には、一部の小売業者で購入できる。そして、21日に公式発売されるという流れだ。

 現地での価格は399ポンド(約6万5000円)からとなっている。

 発表イベントのなかで投影されたスライドからは、EUおよび英国のAmazonなどで販売されることが読み取れる。

 「Nothing Phone (1)」の紹介をひととおり終えたカール・ペイ氏は、映画館のような場所を出て屋外へ。「事務所に到着しました。今日は小さなイベントをやります」と語り、事務所のような場所からの配信に切り替わる。

 その後は、レポーターとおぼしき女性が、カール・ペイ氏への短いインタビューを終え、関係者などに質問していくようすが配信された。これは、英国・ロンドンで実際にライブで行われているものとみられる。

 女性は配信の最後に「長い旅でしたが、私たちが言ったように、これはほんの始まりにすぎません」とコメント。スタートアップであるNothing Technologyの今後に期待を抱かせるような配信となった。