法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Nothing Phone (1)、光と音とトランスペアレントで個性を主張

 イギリス発で「Nothing」ブランドを展開する英Nothing Technologyから、Androidスマートフォン「Nothing Phone (1)」が発表された。スマートフォンのデザインが画一化されてきたという指摘が多い中、新しいアプローチで個性を主張した注目製品だ。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

Nothing Technology「Nothing Phone (1)」、159.2mm(高さ)×75.8mm(幅)×8.3mm(厚さ)、193.5g(重さ)。カラーは、ホワイト(写真)とブラックをラインアップ

求めるものは、スペックか、デザインか

 スマートフォンが普及しはじめて十数年が経ち、スマートフォンの完成度は熟成の領域に達しつつあると言われる。各社ともさまざまな形で、スマートフォンの新しい方向性を打ち出そうとしているが、その一方で、スマートフォンのデザインが画一化され、つまらなくなってきたという声も耳にする。

 たとえば、ボディひとつを取ってみてもほとんどの機種がフラットなスレート状(板状)のボディを採用しており、異なるボディデザインとしては、サムスンやモトローラ、マイクロソフトなど、一部のメーカーが折りたたみなどにチャレンジしているくらいだ。折りたたみデザインは新しい方向性として期待されているが、価格や耐久性などを考えると、一般ユーザーにはまだ縁遠い存在と捉えられているようだ。

 一方、国内でも昨年、いい意味でもあまり良くない意味でも注目を集めたバルミューダの「BALMUDA Phone」も画一化されたスマートフォンに対する解として、取り組まれたモデルだ。大きく湾曲したボディの背面に、独特のサイズ感、カレンダーなどの独自アプリなど、ほかのスマートフォンにはない特徴をアピールしたが、ハードウェアのスペックに対して、発表当時の価格が高すぎるという指摘があり、市場では厳しい評価が下されてしまった。ただ、個人的には当初の価格設定を除けば、「BALMUDA Phone」のデザインやアプリなどのトライは、現在のスマートフォンにとって、非常にユニークな取り組みであり、限られた条件の中で面白い製品を作り上げたと捉えている。市場での評価が伴わなかったのは、価格設定に加え、発表時の伝え方や見せ方が国内のモバイル市場に合っていなかった部分があったのかもしれない。

 今回、英Nothing Technologyから発売されるAndroidスマートフォン「Nothing Phone (1)」は、ハードウェアも含め、非常にユニークな取り組みをしたスマートフォンだ。「Glyphインターフェイス」と名付けられた背面のLEDライトをはじめ、トランスペアレント(スケルトン)デザインの背面、個性的なサウンドなど、随所にこれまでのスマートフォンと違った取り組みが見られる。発表時のブリーフィングでは、同社CEOのカール・ペイ(Carl Pei)氏、共同創業者でマーケティング統括のアキス・イワンジェリディス(Akis Evangelidis)氏が登壇し、「最近のスマートフォンのリリースは退屈で、スペックや機能ばかりをアピールしている」「私たちは何か新鮮なものを送り出したい」と語り、今回の「Nothing Phone (1)」の企画意図やデザインなどについて、説明していた。英Nothing Technologyは日本であまりなじみのないブランドだが、「Nothing ear (1)」という完全ワイヤレスイヤホンを国内向けに販売しており、その反響の良さから、今回の「Nothing Phone (1)」の日本投入を決めたという。

 7月の発表当初は国内への投入を決めたものの、具体的な販路については公式ストア以外に明らかになっていなかったが、8月に入り、KITH TOKYOで先行販売が実施され、同月8日に発表された国内向け販売のプレスリリースでは、公式ストア以外に、ECサイトとして、Amazon.co.jpとひかりTVショッピング、家電量販店として、エディオン、ビックカメラ、ヤマダデンキ、MVNO各社ではIIJとNTTレゾナントが扱うことが発表されている。一部の家電量販店、蔦屋家電+、KITH TOKYOでは実機も展示される予定となっている。

 価格はメモリーとストレージの構成によって、3つのモデルがラインアップされ、RAM 8GB/ROM 128GBのモデルが6万3800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが6万9800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが7万9800円で販売される。スペックは後述するが、内容に見合うレベルの価格設定と言え、いわゆる『デザイン端末』的な割高感もない。

トランスペアレントデザインが目を引く背面

 まず、ボディからチェックしてみよう。幅75.8mm、厚さ8.3mm、重さ193.5gと、それなりにサイズ感のあるボディで、iPhone 13などと比較して、ひと回り大きいサイズとなっている。ボディの側面は前後面からほぼ垂直に立ったアルミフレームで構成され、前面をディスプレイ、背面を透明のガラスでカバーする。

背面は透明のガラスを貼ったトランスペアレントデザイン
左側面は分割式の音量キーを備える
右側面は電源キーのみを備える。カメラ部の突起は約2mm弱

 パーツの構成としては、一般的なスマートフォンと変わらないが、何といっても特徴的なのは、背面の透明のトランスペアレントデザインで仕上げられていることだろう。俗に『スケルトン』などと表現されることもあるが、内部が見える構造となっており、そこにもうひとつの特徴である「Glyphインターフェイス」のためのLEDライトが埋め込まれている。背面中央にはQi対応ワイヤレス充電のコイルが備えられていたり、各パーツにはカバーらしきものが付けられているため、基板剥き出しというデザインではないが、一般的なスマートフォンのフラットなカラー仕上げに比べると、眺めたり、人に見せたりする楽しさを持つデザインと言えそうだ。

 側面のアルミフレームなどの仕上げは、iPhone 13やiPhone 13 miniなどと同じ流れをくむもので、ソリッドな質感も良い。CEOのカール・ペイ氏はブリーフィングにおいて、iPhoneを「世界で2番目に気に入っているスマートフォン」とユーモアを交えて答えており、現在のiPhone 11シリーズ以降のデザインをはじめ、古くはiPhone 4/5/5sなどのデザインからの影響も少なからずあるように見受けられる。

下部にはUSB Type-C外部接続端子、SIMカードスロットを備える
背面のガラスに「NOTHING」とドットでロゴがプリントされている

 ディスプレイはフルHD+対応の6.55インチ有機ELディスプレイを搭載し、前面のガラスにはCorning社製Gorilla Glassを採用する。リフレッシュレートは最大120Hz駆動となっている。生体認証は画面内のやや下寄りの位置に光学式指紋認証センサーを内蔵する。今回試用した限りでは、レスポンスは良好と言えそうだ。ただし、指紋センサーを利用した追加機能などは用意されていない。セキュリティ的にはやや低くなるが、ディスプレイ左上のパンチホール内に内蔵されたフロントカメラを利用した顔認証にも対応する。

 バッテリーは4500mAhの大容量バッテリーを内蔵する。本体下部に備えられたUSB Type-C外部接続端子を利用しての最大33Wの有線充電に加え、前述の通り、Qi規格準拠の最大15Wのワイヤレス充電にも対応し、イヤホンなどを充電するための5Wのリバースチャージも利用できる。ちなみに、前述のNothingブランドで先に発売された「Nothing ear (1)」は充電ケースがワイヤレス充電に対応しているため、「Nothing Phone (1)」のリバースチャージでイヤホンを充電することもできる。

 国内で販売される多くのスマートフォンのような防水防塵には、対応していない。IP規格上はIP5Xの防塵、IPX3の防滴となっている。通常の降雨程度であれば、実用上、それほど大きな問題はなさそうだが、本体を水没させたり、豪雨の中での利用は避けた方がいいだろう。

LEDライトによる「Glyphインターフェイス」

 背面のトランスペアレントデザインが注目される「Nothing Phone (1)」だが、これをさらに面白くしているのが背面に備えられたLEDライトで表現される「Glyphインターフェイス」だ。すべてのLEDライトが点灯している状態を見ると、わかりやすいが、大きく分けて、5つのLEDライトから構成される。中央のワイヤレス充電のコイルを囲むもの、コイルからUSB Type-C外部接続端子側に伸びる棒状のもの、その真下のひとつの丸い点、左上のカメラ部を囲むもの、カメラの反対側の右上の斜めの棒状のもので、これらには合計974個のミニLEDライトが使われているという。

背面の「Glyphインターフェイス」のLEDライトを点灯。カメラ周囲、右上の斜めの棒状、中央のワイヤレス充電コイル周囲、下部の棒状、最下部のドットの5つから構成。合計974個のLEDが使われているという

 GlyphインターフェイスのLEDライトは、メインカメラで撮影するときの照明として利用できるほか、メールや音声通話の着信、通知、充電状況などを知らせるしくみとなっている。

[設定]アプリ内の[Glyphインターフェイス]で、[Glyphライト]や着信音の設定などができる
電源アダプタを接続すると、下部からのバーの長さで、バッテリー残量がわかる
[設定]アプリ内の[Glyphインターフェイス]-[着信音]には10種類の着信音がプリセットされていて、それぞれのLEDライトの光り方も画面上で確認できる

 たとえば、プリセットされている10種類の着信音の内、「pneumatic」はシンプルに右上の斜めのLEDライトが点灯するが、「pilot」や「beetle」を選ぶと、5つのLEDライトが順に光り、かなりにぎやかだ。通知のサウンドも10種類がプリセットされており、同じように選んだサウンドによって、Glyphインターフェイスの光り方が異なる。USB Type-C外部接続端子に充電器を接続したときは、中央下のLEDライトが充電メーターとして光り、同じ部分はGoogleアシスタントのフィードバックとして点灯する設定もできる。

 また、スマートフォンからの通知に邪魔をされたくないときは、「Flip to Glyph」を有効にして、端末を裏返しで机などに置くと、照明だけで着信や通知を把握でき、Bluetoothヘッドセットや「Nothing ear (1)」をペアリングしておけば、イヤホン側を操作することで、端末を裏返したまま、着信に応答し、通話もできる。

 最近、一部のスマートフォンでは着信や通知を知らせるためのLEDを備える機種もあるが、小さな丸いLEDを備えるのみで、「Nothing Phone (1)」のように、全面的かつ本格的にLEDライトを活用したモデルは見かけない。そういう意味において、「Nothing Phone (1)」のGlyphインターフェイスは、スマートフォンの背面デザインや通知の在り方について、新しい方向性を示したトライと言えるだろう。

 ただ、国内市場に限って言えば、こうしたLEDなどによる着信の見せ方は、『いつか来た道』と言いたくなる人が多いかもしれない。本誌の2000年代半ばまでのバックナンバーをご覧いただければ、ご理解いただけそうだが、かつてケータイ全盛期には本体に備えたLEDで着信を通知したり、折りたたみデザインのサブディスプレイに情報を表示するようなユーザーインターフェイスが数多くの機種に搭載され、市場でも高い人気を得ていた。「Nothing Phone (1)」の「Glyphインターフェイス」を見ていると、どことなく、あの時代の派手な見せ方を現在のスマートフォンに合うようにアレンジしたようにも受け取ることができるのだ。

 「Glyphインターフェイス」のLEDライトによる表現は、非常にユニークであることは間違いなく、いわゆる『飲み屋のネタ』(言い方は良くないが……)になるような楽しさを持っている。その一方で、個人的に気になったのは、着信音などのサウンド関連だ。もしかすると、国と地域による考え方の違い、あるいは内蔵スピーカーの特性などが関係しているかもしれないが、「Nothing Phone (1)」にプリセットされている着信音や通知音は、ユニークな音が多い一方、やや耳障りで、あまり心地良くない音も含まれている。たとえば、シャッター音は「コキンっ!」といった金属がかち合うような音で、撮影する場所によっては周囲の人が「何の音?」と振り返ることもあった。改めて説明するまでもないが、特にシャッター音は国内の場合、自主規制で消すことができないため、「Nothing Phone (1)」を使う限り、基本的には写真を撮るたび、同じ音を聞くことになる。もちろん、それぞれの音はユーザーや周囲の人に知らせることを目的としているため、少し響くくらいの音でいいのだろうが、国内の場合、マナーモードで利用しつつ、音を出すときもややソフトな音の方が好まれるように見受けられるため、もう少し音質なども含め、見直しを検討して欲しいところだ。

 プラットフォームはAndroid 12ベースの「Nothing OS」を搭載する。ただし、独自OSということではなく、OPPOの「Color OS」やシャオミの「MI UI」などと同じような建て付けだとなっている。基本的なユーザーインターフェイスは「Pure Android」に近いもので、フォントやメニュー構成などに独自のカスタマイズが加えられている。

ホーム画面はAndroidプラットフォーム標準に近い構成。見えにくいが、左上の日時や天気のアイコンをタップして、それぞれ連動するGoogleカレンダーや天気予報を表示できる
アプリの一覧画面は最上段に履歴、その下にカタカナ、漢字、アルファベット順にアプリのアイコンが並ぶ。最上段の検索ボックスにアプリ名を入力して、見つけることも可能
通知パネルは引き出した第一段階はAndroid標準に近いが、もう一度、下方向にスワイプすると、最上段の[モバイルデータ]と[Bluetooth]が円状で表示される。[Glyphs](Glyphインターフェイス)もコントロール可能

 プリインストールされているアプリもコンテンツサービスなどの商業アプリなどがなく、基本的にはAndroidプラットフォーム標準のアプリとGoogleの各サービスのアプリが用意されているくらいだ。アプリ一覧でAndroid標準のものと違いがわかるのは、後述する[カメラ]アプリくらいだろう。日本語入力もAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」が搭載されている。ソフトウェアのサポートについては、Androidプラットフォームが発売から3年間、セキュリティパッチが2カ月ごとに4年間がアナウンスされている。

ミッドレンジを超えるSnapdragon 778+を搭載

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 778+を採用する。Snapdragon 778+は2021年10月に発表されたチップセットで、6nmのプロセスルールで製造される。国内向けに展開されるスマートフォンには初搭載になるが、グローバル向けではファーウェイから独立した「Honor」ブランドの「Honor 60 Pro」などに搭載されている。型番からもわかるように、2022年のハイエンド向け「Snapdragon 8 Gen1」とミッドレンジ向け「Snapdragon 695 5G」の中間的な位置付けのチップセットになる。メモリーとストレージは前述の価格でも説明したように、RAM 8GB/ROM 128GB、RAM 8GB/ROM 256GB、RAM 8GB/ROM 256GBの3つのSKUが販売される。microSDメモリーカードなどの外部ストレージには対応していない。

 モバイルネットワークは5G NR(Sub-6)/4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5Gについては国内の各携帯電話会社に割り当てられている「n77」と「n78」に対応しているものの、NTTドコモに追加で割り当てられている「n79」には対応しない。au、ソフトバンクに続き、NTTドコモのスタートする4G LTEの帯域を5Gに転用する「n28」には対応している。

 SIMカードはSIMカードトレイの表裏に2枚のnanoSIMカードを装着するデュアルSIMに対応する。eSIMには対応していない。筆者が試した範囲では、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの各社及びMVNOのSIMカードを認識し、いずれもデータ通信を利用することができた。ただし、筆者が動作保証をすることはできないので、各携帯電話会社やMVNO各社の動作確認情報をチェックすることをおすすめしたい。

本体下部に備えられたSIMカードトレイは、ピンを挿して、取り出すタイプ。nanoSIMカードを表裏に1枚ずつ装着できる
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN、1ページ目。イオンモバイルやIIJmioなどが登録されているが、すでに新規受け付けを終了した「LINEモバイル」なども残っている
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN、2ページ目。OCNモバイルONEは新旧コースのAPNが登録されているが、今年6月に発表されたプライベートIPアドレスが割り当てられるAPN(ocn.ne.jp)は登録されていない。バッテリー消費を抑えたいときは、プライベートIPアドレスが割り当てられるAPNへの変更がおすすめだ(編集部注:OCNサポートサイトでは「『グローバルIPアドレス』による接続は、『プライベートIPアドレス』を利用した接続より、電池の消費が多い場合があります」と案内されている)
出荷時に設定されてるau網のAPN。auの「5G NET」や「LTE NET」をはじめ、「UQ mobile」や「IIJmio」「BIGLOBEモバイル タイプA」などが登録済み
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ソフトバンク契約時の「Application」や「SoftBank 4G」をはじめ、「Y!mobile」「mineo(ソフトバンクプラン)」などが登録済み。新規受け付けを終了した「LINEモバイル」があるのに、「LINEMO」が登録されていないのは残念
楽天モバイルは契約するSIMカードを挿せば、自動的にAPNが設定された

50MPのデュアルカメラを搭載

 カメラについては背面に2つのカメラを搭載する。ひとつは50メガピクセル(MP)のソニー製イメージセンサー「IMX766」(センサーサイズ:1/1.56インチ)にF1.88のレンズを組み合わせたメインカメラで、光学手ぶれ補正と電子手ぶれ補正に対応する。もうひとつは50MPのサムスン製イメージセンサー「JN1」(センサーサイズ:1/2.76インチ)にF2.2のレンズを組み合わせた超広角カメラで、画角114度の撮影が可能。

背面には50MPの広角カメラと超広角カメラを搭載する。それぞれイメージセンサーのメーカーが違うためか、空などを撮ると、少し色合いが異なる
フロントカメラはディスプレイ左上のパンチホール内に収められている

 カメラアプリはAndroidプラットフォーム標準のものと少しデザインや機能が異なるが、撮影モードは「写真」や「動画」のほかに、「ポートレート」「SLO-MO」(スローモーション)を選ぶことができ、「もっと」では「タイムラプス」「PANO」(パノラマ)「マクロ」「エキスパート」を選べ、標準の撮影モードと入れ替えもできる。写真は出荷時設定が4in1ビニングによる12MPモードで撮影するようになっているが、ファインダー上部の下向き矢印のアイコンをタップし、表示された「12MP」をタップすると、ビニングを使わない「50 MP ULTRA HD」で撮影することができる。暗いところなど、普段は出荷時設定の「12MP」で撮影しておき、十分な明るさがある屋外などで撮影するときは、「50 MP ULTRA HD」を試してみるといいだろう。

 撮影については全体的に十分なクオリティが実現されており、ポートレートもしっかりと背景をぼかし、人物を際立たせた撮影ができる。「Nothing Phone (1)」を試用中、ちょうど前回掲載の「Pixel 6a」も持ち歩いていたため、同じようなシーンで撮影したが、ポートレートでの背景のボケ具合いは変わらないものの、少し暗い室内で撮影したときは「Nothing Phone (1)」の方が少しボケ味が強いような印象を受けた。

ポートレートで撮影。背景の建物などが自然にボケた状態になり、人物が際立っている。Googleフォトで表示して、[編集]を選べば、背景のボケ具合や奥行きも調整可能。モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
少し離れて、ポートレートで撮影。公園のミストが吹かれる中で撮影したところ、ちょっと不思議なボケ具合になり、人物が浮かび上がるような写真になった
インカメラで自分撮り。これもGoogleフォトの[編集]で[背景ぼかし]や[奥行き]の編集が可能
メインカメラでホテル内の窓越しに夜景モードで撮影。通常モードでは全体的に暗くなり、左手前付近の建物が見えなくなってしまう
庭園に咲いていた花をマクロで撮影
薄暗いバーで撮影
超広角カメラで窓越しに撮影。メインカメラで撮影すると、もっと空の青さが強調された写真になる

 ディスプレイ左上のパンチホールに内蔵されたフロントカメラは、16MPのソニー製イメージセンサー「IMX471」(センサーサイズ:1/3.1インチ)にF2.45のレンズを組み合わせたものが搭載される。撮影モードは背面のアウトカメラ同様、「写真」や「ポートレート」が選べるが、フロントカメラでは使えない「SLO-MO」も選べるようになっており、タップすると、アウトカメラに切り替わってしまうなど、ユーザーインターフェイスに不自然な部分が残されていた。今後、バージョンアップなどで改善されることを期待したい。

トランスペアレントな背面にLEDライトの光で個性を主張する楽しい一台

 ここ数年、スマートフォンは完成度が高められる一方、国内市場では端末購入補助の制限に加え、各社のラインアップの固定化、各携帯電話会社の発表会の自粛や見送りなども相まって、今ひとつ市場が盛り上がっていないという指摘もある。

 ただ、こうしたコロナ禍を含む社会的な要因や市場背景とは別に、英Nothing Technology CEOのカール・ペイ氏がブリーフィングでも触れていたように、スマートフォンのデザインの画一化や機能の定番化などによって、スマートフォンそのものが面白みに欠けてしまっているように見えるのも事実だろう。個人的には、かつてパソコン市場がそうであったように、スペックやベンチマークテストばかりが強調され、どんどんつまらなくなってしまうのではないかという危惧を持っている。

 そんな状況下に登場した「Nothing Phone (1)」は、トランスペアレントな背面に、LEDライトの光とユニークなサウンドを組み合わせた「Glyphインターフェイス」により、これまでのスマートフォンと違った存在感を示そうとしている。カメラやディスプレイ、チップセットなど、スマートフォンとしての基本仕様に突出したものはないかもしれないが、これを街中で使っていれば、友だちや仲間に「それ、何?」と聞かれたり、街行く人に「あれ、何?」と不思議な視線を浴びそうなスマートフォンと言えそうだ。国内初参入のメーカーであるため、サポート面などにやや不安が残るが、コールセンターやメール、チャット、フォームでのサポートもスタートすることがアナウンスされている。ほかの人とは違う一台が欲しいユーザーなら、ぜひチェックしておきたい一台と言えるだろう。

オプションで販売されるケース。今回の試用では「ブラック」のケースが提供されたが、「クリア」のケースも販売される。価格は2980円
ちょっとわかりにくいが、ブラックのケースを装着した背面。照明の影響もあるが、薄らとブラックという印象