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「楽天の衛星」事業に1500億円補助、総務省のプロジェクトで

 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、総務省の令和7年度補正予算事業「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業(J-LEO)」の間接補助事業者を6月30日に採択した。申請代表をRAST、共同提案を楽天モバイルとする1事業者が選定された。

総務省資料より

 「J-LEO」は、低軌道衛星通信サービスの自律性確保を目的とする事業。財源は総務省所管の令和7年度補正予算から拠出され、事業全体の予算は1500億円。

 総務省から補助金の交付を受けたCIAJが、事業を行う民間事業者に対する助成を担う。3月30日~5月29日の期間で間接補助事業者の公募が行われ、審査を経て今回の採択に至った。

 補助の対象となるのは、日本国内で運用や管理が行われる低軌道衛星群を活用し、衛星ダイレクト通信サービスを提供する事業者。具体的には、衛星の調達、衛星の打ち上げ、地上設備の整備に要する費用に対して補助が行われる。

2028年度中に開始、補助事業で目指すもの

 楽天モバイルでは、かねてより米AST SpaceMobileと協力し、日本国内で2026年度内にも「スマホと衛星の直接通信」を開始する予定。ある程度、高速な通信速度になるとされているが、当初は衛星の数に限りがあることから、日本上空に衛星があるタイミングだけといった形で、利用できる時間帯などに制約があるとみられている。

 一方、総務省が今回、楽天モバイルらに1500億円を補助するJ-LEO(自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業)では「衛星の調達」「衛星の打上」「地上設備の整備」という3つの事業が対象となっている。

 補助を受ける楽天側が、それら3つの事業を進めることになるとみられ、2028年度中に「衛星ダイレクト通信サービス開始」を目指す。

 しかし、楽天モバイルがかねてより進めてきたASTによる「衛星ダイレクト通信」は、繰り返しになるが、2026年第4四半期の開始とされている。つまり今年10月~12月のどこかで始まることになる。

 J-LEOでは、低軌道衛星通信インフラ整備事業について「日本国内で運用・管理される低軌道衛星コンステレーションを活用した衛星ダイレクト通信サービスを提供するため、衛星コンステレーションの構築に必要となる通信衛星や地上設備を整備する事業」としている。

 補助対象の事業が2028年度とされていることから、1年以上のズレがあることになるが、これは「ASTが運営する衛星との通信サービスが2026年内に開始」→「徐々に衛星を打ち上げる」→「2028年度内に補助対象の事業としての衛星通信サービスが始まる」といった流れになる可能性がある。

 楽天では、出資していたASTの株を今春、売却済み。とはいえ、今回の補助決定を受けて「ASTとの合弁会社設立に向けて協議中」とコメント。もし合弁会社が設立されるのであれば、補助対象の「衛星の調達・打上・地上局の運営」を担う可能性がある。

“主権”を合弁会社が持つボーダフォン

 日本政府の補助を受けてASTの衛星が増えるという格好になりそうだが、ここで参考になるかもしれない事例が、英ボーダフォンがASTと進めている取り組みだ。ボーダフォンでは、欧州向けの衛星通信サービスをASTとともに進める方針を、かねてより示している。

 たとえば、2025年3月には、ボーダフォンとASTが合弁会社である「SatCo」を設立し、欧州すべての携帯電話会社向けに、「欧州衛星サービス事業」を展開することを発表した。

 SatCoは、地上局のネットワークの構築・運用も担い、同年10月には、衛星運用センターがドイツに設置されることを発表。「SatCoのソリューションは欧州のデジタル主権を完全にサポートする」としている。

 楽天では、ASTと設立に向けて協議中という合弁会社について、実現した場合にどんな役割を手掛けるか、詳細は明らかにしていない。ただ、合弁会社設立に至れば、事業の構造としてボーダフォンの事例に近しいこと、今回の総務省の補助事業であるJ-LEOが「自律性確保に向けた」とされていることや、補助対象に「衛星の調達・打上」が含まれることから、衛星運用の実務はASTが担当するものの、衛星の保有など一定の権利を楽天側、ひいては日本側が保有することを目指す枠組みとみられる。