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LINEヤフーのAIエージェント「Agent i」が始動、道半ばの機能も「誰もが使える」を目指す

 LINEヤフーは20日、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を発表し、提供を開始した。LINEアプリやYahoo! JAPANの検索窓などからアクセスできるもので、ほかのAIのようにプロンプトを入力するだけでなく、シーンに合わせたメニューのようなものも用意されている。

 また、LINEヤフーの各サービスと連携しているのも大きな特徴の1つで、Yahoo!ショッピングやebookjapanなどのECサイトやスポーツナビなどの情報サイト、LINEのトークやカレンダー、LINE公式アカウントとの連携も実施予定で、同日都内で開催された発表会でも、シーンにあわせたさまざまな機能が展示されていた。一方、紹介された機能の多くはリリース時点では提供されていない機能で、若干“勇み足”のような感は否めない。

 発表会では、CPOの慎ジュンホ氏から「Agent i」の目指す姿が語られたほか、今後登場するさまざまなAI機能などが披露された。

慎氏「ユーザー誰もが使えるAIエージェントを目指す」

慎ジュンホ氏

 慎氏は、近年のAI技術について「あっという間にユーザーの行動そのものをカバーしてくれるまで変化しており、ものすごいスピードで発展している」とコメント。企業でも、ユーザーからの問い合わせ対応や経理、法務など専門のエージェントが答えてくれるほか、とりわけソフトウェア開発では「素晴らしい成果を出している分野」と慎氏は指摘する。セキュリティ技術でも大きな実績が上がっているという。

 一方、コンシューマーに目を向けると、日本ではまだ2割程度しか生成AIが使われていないと指摘する。慎氏は「生成AIが優れた成果を出しているのに、実際には多くのユーザーが関心を寄せていない」とし、「Agent i」では、「ユーザー誰もが使えるAIエージェント」を目指したとしている。

ユーザーの“すべての場面”に寄り添うAI

 「Agent i」では、ユーザーの生活に寄り添うさまざまな機能が用意されている。

 たとえば、投資をしている会社員の場合、自分の保有銘柄の最新情報をAIが24時間調べて、参考になる情報を見つけた場合に案内する。航空券が一番安い時期や、新生活の準備にいい不動産の情報があれば教えてくれるなど、さまざまなタスクを同時に進行する機能を用意している。

株式情報のチェック
新車購入時の情報収集
並行して処理できる性能

 また、機能だけでなく、LINEヤフーが持つ1億人のユーザーに対して、LINEやヤフーの延長線上でAIサービスを提供できるとコメント。LINEヤフーの金融やECなど100以上のサービスと連携することで、日常生活のすべてをサポートすると慎氏は意気込む。加えて、LINE公式アカウントなどを通じオフラインともつながるサービスを持つことで、「Agent i」はユーザーの“すべての場面”で日常生活に寄り添うサービスを提供するとしている。

タスク機能やLINE連携が特徴

上級執行役員AI Agent統括SBUリードの葭沢光伸氏

 上級執行役員AI Agent統括SBUリードの葭沢光伸氏は、「Agent i」の特徴を“圧倒的な使いやすさ”と“正確で最適な提案”、“実行力”と紹介する。複雑な知識やプロンプトなしで、ユーザーが直感的に操作できるユーザー体験を提供するという。

 「Agent i」は、エージェント型AIとして、さまざまな機能を持ち合わせている。たとえば、金融のエージェントでは、金利や地政学リスクなど金融市場に影響を与えるさまざまな要因を分析し、マクロ、ストーリー、テーマといった視点でわかりやすく整理し、AIが要因からどのような投資の流れが生まれるのかを分析し解説してくれる。ユーザーが問い合わせたタイミングだけでなく、AIが指示されたタスクを理解し、世の中のニュースを監視、重要なイベントや情報があれば、そのタイミングに合わせてユーザーに案内する。

 ほかのAIにはない機能として、LINEのトーク機能との連携が挙げられる。たとえば、あるスポーツチームを友達と見に行こう、とLINEのトークで盛り上がった際、「Agent i」を呼び出し、直近の試合日程を調べてもらい、その日程にあわせてトーク内で日程調整のエージェントに日程を調整してもらえる。ユーザーそれぞれがLINEカレンダーで予定を管理していると、日程調整エージェントがカレンダーの予定を参照して、ユーザーそれぞれにあった返信を行う。日程が微妙に合わない場合も、該当のユーザーに案内するなどして日程調整をアシストする。

24時間365日働ける「AI店員」にも

上級執行役員 コーポレートビジネスドメインCPOの二木祥平氏

 上級執行役員 コーポレートビジネスドメインCPOの二木祥平氏は、「Agent i」にはコンシューマーだけでなく、ビジネスでも活用できる機能があると語る。具体的には、小売店や飲食店などで、ユーザーの購買履歴を分析したメニューやクーポンなどをAIが提案し、購入や予約に誘導するかたちで、24時間365日稼働できる「AI店員」として展開できる。

 たとえば、Zoffと開発中の機能では、ユーザーの好みをAIが分析し、ユーザーの顔写真と組み合わせて眼鏡のデザインを提案し、同じ画面で購入まで進める。「この俳優さんの眼鏡が気になっている」とユーザーが画像を送れば、AIがそれに似たデザインの眼鏡を探してくる、といった“経験を積んだ店員”のような接客体験を受けられる。

 飲食店予約でも、「○日の19時から予約したい」との問いかけに「○日は17時からなら予約できる」など代替案を提案したり、「先月と同じコースでいいか」といったユーザーの利用状況を踏まえて返答したり、「誕生日クーポンが利用できる」などユーザーに合わせて提案したりできる。二木氏は「トップ店員を1万人雇える感覚」と胸を張る。20日時点では、20社以上と検討を実施しており、今後も拡大していきたいと話す。

 法人向けでは、このほかLINE公式アカウントなどの運営をアドバイスできる「Agent i Biz」を用意している。たとえば、ECサイトで「アクセスは多いがなかなか購入に至らない」という悩みがあれば、AIに課題を相談すれば、最適な集客プランを提案する。Bizでもタスク機能が用意されており「毎日17時にレポートを出して」や「週1回は細かい分析を出して」といった要望にも応えられる。

便利そうな機能も「まだ使えない」

 発表会では、さまざまなエージェント機能が紹介されていた。たとえば、プロ野球のリアルタイム速報を掲載しているスポーツナビと連携した「野球解説くん」は、試合速報をAIが実況したり、野球用語を解説したりするなど、状況に合わせて説明する。また、「学びサポート」は、カメラから問題やテストの答案を読み取り、ユーザーの苦手な部分を分析したり、問題の解法を解説してくれたりする。ユーザーに合わせて問題を出題することもできる。

「学びサポート」では、カメラで撮影した問題や答案を分析し、解法やユーザーの苦手を見つけだし、ユーザーに紹介する。ユーザーに合わせた問題を出題したり、宿題の添削をしたりしてくれる

 「AIお買い物メモ」は、ユーザーがテキスト入力や音声で買い物メモを残しておくと、AIがYahoo!ショッピングなどECサイトから「送料を含めて安く買える方法」を提案したり、「沖縄旅行の準備」といったあいまいなメモから購入リストを作成したりできる。クラウドで処理するため、生成結果が出るまで時間がかかるが、並行して処理を進められるので、「通勤中にメモだけ残しておいて、帰宅後に結果を見る」といった使い方もできる。

「AIお買い物メモ」は、ユーザーが残したメモをAIが分析し、ECサイトでの購入を案内したり、あいまいなメモからユーザーが購入するべき買い物リストを作成したりできる

 慎氏は、「日常生活で必要なものに関するさまざまなデータベースを自社で持っていることや、予約システムなど個々の企業のシステムと連携できるところが強み」と説明。

 一方で、今回紹介されたサービスの多くは、サービス開始時点で利用できない。質疑でも「触ってみたが、紹介されたもののほとんどが使えない」と記者から声が上がった。慎氏は「より早く届けたかった」としたうえで、生成AIは進化が激しいと指摘。ユーザーのフィードバックを踏まえて、開発し続ける前提でのリリースであると説明した。

 なお、利用については、将来的に何らかのメンバーシップやサブスクリプションを設けることを示唆する。同社では、さまざまなプラスアルファ機能を提供している「LYPプレミアム」を提供しており、今後これに「Agent i」のクレジットが含まれるなどが考えられる。また、広告モデルについても、AIを踏まえた広告モデルも検討しており、慎氏は「コストバランスは保てる前提で考えている」と話した。