インタビュー

ドコモの新AIエージェント「SyncMe」がちょっとおもしろげ、担当者にさっそく聞いてみた

 NTTドコモが3月2日に発表した「SyncMe(シンクミー)」は、dアカウントの情報をもとに、ユーザーのことを理解して、個々人にあわせて対応してくれるという新しいパーソナルAIエージェントだ。

 ドコモのサービスとしては、なかなか珍しく「まずはモニターを募集してパイロット版を提供」という形で今春に始まり、夏ごろには正式サービスになる予定だ。

 具体的なサービス内容は本誌別記事でご紹介している。また、ドコモとしての狙いについては、前田義晃社長のインタビューもご覧いただきたい。

 スペイン・バルセロナで開催された展示会「MWC26」のNTTブースでも披露された「SyncMe」は、どのように使うのか、そしてこれからどんな機能を実装するのか紹介するものだった。

 取材してみると「dアカウント」、つまりd払いなどドコモ経済圏を利用していることが、従来よりも高いレベルで「個人にあわせたサービス」を実現できるのではないか――と感じさせるものがあり、メディア側からも質問や意見が絶えない様子。

 そこで、MWC会場で、さっそく「SyncMe」開発担当者へのインタビューを実施した。NTTドコモで、マーケティングメディア部長の道上禄可氏、エンタメマーケティング担当部長の浜田尚氏、R&D戦略部AI・エージェント主査の竹花幸伸氏にいろいろと聞いてみた。

左から竹花氏、道上氏、浜田氏

1年前から開発スタート

――「ドコモがAIエージェントを提供する」ことはちょうど1年前のMWCで、前田社長が明らかにしていました。まずは開発の経緯から教えてください。

浜田氏
 ドコモでは、かねてより2008年から「iコンシェル」を開始し、その後「しゃべってコンシェル」、2018年に「my daiz」を提供してきました。

 お客さまに寄り添い、サポートするサービスという位置づけでしたが、全部やり切れていなかったという思いもありました。

 一方で、ここ数年、生成AIが広がってきた。もともと「iコンシェル」などで考えていたコンセプトをいよいよ実現できる時代になってきたのではないか、ということで1年ほど前に、前田(社長)直下のプロジェクトとして検討が始まりました。

――1年ほど前というと、決まった直後に前田さんがMWCで公表したということですか。

浜田氏
 その直前の年末ぐらいに始まって、2025年1月に初期メンバーが決まり……と。

――なかなかのスピード感ですね。サービスの方向性もすぐ定まりましたか?

浜田氏
 やはりお客さまが嬉しいと感じてもらえるもの、ということが根底にあります。

 国内で使えるチャット型のAIサービスを使う理由、逆に使わない理由といったあたりを調査していくと、ドコモの保有するデータと生成AIの相性が良いこともあらためて実感しました。

 ドコモのデータを活用すると、お客さまにとっては、プロンプトのような文章を入力する手間を減らせることもわかってきました。

竹花氏
 開発チームには、社内横断でいろんな組織からメンバーが参加しています。

 お客さまの声を拝見しつつ、私を含め、若手から意見をどんどん出して、サービスのコンセプトを整備していきましたね。

開発時、大切にしたこと

――開発する上で一番大切にしたことは何ですか。

浜田氏
 若年層にまずご利用いただきたいと思っています。開発時も若手メンバーの思い、意見をワークショップ形式も含めて、しっかり出して、お客さまにもご意見をいただいて。

 そのなかで、特に重要視していたのは、「寄り添う」ということです。お客さまの声の中で、生成AIに対してやり方がわからなかったり、冷たく感じてしまったりする声もありました。そんな不安を払拭したいと。

パーソナライズとキャラクターの役割

――機能面についても教えてください。

浜田氏
 お客さまの役に立つため、ドコモとしてできることは、やはり「ユーザー理解」だと思っています。

 たとえば、生成AIのサービスを使うお、思ったように答えが返ってこない、答えを返してもらうのにテクニックがいるといったことがありますよね。

 そこで今回は、dアカウントに基づき、データからお客さま自身のことを理解する。データを掛け合わせることでユーザーを理解し、簡単に答えが返ってくるというのが一番こだわったところです。

 「#今のワタシ診断」という機能では、複数の写真をアップロードしていただきます。その写真をもとに、言葉にしづらい、お客さまの好みや感性を推定します。

 そこにデータを組み合わせると、より詳細にプロファイリングでき、利用していくなかでの対話・提案に反映されます。ここも少しゲーム仕掛けというか、占い風な形にしています。

 また、「ワラピィ」と「ヨミドーリ」というキャラクターも登場します。ヨミドーリが調べて、ワラピィとお話するといったイメージです。

 ここは社内でも当初、賛否両論ありました。キャラクターが好きな人もいれば、そうではない人もいますから。

 ただ、生成AIにつきまといがちな冷たさを払拭し、キャラクターがいることで会話しやすくなる可能性が高いだろうと。

 キャラクターデザインは、(大人気ゲームのキャラクターデザインなどで知られる)にしだあつこ先生に手掛けていただきました。

先行モニターと今後の展開

――いよいよ先行モニターという形で始まりますが、この期間の検証項目、正式版として出てくる時との差分や、何を検証するのでしょうか。

竹花氏
 多岐にわたると思います。

 利用頻度や、私たちが想定できていないユースケース、情報のテキストの長さなどですね。チューニングしたり、新規に開発したりしていくことになります。

 7月の正式版に向けて「先回り」機能の開発も進んでいます。

 お客さまの気持ちに合わせて先に情報を取ってきてくれて、「これどう?」と吹き出しで表示するといった機能になります。

――ウィジェットなどもありますか。

竹花氏
 ホーム画面でのウィジェットなど、アプリを起動せずとも使えるという点は検討しています。

 はたまた、家中のデバイスに「ワラピィ」が出てきて、いつでも対話ができるとか、ウェアラブルなどもそうです。

MWC会場では、ワラピィのフィギュアとウェアラブルをイメージしたデバイスを展示。宅内ではフィギュアと話したり、縦長のディスプレイに情報が表示されたりする。外出時にはウェアラブルデバイスを手にするとワラピィの機能が転送されるような使い方が提案されていた

 まずはスマホアプリですが、生活全体で出してアシストしてくれるようなと頃を目指したい。スケジュールとしては、長期に渡ると思うのですが、検討しています。

――前田社長は「プラットフォームにしたい」とも語っていました。

道上氏
 現時点では、たとえば美容院の予約をしたいとなった時に、「いつものところにする? 新しいところチャレンジしてみる?」と別のキャラが話してくれたり、予約までやってくれるというところです。

 同じように、誰かと2人で旅行に行く場合、僕のキャラクターと別の人のキャラクターがやり取りして日程を決めていくですとか。エージェント同士のやり取りというところは将来的に実現していきたいと思っています。

 「SyncMe」という世界の中でプラットフォーム化していくこともあれば、「SyncMe」の外で動いている別のエージェントと組み合わせることもスコープには入るだろうなと思っています。

――予定を決めたらGemini経由でGoogle カレンダーに入れてもらうみたいなことですね。

ドコモ担当者
 API利用料のようなコストは発生しますが、GoogleカレンダーなどはAPIでいいですよね。

――スマホメーカーなどもAIエージェントに取り組んでいます。競争なのか、共存なのか。

道上氏
 各社で持つデータも異なりますし、お客さま自身が使い分けてくる可能性も高いでしょう、

 すると先述した「エージェント同士の連携」も発生する。対応していかないと、使い勝手も悪くなるでしょう。

――dポイントはどう使われるのですか。利用促進なのか、パーソナライズを進めるためなのか。

浜田氏
 キャラクターとの親密度が高まるとdポイントがもらえたり、宝箱を開けたら抽選でポイントが当たるなど、少しゲームっぽくやっていきたいですね。

――最後に、「ここを見てね」というところはいかがですか。

竹花氏
 技術的には、データを使ってユーザー理解をし、対話履歴も溜まってくる中で、全てをLLM(大規模言語モデル)に投げていたらコストもかかり精度も下がってしまうところがあります。

 そこを上手く活用するために、長期記憶の機構を活用しています。過去の対話を全て投げるのではなく、その人にとっての重要度をつけておき、関連度が高い対話だけを抽出しています。

 いかに効率よく必要な情報だけをピックして心地よい対話ができるかというところをお伝えしたいです。

浜田氏
 モニター期間では、お客さまが「ここまで分かってくれるんだ」と感じていただき、使い続けると愛着が湧いて「こいつと話し続けたい」と思っていただけるよう、ブラッシュアップしたいです。

道上氏
 オンラインの顧客接点のあり方がどんどん変わっていっていると思います。

 アプリのプッシュ通知を受けて記事を見るというところから、AIが要約した最適な情報が届くという中で、ユーザー目線でAIがどうあるべきか。

 ドコモとしては、パイロット期間を持ってアプローチするのはおそらく初めてなので、ユーザーの皆さんと一緒に作っていきたいです。

 色々な声を聞きながらサービスを磨いて、生活が便利になる、タイパが良くなる、不安がなくなるというところを実現していければいいなと思っています。

――本日はありがとうございました。