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ソフトバンク、自律型AIエージェント基盤「AGENTIC STAR」提供開始 SaaSで業務自動化
2025年12月11日 13:24
ソフトバンクは、法人向けAIエージェントプラットフォームサービス「AGENTIC STAR(エージェンティック・スター)」の提供を開始した。業務ゴールを理解し、担当者と連携しながら自律的にタスクを進めるAIエージェントをSaaS形式などで提供し、企業の業務効率化を支援する。
自律的実行とマルチエージェント戦略
ソフトバンク法人統括AX事業本部の上原郁磨本部長によると、AGENTIC STARは、マルチエージェントを提供するプラットフォームである点が大きな特徴だという。個人が持つエージェントや、部門システムが保有するエージェント同士が会話しながら、自律的に業務を遂行する世界の実現を目指している。
従来の生成AIがプロンプトに対し一問一答型で応じる、いわば「御用聞き」のような存在であったのに対し、AGENTIC STARのAIエージェントは主体性を持ち、目的を伝えるだけで業務の計画立案から実行までを自律的にこなす。そうした仕組みにより、情報収集や資料作成、会議準備といった“仕事のための仕事”に費やされる時間を抑え、コスト削減や顧客体験の向上、売上・利益の向上につなげることを狙う。
80種類以上のツールで自律動作
AGENTIC STARは汎用型AIエージェントとして、定型業務だけでなく、型が決まっていない非定型業務にも柔軟に対応する。
技術面では、開発、ツール作成、動画制作など、ユーザーが目的に応じて指示を出すと、専用のクラウド環境がサービス上に立ち上がり、ユーザー環境に影響を及ぼすことなく安全に作業が実行される。独立した仮想環境で動くため、長時間のタスクや複数同時実行も可能となっている。
AIエージェントが利用できるツール群は約80種類にのぼり、Web検索、文書、画像・動画作成、アプリケーション開発など、多様なアウトプットをシームレスに生成できる。AIは、目的に応じてこれらのツールから適切なものを自律的に選び、パスワード入力や最終確認など人の判断が必要な場面では、担当者に依頼しながら処理を進めることもできる。
MCP対応でシステム連携を強化
また、AIが外部システムやデータと安全に連携するための公開仕様であるMCP(Model Context Protocol)に対応しているため、社内システムやほかのAIエージェントとの統合もしやすい仕組みとなっている。
AGENTIC STARでは、ユーザーとの過去のやり取りや社内資料などを長期記憶として安全に蓄積・参照できるため、利用を重ねるほど担当者の傾向に寄り添った提案や、より個性的な解決案を示せるようになる。継続的な業務改善や社内知見の蓄積に寄与する狙い。
企業利用を前提に、セキュリティとガバナンス機能も強化されている。AIエージェントが動作する環境を他システムから独立させることで影響範囲を抑え、有害コンテンツの制御、ガバナンス機能、監査ログ出力、特定通信の遮断、個人情報のマスキングなどの機能も備えている。
提供モデルと今後の展開
提供モデルは、ブラウザから利用できる「SaaSモデル」と、顧客のインフラ上に機能を構築する「カスタマイズモデル」を用意する。さらに2026年3月には、既存業務システムとのAPI連携やMCP連携を可能にする「外部接続モデル」、クラウド上のアプリ提供サイトを通じて実行環境やSDKを提供する「開発基盤提供モデル」も展開予定。
ソフトバンクは、中小企業から大企業まで業種を問わず幅広い利用を想定しており、ハイパースケーラーモデルとしてマーケットプレイスでの販売も計画している。事業規模としては関連ビジネスを含め、2030年度に約500億円の目標を掲げる。
同社は「マルチAI戦略」を掲げ、自社開発に加えて、多様なLLMや外部AIエージェント企業との連携も進め、サービス同士を組み合わせて提供する方針を示した。
社内での活用実績
ソフトバンクでは、営業や開発などの一部業務でAGENTIC STARを先行導入しており、すでに500人超の社員が活用している。社内実証では、特にシステム開発チームにおけるエラーチェックやコード実装作業で、約90%の削減効果が見られたという。また、資料作成や情報収集など、ゼロから何かを作る際の初動の効率化にも寄与したとしている。


















