石川温の「スマホ業界 Watch」
ソフトバンク「Natural AI Phone」から見えた"AIスマホ"の可能性と課題
2026年5月1日 12:42
ソフトバンクがAIスマホ「Natural AI Phone」を発売した。
メーカーはアメリカのブレインテクノロジーズとなっている。特徴は同社が開発したNatural AIをAndroid OSに組み込んでいる点にある。
ジェネレーティブインターフェイスという技術により、ユーザーがアプリを切り替えることなく、目的の操作を行える。ユーザーはAIエージェントに目的さえ伝えれば、あとはAIエージェントが複数のアプリをまたいで処理を自動的に行ってくれる。
実際にNatural AI Phoneを試してみた。
SNSを見ていたら、数日後に近所に高級な牛丼専門店がオープンするということで、本体側面にあるAIボタンを押して「週末にこのお店に行こうと家族にメッセージをして」とお願いしたら、画像から店名や場所、期間限定メニューを見つけ、スケジュールアプリを確認、家族の名前から宛先を割り出し、LINEでメッセージを自動的に送ってくれた。
送信先を探し出したりと、結構時間がかかるため、一瞬、「自分がやったほうが早いかも」と思ってしまうのだが、このあたりはAIエージェント側の進化と、使う我々が慣れてくれば、それなりに使い勝手のいいものになっていきそうだ。
まさに、AndroidというOSにNatural AIを深いレイヤーで組み込んだからこそ、実現できた操作体系と言えそうだ。
こうした「AIエージェントにすべてお任せするスマホ」は2年ぐらい前にコンセプトが語られ、昨年のMWC25において、モトローラが参考出展してデモを披露していた。
昨年12月には、中国のZTEがバイトダンスと組んで商品化。ただし、限定3万台で販売されたという。
今年のMWCでは「お腹すいたから何が食べたい」とスマホのAIエージェントにお願いすると、Uberを自動的に起動し、ビッグマックを検索し、オーダーする一歩手前まで操作してくれるというデモを見せていた。
盛り上がりを見せるAIエージェントスマホだが、ZTE関係者は「便利そうということで、限定3万台が一気に売れたが、その後、アプリ業界からの評判が芳しくない。アプリ上で広告がユーザーに見られないことで、アプリビジネスに悪影響を与えているようだ」とささやいた。
確かにデリバリーやショッピング、ホテル予約などのアプリは、検索すると上位に「スポンサー」として、広告料を支払った出店者が並ぶ仕組みとなっている。
アプリ事業者は、ユーザーに向けてモノやサービスを売る一方で、モノやサービスを売りたい側からも広告料収入を得ているのだ。
スマホAIエージェントは、ユーザーとしては操作する手間が省けて便利な一方で、アプリでビジネスを展開する側とすれば「ユーザーが広告を見てくれなくなる」として、収益モデルを毀損する恐れがあるというわけだ。
Natural AI Phoneを手がけるブレインテクノロジーズのジェリー・ユエCEOに「アプリの広告収入を減らす恐れについてどう思うか」と聞いてみたが、明確な答えは返ってこなかった。
AIエージェントにおいては、LINEヤフーが4月20日より「Agent i」というサービスを始めている。
ヤフーやLINEの検索窓の横にAIエージェントのアイコンが出ており、そこをタッチすると利用できる。
ヤフーで提供されている情報を要約して知ることができるだけでなく、LINEで繋がっている人に対して、野球を見に行こうと誘う際、野球のスケジュールをAIで調べてもらうだけでなく、メンバー間のスケジュール調整もAIに任せられるようになっている。
LINEとヤフーが経営統合して3年近く経過するが、ようやく2社のサービスがAgent iでつながったように感じた。
一般ユーザー向けには情報をまとめて提示する無料サービスとして維持しつつ、LINEでは企業の公式アカウントからの情報をAgent iがユーザーに届けるという仕組みが構築できる。LINEの公式アカウントから有償で一般ユーザーに情報を届けるというスキームが構築できれば、持続可能性の高いAIサービスに進化することができそうだ。
ただ、個人的に気になっているのが、ヤフーの広告ビジネスへの影響だ。
ヤフーを開けば、バナー広告がいくつも表示されている。ショッピングなどで検索すれば、「PR」として広告料を支払っている店舗の商品が真っ先に表示される。
Agent iはこうした広告をすっ飛ばして情報を出してくれるので、ユーザーにとっては便利だが、ヤフーにとっては悩ましいことにはならないのか。
「Agent iはヤフーのディスプレイ広告収入に影響を及ぼさないのか」と記者会見で質問したところ「新しい広告を開発中」とのことであった。
グーグルのGeminiもそうなのだが、AIエージェントが進化し、便利になっていくと「既存のインターネット広告モデル」が毀損されていく可能性がある。
今後、AIをどう進化させ、広告ビジネスを維持させるかという点においての課題を解決していく必要がありそうだ。













