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政府「iPhoneもサイドローディング対応を」、モバイル市場の寡占解消へ向け

 16日、政府は「デジタル市場競争会議(第7回)」を開催した。「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」として、スマートフォンのアプリストアやOSなどの環境に関して取りまとめた資料が公開されている。

 本稿では、公開された資料に基づき、取りまとめられた内容の一部を紹介する。

モバイル・エコシステムでは、少数のプラットフォーム事業者による寡占が生じている
個々の問題に応じて、「事前規制」と「共同規制」の枠組みの2つのポリシー・ミックスで対応するという

アプリストア

決済・課金システムの利用義務付け

 「App Store」「Google Play」を利用してアプリ内コンテンツなどを販売する場合は、アップルやグーグルが提供する決済・課金システムの利用や、手数料の負担が必要になる。これに関して、多様な料金プランやサービスを提供できないといった課題がある。

 デジタル市場競争会議では、こうした制約は「イノベーションによる新たな価値提供と競争の減退につながり得る」と指摘。

 対応の方向性として、「一定規模以上のアプリストアを提供する事業者が、開発者などに対し、自社の決済・課金システムの利用を任意のものにすること」などが挙げられている。

アプリ内における情報提供の制限

 アップルやグーグルは、「App Store」「Google Play」を利用する開発者に対し、アプリ内における情報提供などを制限している。

 たとえば、アプリ外でのデジタル商品購入などは案内できない。これについてデジタル市場競争会議では、「ほかの事業者が提供する決済・課金サービスの取引機会が著しく減る」と問題視する。

 対応の方向性としては、「一定規模以上のアプリストア上で獲得したユーザーへのさまざまな情報提供について、開発者がアプリストア側への対価を支払わずに情報を提供できるようにすること」などが挙げられている。

アップルにサイドローディング求める方針へ

 iPhoneでは、App Store以外の経路を利用したアプリのインストール(サイドローディング)が、原則として認められていない。アプリの代替流通経路が制限されている状況であり、デジタル市場競争会議では「さまざまな競争上の問題が生じている」とする。

 対応の方向性として、一定規模以上のOSを提供する事業者に対し、アプリの代替流通経路への対応を義務付けることなどが挙げられている。

 なお、セキュリティやプライバシーの確保も必要とされている。事務局では、「App Storeを通じて提供される代替アプリストア」「iPhoneにプリインストールされた代替アプリストア」「ブラウザ経由で提供される代替アプリストア」のほか、ブラウザ経由でのサイドローディングを検討している。

プリインストールアプリ

 iPhoneやAndroidスマートフォンでは、アップルやグーグルによるブラウザなどがデフォルトとして設定されている。利用者に対するアンケート結果では、そうしたデフォルト設定が変更されにくい傾向があるという。

 デジタル市場競争会議では、「デフォルト設定のサービスが競争上優位となり、サードパーティが不利な状況になる」と指摘。

 利用者がデフォルト設定を容易に変更できるシステム整備などを事業者側に求めていくことが、対応の方向性とされている。

UWBやNFCなどへのアクセス

 アップルは、近接デバイスを認識する独自のU1超広帯域チップ(UWB)を所有しており、2019年にiPhone 11へ導入。その際、ある開発者からのUWBへのアクセス要求を認めなかった。その後、2021年~2022年にアクセスが認められたが、数年にわたってアクセスに差異が生じる結果となった。

 また、iPhoneではNFCの技術仕様がオープンになっていない。そのため、iPhoneのNFCチップにアクセスする場合、必ずApple Payを利用する必要がある。

 デジタル市場競争会議では、OSなどの機能について、「提供事業者と同等の機能へのアクセスを、サードパーティにも提供すること」などを対応の方向性として挙げている。これにより、公正な競争を実現する「イコールフッティング(条件の同一化)」が成立するとしている。

松野官房長官のコメント

 松野博一官房長官は16日の会見で、デジタル市場競争会議で取りまとめたことを報告した。

 松野官房長官は、スマートフォンが広く普及している状況を踏まえ、モバイルエコシステムを「デジタル社会の不可欠なインフラ」と表現。セキュリティやプライバシーを確保しつつ、多様な主体によるイノベーションや消費者の選択の機会が確保されることが重要であるとした。