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Sub6エリア倍増を目指すKDDI、5Gは普及期に突入

 KDDIは、2024年度中に5G専用に割り当てられた「Sub6」と呼ばれる周波数を用いる5Gエリアを2倍に拡大する。衛星通信との干渉などを防ぐことにより実現し、5G体験の向上を図る。

衛星干渉防ぎSub6エリア拡大

 KDDIが保有する、Sub6と呼ばれる5G用に割り当てられた周波数のうち、3.7GHz帯と4GHz帯では衛星通信との干渉が課題となっており、これを取り除くことでエリア拡大を図る。同社ではこれらのSub6周波数で合計200MHz幅の帯域を保有しており、2023年度末時点で3万4000局の基地局の開設を計画している。

 KDDI 執行役員の前田大輔氏は、2020年からこれまでを5Gの導入期だったと位置づける。これまでは主に生活導線を意識して、鉄道路線や商業施設を中心としたエリア整備を続けてきた。この方針はアフターコロナでの人流増加にも対応できたという。今後は普及期に入り動画の高画質化、3DコンテンツやAIの浸透などが予測される。前田氏は3万4000局の基地局を「いよいよ本格利用していくのが普及期」と意気込む。

 衛星通信(Cバンド)では、地球局とのダウンリンクに3.6GHz~4.2GHz帯を使用しており、携帯電話用のSub6との干渉が懸念される。衛星通信による干渉のおそれがなくなれば、ある程度性能を抑制しているというSub6基地局の出力を引き上げられる。同社のシミュレーションによれば、これまでの倍のエリアをカバーできるようになり、生活導線のなかで10Gbps程度の速度を目指してエリア構築を進めていく。

 直進性が高く、広いエリアを作りにくいミリ波でも、中継局を活用しながらエリアを広げる実証を進め、屋外で利用する可能性を模索している。Sub6だけでは対応できない、人口密集地域でミリ波を組み合わせる構想が示された。

導入期における品質維持の取り組み

 同社ではこれまでも、ネットワークの品質向上に向けて取り組んできた。前田氏によれば、3G→4Gや4G→5Gのような技術世代が移り変わる時期にはネットワークの品質低下が起きやすい。

 ある基地局がカバーできる通信エリアの端では、電波強度が弱くなるがこれはエリア内にいるにも関わらず、通信できない「パケ止まり」のひとつの要因となる。ほかにも、アンカーバンドに端末が殺到することで周波数が逼迫することや転用周波数の5Gエリアでは4Gエリア間で干渉が発生しやすく、やはり品質低下の要因になる。

 無理に5Gで通信させずに4Gにしたりトラフィックを分散してアンカーバンドへの集中を避けたりといった対策のほか、出力を調整することで干渉を防ぐという取り組みで、品質を担保してきた。こうした対策の積み重ねで、2024年1月には2023年12月比で他社よりも高かったパケ止まり発生率を低くおさえることに成功した。

 KDDIでは今後も、パケ止まりの改善に向けた改善を実施し、より快適なネットワーク環境の構築を図る姿勢を見せている。同社が進める取り組みには、ビッグデータによる分析のほか、基地局のトラフィック監視の分散自動化などの対策が含まれる。

イベントや災害にStarlink活用

 日々利用する携帯電話だが、イベントなど非日常における利用でも品質を保つ取り組みをKDDI 取締役執行役員の松田浩路氏は紹介する。

 2023年末に開催された「コミックマーケット 103」では、前回比でおよそ1.5倍、通常の約10倍の端末接続数があり、SNS上での声も好評だったという。

 このほかにも登山中に通信を利用できる「山小屋Wi-Fi」やイベント会場で提供する「フェスWi-Fi」など、Starlinkを活用した取り組みを実施している。Starlinkは災害対策としても活用されている。松田氏によれば、令和6年能登半島地震ではスペースXの協力のもと750台を超えるStarlinkを被災地へ送った。能登半島では、1月15日時点で進入困難地域を除き応急復旧しており、今後も他事業者・自治体と連携して残りのエリアの復旧を進める。

 このほか、タワークレーンのオペレーター向け、領海内・外を航行する船にもStarlinkによる通信を提供する。また、スペースXとともに人工衛星とスマートフォン間の直接通信にも取り組んでおり、2024年内のサービス開始を目指して検証を進めていく。