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KDDI“本気のSub6”、パワーアップの瞬間を見てきた

 KDDIは14日、5G通信について専用周波数のSub6帯のエリアを拡大することを発表した。関東で2.8倍、全国で1.5倍Sub6帯のエリアが拡大するという。

 基地局の大幅な増加がなくエリアを急拡大できるのは、これまで実施していた出力やアンテナ角度の制限を緩和したため。これまで、衛星通信事業者との干渉抑止のために行っていたが、衛星と通信する地球局の移転などにより、これまでよりもより最適な出力、最適な角度で基地局を展開できるようになり、これによりエリアが拡大するという具合だ。

 今回の説明会の会場付近では、ちょうど説明会当日に出力レベルの増力を実施する基地局があるとし、今回この増力の瞬間を取材した。いわば、“本気の出力”となるわけだ。

増力前は弱いエリア

 今回測定した場所は、基地局から見通せる場所で、増力前は建物の中に入ると電波をつかみづらい状況だった。今回の測定は屋外で実施したが、筆者の端末でも5Gから4Gへの通信に変わってしまうシーンも見えた。

基地局が見通せる場所

 実際にスループット測定を行うと、ダウンロード(下り)で72.6Mbps、アップロード(上り)で6.10Mbpsだった。

 増力後はどうなるだろうか。

 増力は、同社のネットワークセンターからコマンドを送信することで実施される。ネットワークセンターでは、電波の状況やコマンドが正しいかどうかを確認し、増力させるコマンドを送信し、遠隔で出力を調整する。

 増力後は、測定場所での電波の強度も大幅に上がった。測定を実施すると、下りで307Mbps、上りで11.7Mbpsとなり、特に下りで大幅な速度向上が確認できた。

電波の強度を示すグラフ。増力後は電波の強さも上がっている

 デモの後も、測定してみると、下りが400Mbpsを超えた測定もあり、増力の効果が現れた。

建物の中でもSub6が利用できるようになる?

 今回の測定場所では、増力により建物内でもSub6が利用できる程度の電波強度となった。

 電波強度が増力することで、提供エリアの拡大や速度の向上、建物の中での安定した通信などが期待できる一方、「5Gの電波が弱くなってもつかみ続けていて通信が安定しない」という事象が懸念される。簡単に言うと、周辺には電波強度が強い4Gの電波が飛んでいるのに、スペックが高い5Gの電波が弱くてもあるとそれを掴んで離さない(ほかの周波数に切り替えない)ようになってしまい、通信が極端に遅かったり通信できなかったりしてしまう。

 同社執行役員 コア技術統括本部 技術企画本部長の前田 大輔氏は「Sub6の周波数帯を無理しすぎて通信を続けると、パケ止まりが起きてしまうので、ある程度ですぐに転用周波数(NR化)の5Gにダウンさせるセッティングを、Sub6拡大においても並行して行っている」としており、エリア拡大後も継続してモニタリングを実施していくものと見られる。

執行役員 コア技術統括本部 技術企画本部長の前田 大輔氏