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KDDIが語る「パケ止まり」の理由とは

 KDDIは15日、通信品質に関する説明会を開催した。このなかで、同社執行役員技術統括本部技術企画本部長の前田大輔氏が、“つながっているように見えるのに、なかなか通信が進まない”といういわゆる「パケ止まり」の背景にある要因などを語った。

 2020年に始まった5Gに対し、4年間程度を「5Gの導入期」と位置づけ、まずはエリアを広げるべく、4G用周波数を5Gに転用してきたKDDI。これは、5G用として新たに利用が始まった周波数が、いわゆる“高い周波数”になり、低い周波数と比べてまっすぐ届き、建物の陰などに回り込みにくいため、採用された手法だ。同様の手法は、ソフトバンクも採り入れている。

 「ローバンド(低い周波数)、ミッドバンド(中程度の周波数)で面を作っていくのが導入期」とした前田氏は、2024年度以降、5Gの普及期に入っていくとして、Sub6(サブシックス、6GHz帯以下の周波数のこと)を扱う基地局を数多く整備してきているという。

 その上で、今春、首都圏を中心に衛星通信との干渉が緩和されることから、首都圏でのSub6での5Gエリアが一気に2倍になると説明する。

 これまでは鉄道路線など、生活導線を中心に5Gのエリアを整備してきたKDDI。2023年5月以降、新型コロナウイルス感染症に関する制限が緩和され、人流が戻ってきたことに、「人流回復によるトラフィックにもミートして対応してきた」として、通信量が一気に増えた時期であっても対応できたという。

通信の世代が変わるタイミングでの品質管理の難しさ。

 これまでの5Gエリアの整備方針、そしてこれからの展開に自信を示すKDDIだが、かつての3G、4Gが登場したときと同様、品質管理には苦労する、と前田氏。

前田氏
「システムが変わる時は、どうしても既存のシステムの方がエリアも広い。新世代への過渡期の最初の段階とは、どうしても古いシステムとの間の境界面ができる。ここのチューニングは非常に難しい」

 そう語る前田氏は、3つのポイントを挙げる。

 ひとつはエリアの境目で電波の強度が弱いまま、スマホが5Gの電波をつかんだままにしてしまうこと。2点目は、5Gの初期段階で導入されている「5G NSA方式」では、4Gの電波を“アンカーバンド”として併用するが、アンカーバンドが混み合ってしまう事象がある。そして3点目が、転用によって4Gと5Gで同じ周波数となり、エリアが重なるところで干渉が発生してしまうということになる。

 前田氏は1点目の「エリア端での弱電波5G保持」について、5Gエリアを広げるなかで、どうしてもエリアの端は電波が弱くなる、と指摘。その状況のまま5Gに繋がり続けようとすると、“パケ止まり”になってしまう。

 同氏は「携帯電話会社としては、5G対応スマホにはできるだけ5Gに接続してほしいと考えてしまい、できるだけ5Gの電波をキャッチするセッティングをしがちだが、やりすぎるとパケ止まりが起きる」と解説する。

 そこで通信品質をチェックして、繊細なチューニングをして無理をせず、場面によっては4Gにあえて繋がるチューニングをしていくという。

 2点目の「アンカーバンドへの積極的な誘導による周波数逼迫」については、アンカーバンドが混み合ってくれば、こちらもあえて5Gではなく通常の4Gで通信するよう分散させていくという手法が対策として紹介された。

 そして、3点目の「同周波数による4Gと5Gのシステム間干渉」が発生する場所では、あえて5Gの届く範囲を狭くしたり、4G側の出力もわずかに下げるといったチューニングをして、重なり合う部分を減らすようにする。

競合他社と比べて

 代表的な3つの事例を挙げて、それぞれでパケ止まり対策をしているというKDDIの通信品質は、他社と比べてどうなのか。

 前田氏は、今回示されたデータは、KDDIのビッグデータによる「パケ止まり」発生率の変化を示す。

 たとえば、競合のうち1社については、KDDIの品質は2023年4月時点で、その競合より劣っていたが、対策が生かされ、今年1月時点では同等レベルに追いついたという。

品質を改善する方法

 通信品質に影響を与える要素、そしてその対策を紹介した前田氏は、さらに「品質向上のプロセス」まで触れる。原因をいかに見つけて、分析し、そして対策にこぎつけるか、という一連の流れで、それをいかにスピーディに進めるかが肝になる。

 4G時代から、品質情報を自動的に、スマホやSNSから収集してきたとのことで、今は、それをさらにスピードアップさせている。

 そして、トラフィック(通信量)の監視し、分散自動化も進めて対応にかかる時間を短くしていく。

 データをもとにスピーディに問題を見つけて対処していくという一連の“データドリブンの自動化”で、データを蓄積して、分析にかかる時間を8割短縮させたとのことで、こういった取り組みを現在進めているという。