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NTT島田社長「irumoが売れている」「ドコモは頑張っている」、第3四半期決算会見

 NTT(持株)は8日、2023年度第3四半期決算を発表した。

 連結決算は対前年で増収減益となり、営業収益は9兆7169億円(対前年+1.5%)で、第3四半期として過去最高を更新。営業利益は1兆4862億円(対前年-2.3%)となった。

 8日の決算会見には、島田明代表取締役社長が登壇した。

島田社長

 営業利益について、四半期ごとに着実な利益改善が達成されており、第4四半期にはさらなる増益を見込んでいる。なお、営業利益1兆9500億円という業績予想に変更はない。

 NTTでは今年度内に、NTTグループの主要なデータセンター間をIOWN(編集部注:NTTが掲げる次世代ネットワーク構想)のAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)で接続する。2024年度からは地域のデータセンターへも拡大し、分散型データセンターの構築を進める。

 1月の令和6年能登半島地震では、「ドコモ公衆ケータイ」として携帯電話1520台を被災地へ提供。また、衛星携帯電話(ワイドスターII)375台や、衛星通信「Starlink」9台を提供している。

 なお、NTTドコモの決算については本誌別記事で紹介している。

質疑

KDDIとローソンのタッグへの受け止め

――KDDIがローソンにTOBを実施するという発表があった。ドコモでもローソン株式を2%保有していると思うが、今後の保有方針は。店頭での「d払い」「dポイント」のサービスはどうしていくのか。

島田氏
 まだ、(ローソン株式の)扱いについては決めていません。今の段階ではちょっとご容赦いただきたいと思います。

 決済サービスはお客さまが選択されるものです。(KDDIの)髙橋社長も「自分のところだけにはしません」みたいなことをおっしゃっていましたので、d払いも継続していただけるんだろうと思っています。

 私どもとしては、決済サービスをなるべく幅広いところで使っていただけるように努力していきたいと思います。

――d払いもdポイントも、ということで合っているか。

島田氏
 はい、そうですね。まだ(具体的に)話しているわけではありませんが。

――KDDIとローソンの取組みが、事業環境にどう影響を与えるのか。

島田氏
 同じような戦略を取るつもりはありません。

 たとえばサプライチェーンのDXのような部分については、最終的な小売の方々だけではなく、上流工程の方々もいらっしゃって、そこをどうやってつないでいくかということになります。

 そのあたりでは、私どももDXのサポートを各分野でしてきましたので、そこは引き続き継続してやっていきたいと思います。

 コンビニの主要3社さんともビジネスでお付き合いさせていただいてきていますので、しっかり強化していきたいです。

 我々自体がコンビニに出て行くとか、そういうことを考えているわけではありません。

モバイル×金融の連携

――ドコモの決済・金融サービスについて聞きたい。他社ではモバイルサービスと金融サービスの連携を強めているところもある。この点、少し遅れている部分もあると思うが。

島田氏
 もともとNTTグループの方針は「BtoBtoX」であり、ミドル(中間)のBのお客さまをサポートするのが基本でした。金融の会社さんに対してのサポートをマルチにやっていこうというのがベースだったんです。

 ですが、たとえばスマホのアプリひとつでいろいろなものが完結するようなことが求められるようになってきました。そういう意味で、ドコモはその分野で少し出遅れたというのは事実だと思います。

 どちらかというと我々は、金融機関さんや証券会社さんに対して均等な外交をして、自分たちでそこへ出ていくことはやってきませんでした。

 ただ、生命保険も損害保険もまとめてやったほうが、ポイントもついて(付与されて)いいのではないか、というニーズが高くなってきましたので、遅ればせながらではありますが整備しています。来年度くらいにはキャッチアップしていきたいと思います。

コンプライアンスに対する認識

――NTT西日本で個人情報をめぐる案件があった。コンプライアンスの重要性などへの考えを教えてほしい。

島田氏
 コンプライアンスは企業にとって非常に重要です。法令遵守というよりも、社会の環境変化に合わせて、しっかりした規律を持って対応することを求められています。

 (NTT)西日本で個人情報が漏えいしたことについては申し訳なく思っており、深く反省しています。

 (NTT)西日本グループだけではなくNTTグループ全体で、同様な問題が発生しないかどうかということを調査しました。

 なかには年をまたいでしまうものもありましたが、緊急対策はだいたい12月いっぱいでやりました。当面の対策は打ったということです。

 USBメモリーを全面禁止するにあたっては、オペレーションのプロセスを変えるなどの必要もありますので、本格的な対処策を検討しています。

 (NTT)西日本の情報漏えいについては、第三者も含めた委員会が今調査しています。今月の半ばくらいには調査報告はいただけると聞いていて、「今月末には、調査報告に基づく発表の機会を作ってもらいたい」と西日本の社長へ依頼しているところです。

ドコモで好調なプランは?

――ドコモの決算で、コンシューマー通信のセグメントでの動きの要因を知りたい。機器収支改善によるプラス要因、モバイル通信サービスの収入減をどう見ているか。前回の上期決算では、(ドコモの)井伊社長から「今期中にARPU(契約者ひとりあたりの平均収益)は4000円程度で下げ止まるのでは」という見方が示されていたが。

島田氏
 今期のARPUは、4000円をちょっと切って3990円になっています。

 ひとつの要因としては、これはありがたい話ではありますが、「irumo」が結構売れているんです。

 セカンドブランド相当のブランドを出したということの影響が、多少あると思います。(他社と比べて)少し遅れて出てきていますので。その影響が一定程度あって、そのあと反転してくるんだろうという認識です。

 トータルとしては、第2四半期にiPhoneの新しいものが出たりとか、第3四半期の端末の制度改定がありました(編集部注:端末割引に関する総務省の制度改定)。ドコモはあまり端末の値下げをやってこなかったので、逆に端末のところは利益は少し出ています。

 MNPの成績が良かったかというと必ずしもそうでもないし、ARPUも完全に反転しているわけではないので、春の商戦をどう対応していくのかはまさに今検討しています。

 それから、将来のお客さまを確保していくのは非常に重要だと思っています。若年層の方々に対して魅力的なものを訴求していくことも大きな要素になると思います。ぜひ期待していただきたいです。

――ドコモのネットワーク品質に嫌気がさして解約した人はいるのか。契約者数への影響は。

島田氏
 アンケートを取っているわけではないのでわかりませんが、あまりいないんじゃないかとは思っています。

 自分で言うのも変ですが、ドコモはここのところ一生懸命頑張っています。

 実際、コロナ禍が明けてからのトラフィック量は、よくよく調査を進めると倍くらい上がっているところもありました。そこへの対応が後手に回ってしまったところは、反省をしています。

 ただ、そのあとはしっかり対応してきていまして、計画していた12月末までの改善はすべてやり尽くしました。基地局を増設しなければいけない部分は年や年度をまたいだりすることもあるかもしれませんが、着実に改善してきています。

 いわゆる通勤路線の沿線部分も、相当改善されています。これからはアプリのところまで管理をして、品質を向上したいと思います。そういったことについて会見をするようなことがないよう、努めていきます。

「Lemino」でどのようなコンテンツを配信していく?

――ドコモがJリーグと契約して、ルヴァンカップの放映を「Lemino」で始めると発表した。今まで「DAZN」がやっていた部分の一部をLeminoでやることの意義は。

島田氏
 映像ビジネスの分野は、独自のコンテンツを皆さん(事業者同士)で競る時代になってきていると思います。

 そういう意味では、複数の媒体を契約している方がいるのではないか。私もほとんど契約しているんですが(笑)、観たい媒体をそのときにチョイスしていくことになります。

 ですからLeminoも、ボクシングの井上選手の(配信の)ように、Leminoでしか観られないものを出していくことが重要です。

 際立ったコンテンツをしっかり提供して、お客様の心をつかんでいけるようなことをしっかりやっていきたいと思います。

衛星通信の将来像

――衛星通信について、今後の事業のあり方を教えてほしい。

島田氏
 今回、我々はワイドスターIIの端末を被災地に持ち込んだんです。なぜかというと、実は一番使いやすいからです。

 ワイドスターIIIは、たとえばスマホと連携できますが、ワイドスターIIは音声通話ができるような機材だったので。

 衛星も用途によって使い方が変わってきますし、これから衛星が進化していくタイミングで、用途に合わせてチョイスしていくことが必要だと思います。

 ですから、いろいろなプロジェクトに参画して、優劣や利便性を見ていかなければいけないと思っています。

 日本でも低軌道衛星を作るべきという議論もあります。我々だけではできませんので、国などでご主導いただいて作っていく必要があると思います。

 あとはHAPS(編集部注:High Altitude Platform Stationの略、高高度プラットフォーム)について、日本のエリアに持ち込んで実験を早くやりたいなと思っています。

震災復旧について、ユニバーサルサービスのあり方

――能登半島地震について状況を知りたい。復旧費用は。

島田氏
 復旧は、主な面積ベースで97%ぐらいまで復旧してきました。まずはモバイルファーストの復旧活動をやってきています。道路がまだアクセスできないところがあって、(基地)局数で言うと15局くらい残っている状況です。

 固定(回線)の局数で言うと2局くらい、まだアクセスができません。

 そういう意味で、正確な費用は明らかではありませんが、100億円くらいになると思っています。固定系のほうが復旧費用がかさむという認識です。

――復旧の進め方についてどう考えているのか。

島田氏
 今回に限らず東日本大震災のころから、お客さまのニーズが強いのはモバイル回線の復旧であることを認識しています。

 今回の能登半島の地震でも、「モバイルファーストで復旧しよう」というかたちでドコモにも指示を出しました。(NTT)西日本には、「携帯4社からのご要望を優先しろ」と(伝えました)。

 もちろん、自衛隊や気象庁の地震計などの重要回線は最優先しますが、それ以外ではまずはモバイル回線を復旧するよう指示していました。

 総務省さんで、NTT法に関してユニバーサルサービスのワーキンググループが立ち上がりました。モバイルを中軸として考えるようなユニバーサルサービスの体系を作っていく必要があります。

 従来のメタルの固定回線は、住宅や事業所に対して、“点”の通信をするものでした。今、お客さまに求められているのは、避難所や避難する際の主要な道路など、点ではなく“面”での通信だと思います。

 ですから、これからの時代はモバイルを中心としたユニバーサルサービスをベースとして考えて、そこをどう成立させていくかということではないかと思います。

 もちろん、その背景には光(回線)のサービスをちゃんと守っていくということもあります。今後議論を深めていって、新たなユニバーサルサービスの体系を作ることが重要だと思います。国民経済的に考えて、安く効率がいいものになるよう作っていくべきです。

 たとえばあるエリアで、「どの事業者が安くできるのか」をチェックしていただき、行政が指定できるようなかたちもいいと思います。ただ、そこに対して手を挙げる方がいなければ、NTT(東西)が引き受ける覚悟があるということも申し上げてきましたし、携帯事業者自体がそういう覚悟を持っていく必要があるかもしれません。

――(復旧は)モバイル中心でという話だったが、公衆電話もユニバーサルサービスの対象になっている。公衆電話の存在意義や役割についてどう考えているのか。メタル設備が縮小した10年後など、公衆電話はどうなるのか。

島田氏
 諸外国では、公衆電話の設置の義務はほとんどの国でなくなってきています。

 どちらかと言えばモバイルでどうカバーするかということが主体になってきていますので、そういう形に持っていくのが基本線かなとは思います。

 公衆電話はメタルの(価格が)高い線で構成されていて、もし光の回線で公衆電話をやろうとすると、ソフトウェアや課金方式を新たに作り込む必要がある。当然そこにはコストがかかってきて、国民経済や利便性を考えたときに、どういうやり方がベストなのかを議論する必要はあると思います。

 ユニバーサルサービスの議論のなかで、公衆電話のあり方についても議論する必要があるだろうと思っています。

――ドライカッパー(未使用の回線)の接続料が、一部基本料を上回るような状況に来ている。赤字が増えるしかないという状況だと思うが。

島田氏
 現時点で明確に言うのは難しいのですが、赤字の事業を継続していくのは、非常に厳しいものがあると思います。

 適正な利益水準が必要なものだろうと思いますので、そういう形のものは政府的に見直していっていただければありがたいです。

 少し話がずれますが、(それと同じものが)やはりメタルの固定電話だと思うんです。

 メタルの固定電話自体は、ユニバーサルサービス義務がありますので、ピーク時で6000万のお客さまがいました。昨年の年度末では1350万になりましたが。

 たとえば(お客さまからの)ご要望があれば、一週間以内でメタルをつけなければいけません。

 今は年間で10万件くらい新たなご要望がありますが、160万件くらい撤去や廃止のお客さまがいて、だいたい年間で150万件ずつ下がっています。

 でも、申し込みがあれば全国津々浦々(メタルの固定電話を)つけなければならず、膨大なメタルの固定電話を維持しなければいけません。

 10年経ったら900億円以上の赤字になってくるので、累計するとものすごい金額になってしまうんです。

 10年くらいで1000億円レベルのキャッシュアウトがあり、そういうキャッシュをインフラの高度化みたいなほうに早く振り向けていくことが重要です。

 NTT法におけるユニバーサルサービスの議論はそういうところもよく見ていただいて、新たなネットワークの高度化にキャッシュが回っていく議論になればいいなと思います。