ニュース
「未来のコンビニをつくる」、KDDIと三菱商事がローソン共同経営で描くビジョン
2024年2月6日 22:26
KDDI、三菱商事、ローソンの3社は6日、新たな資本業務提携契約を締結した。KDDIはローソンに対する公開買付の実施を予定しており、取引の完了後に三菱商事とKDDIはローソンの議決権を50%ずつ保有し、共同経営パートナーとなる。
6日の会見にはKDDIの髙橋誠代表取締役社長CEO、三菱商事の中西勝也代表取締役社長、ローソンの竹増貞信代表取締役社長が登壇し、今後のビジョンについて語った。
三菱商事は、2000年にローソンとの業務提携を開始し、2017年に子会社化している。2020年以降、ローソンはコロナ禍による影響を受けた時期もあったが、店舗改装や品揃えの強化、生活者ニーズの変化に対応する施策などが奏功し、海外事業で進む収益化もあわせて、2023年度には過去最高の当期純利益を見込んでいる。
一方で、デジタル技術の進展や生活者ニーズの多様化、将来的な人口減少など、さらなる環境の変化を見据えて今回の提携に至った。
中西社長は「『三菱商事はもはや商社ではない』と言っているが、今回の提携を通じて各社の強みを融合することで、新しい形の未来のコンビニエンスストア事業が可能になる」と語った。
現時点でローソンの株式は、三菱商事が50.1%、KDDIが2.1%、それ以外の株主が47.8%という保有割合になっている。4月ごろから公開買付が始まり、最終的には三菱商事とKDDIで50%ずつを保有する。KDDIが47.9%を取得するための金額は、約4971億円になるという。
髙橋社長は「コンビニエンスストアは社会インフラとして重要な役割を果たしている。我々の通信、あるいはDXの力を使って、未来のコンビニエンスストアを実現したい」と語る。
髙橋社長が強調するのは“リアル拠点”の重要性。店舗として約1万4600の拠点を有するローソンと、約2200の拠点を有するKDDIがタッグを組み、顧客に対してさまざまな価値を届けていく。
たとえばコンビニにスマートフォンのサポート窓口を置くといった施策は、身近な存在としてのコンビニをより便利にするもの。衛星通信の「Starlink(スターリンク)」によって、コンビニを防災の拠点として活用する構想もある。
髙橋社長は「ローソンさんとずっとお付き合いしてきたが、(ローソンの)竹増社長はビジョナリストで、いろいろな将来構想をお聞きしている。未来のコンビニエンスストアの話もたくさんしていて、ぜひご期待いただきたい」とコメントした。
竹増社長は「今回のKDDIさんからのご提案は真摯に受け止めて一生懸命考えた。しっかり受け止めて一緒になってやって『新しい未来のコンビニをつくろうじゃないか』と思うに至った」と語る。
竹増社長は「信頼関係」「リスペクトし合える企業文化や社風」「強い企業」「将来に向けて協業できること」を、提携という決断に至った重要なポイントとして挙げた。
質疑応答
――今回の提携の経緯について知りたい。
髙橋社長
正確には、昨年の5月に、三菱商事さんのほうから本件についてご提案がありました。今回のスキームについてもご提案があり、そこから検討し始めました。
ただ、2019年から我々も(ローソンに)出資しておりますので、竹増さんからは「こんなコンビニをやりたい」というお話はうかがっていました。
今回、正式にはスキームができあがってからご提案していますが、今まで継続的にそういう話をしていました。
スキームについていろいろ議論はしましたが、ベクトルという点では「未来のコンビニエンスストア」の実現に対してお手伝いできることがたくさんあると思いましたので、大きな障壁はなかったかなと思います。
中西社長
今の時代の流れの速さのなかで、コンビニだけではなく異業種が参入してきたときに、三菱商事として本当にローソンの価値がアドオンできる部分があるのかと(思いました)。
三菱商事グループの上流から流している食品デリバリーなど、いろいろなところでアドオンはしてきましたが、これ以上追加でサポートできることについて悩んでいました。そうした中で「新しいコンビニの形って何だろう」という考えがありました。
――提携を決断した一番の決め手は。シナジー効果として何を期待しているのか。
中西社長
リアル(拠点)にデジタルを掛け合わせたいという中で通信がキーワードになることについて髙橋さんと話し、「次につながるコンビニになる」という確信がありました。それを追求したいということです。
我々の店舗網に、KDDIさんがお持ちのデジタルの力を掛け合わせると、1+1ではなくて掛け算になるということが決め手になりました。
髙橋社長
(ローソンの)1万7000店舗の拠点で、スマートフォンを売りたいと思っているわけでは決してありません(笑)。
通信会社もだいぶ形が変わってきていまして。今まではスマートフォンを販売するのも大事な仕事でしたが、今はいろいろな業界の中で通信をお使いいただいている。
一過性だった取引が持続的な取引に変わってきていて、産業が変わりつつあると思っています。
コンビニエンスストアさんも小売とよく言われますが、小売という一過性のものではなく「何回もその店に来てもらえるような持続的なつながりを実現したい」と、竹増さんは考えていらっしゃると思うんですよね。
そこには必ず通信が必要で、DXの力が必要だと思っています。
シナジーとしてKDDIの利益を、というふうにはあまり考えていません。通信の力でローソンさんがより発展され、グローバルに出ていくことが大きな価値で、それ自体が我々の会社の成長にもつながると思いました。
時代の変革期なので、こういう思い切った投資は良いかなと思って決断しました。
竹増社長
決め手としては、信頼と、文化と、そして強さです。これを確認して、将来のコンビニについて同じ絵を見て一緒に進んでいけると思い、腹落ちさせていただきました。
これはKDDIさんと歩んだ足掛け5年、三菱商事さんと歩んだ20年の中で、我々社内全体も腹落ちしていることが、今回の決め手だと考えています。
期待として、テック分野におけるスピードは求めていきたいです。究極的には、コンビニとECが世の中にあれば、いわゆる買い物は成り立っていくんじゃないかなとも考えています。
この2つで成り立たせるためにはやはりテックが必要で、そして通信でつないでいくことが大事だと思います。
中西社長
竹増さんは恥ずかしくて言えないかもしれませんが、「GAFAM」という言葉があります(編集部注:Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字で、米国の大規模テック企業を指す。Facebookは現Meta)。GAFAMに対抗して、「MじゃなくてLだ」「ローソンだ」ということを目指しています。
竹増社長
社内に対しては「グローバル・リアルテック・コンビニエンス」について、「その先にあるのはGAFALだ」「アジアのGAFALになるぞ」と公言しています。髙橋さんにも、2人きりで話しているときにこっそり伝えていたんですけど(笑)、そういう世界を目指して頑張りたいと思います。
――ローソンにはNTTドコモも出資しているかと思うが、この先仲良くやっていけるのか。
髙橋社長
今回はTOB(公開買付)で、最終的には50%を目指すスクイーズアウトになってきますので、その段階では何とか(株式を)売っていただくという方向になろうかと思います。
我々が(ローソンに)2019年に出資したときに、ドコモさんよりも少し上の出資にしたいという思いもあって、それ以降竹増さんとは良い関係を作らせていただきました。
ドコモさんと喧嘩するつもりは全然ありません。コンビニエンスストアからすると「au PAY」だけではなくて「d払い」も「PayPay」も大切な決済手段なので、変なかたちにはならないと思います。
我々としてはローソンさんと近い関係でやっていきたいというふうに思うだけで、一戦交えるつもりは特にございません。
――(コンビニの)競合三社のなかで、ローソンの強みや弱みはどう見ているか。
髙橋社長
それについては、我々が語るところではないような気がします(笑)。
ですが、2019年からいろいろお話をさせていただいいる中で、決断のスピード感はあると思っていて、我々としてやりやすいパートナーという印象があります。
三社の中での競争については竹増さんがご存じだと思いますが、リアルでテックなコンビニエンスという構想は、たぶん一番、ローソンさんが進まれていると思います。
テックを通信と見立ててやっていただける、これをグローバルに展開するということについては、三社の中で一番、我々が強化できたのかなと感じています。
――どちらかといえばKDDIが主導権を握るのかなと思った。大きな会社同士だと主導権争いも大変になると思うが、どのような形でガバナンスが進められていくのか。
竹増社長
我々ローソンとしては、一番大事なのはお客さまということになります。
僕らはいつもみんなに話しているんですけど、お店も加盟店さんもクルーさんも、本部の社員全員も、そしてお取引先さまもお客さまのためにあるんだ、と。
お客さまのために、社会への貢献や便利な生活の提供、有事における安心などを、KDDIさんや三菱商事と一緒に追求していく。それが僕らの本分であり、本質であると思っています。
我々の考え方に賛同いただいた髙橋社長、中西社長において、それに資さないような、先ほどおっしゃったようなこと(主導権争い)が起こることは想定しておりません。惜しまずサポートいただけると考えています。
そういう意味では、まずはローソンがしっかりとローソンの分野で仕事をして、両社ともに納得のいくガバナンスを実行いただくということになろうか思います。そのあたりのところも両社でお話しいただき、我々はもうとにかくお客さまのために一生懸命やるということです。
私自身について、将来的にそういう話はまったくございません。基本的にはお客さまに資する人事が行われると思っています。
髙橋社長
我々も通信の分野であれば、絶対に主導権を取りに行くと思います。
今回は小売の分野なので、正直言って我々にはあまり知見がありません。
ただ、小売さんが価値観をより出していくために通信を使っていただくことについては、我々もプロです。
そういう立ち位置をキープしていくというのが今のスタンスなので、最初から主導権争いの話はする必要はないと思います。
(ローソンの)社長さんは今まで通り、三菱商事さんのほうからお出しになるというかたちでご理解いただければ大丈夫です。
――今、ローソンではdポイントとPontaポイントを両方付与しているが、dポイントはなくなっていくのか。
竹増社長
基本的にはお客さまが選ばれるものであると考えています。「お客さまに選ばれるサービスをしっかりと提供していく」ということに尽きると考えていて、我々プロダクトのほうから、基本的にはそういったことをすべきではないと思っています。
d(払い)さんについてもPayPayさんについても、お客さまがお困りにならないサービスを今後も提供していきます。
髙橋さんのほうから強力なサポートがau PAYに入ってくるのでは、と期待しています(笑)。ですが、基本的にはお客さまにとって一番良いものをこれから提供していきたいと思っています。
髙橋社長
Pontaはやっぱり強化していきたいですよね。せっかくこういう枠組みになったので。そういう話はこれから戦略を練っていきたいと思います。