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「povo2.0」2周年、新トッピングなどの計画は? 秋山社長に聞いてみた

 9月29日に、KDDIのオンライン専用料金ブランド「povo2.0」が2周年を迎える。現在提供されている「povo2.0」は、2021年3月に始まった「povo1.0」が同9月にバージョンアップしたもの。“基本料金0円”のコンセプトに基づき、ユーザーが柔軟に購入できるデータ通信量の「トッピング」が提供されている。

 povoのこれまでの歩みはどのようなものだったのか、そして今後の向かう先は――KDDI Digital Life 代表取締役社長の秋山敏郎氏が、展望などを語った。

秋山氏

新ビジュアルやテーマソング、新トッピングも

 2周年を迎えたpovo2.0のこれからについて、「ブランド自体を変えていくことは考えていない」と秋山氏。新ビジュアルやテーマソング「ひとりといっぴき」を展開し、さらなる認知拡大を図っていく。

 新たなビジュアルは、「povoのサービス開始当初、お蔵入りしたものを掘り起こした」(秋山氏)。現在のpovo2.0のようなサービスを思い描きつつ、さまざまな事情でpovo1.0から始めた当時の初心に戻るといった思いも込められている。

 テーマソングは、povoのいわば“アンセムソング”。maeshima soshiが作曲し、りみーやRin音とコラボレーションした。ミュージックビデオもポップなものに仕上げられている。

 2周年記念の期間限定トッピングも用意される。データ使い放題(3日間)とプロモコード3種類がセットになった「バラエティセット」(980円)や、データ追加0.5GB(3日間)と5分通話かけ放題がセットになった「エントリーセット」(220円)を数量限定で提供する。

 また、新規加入で222GB(3日間)を付与するキャンペーンも予定されている。

秋山氏が振り返るpovo2.0のこれまで

 povo2.0の1年目を振り返った秋山氏は「基本料金0円にこだわってやってきた。メイン回線でもサブ回線でも、いろいろな使い方を支援するようなサービス」と語る。

 2年目となった今年は“サービス拡大期”として、通信にとどまらないサービスを展開。直近ではサーティワンのアイスやローソンの「からあげクン」など、ユニークな商品とセットになったトッピングも登場した。

 秋山氏によれば、期間限定トッピングのなかでも、「SNS使い放題(7日間)」や「120GB(365日間)」は好評だったという。同氏は「特に120GB(365日間)については、スイートスポットがマーケットにあることを実感した」と秋山氏は語る。

 また、トッピングの展開とは別に、povoではサービスとしての機能向上にも取り組んできた。たとえば2023年7月には、ユーザーから要望があったという「海外ローミング」にも対応。秋山氏は「将来的に現地のeSIMを入れられるようになれば」と意気込む。

 また、2023年4月から、一部のトッピングについて、自動でデータ容量を追加する機能「オートチャージ」が導入されている。秋山氏は「『ほしいときに買う』というpovoのコンセプトに反するかもしれないが、ユーザーの声に応えて導入した」と語った。

 「povoブランドで端末を売ることは考えていない」と秋山氏。一方、スマートフォンの下取り需要の高まりを受けて2023年3月に始まった「スマホギガトレード」は、スマートフォンの査定額に応じてギガ(データ容量)が付与されるユニークなしくみとなっている。

 povo2.0の3年目では「もっとできる、一緒なら。」をテーマに掲げ、さらに多様な使い方に対応できるようなサービスを目指していく。

povoが目指したものとは? 今後の展望も

 povoのサービス設計は「テック企業が通信事業をやるとしたら」という発想に根ざしている。ポストペイド(後払い)で月々の携帯料金を払うサブスクリプション型の携帯電話サービスが多いなか、トッピングを先にチャージ(購入)するプリペイド式のpovoは異色の存在とも言える。

 秋山氏はpovoについて「たとえば交通系ICカードはプリペイド式だし、QRコード決済はチャージ式。チャージ式やプリペイド式はすでに浸透しており、通信をデザインし直す際、そういったもの(方式)を軸にUIやUXを設計した」と語った。

 また、基本料金が0円であるフリーミアム式や、メインの通信サービスにさまざまなサービスが付帯するバンドル型の販売方式も、povoならではのプロダクトコンセプトに基づいている。

 povoは、KDDIにとってサンドボックス(実験場)のような役割も担う。たとえばトッピングが購入されづらい時間帯に“ゲリラトッピング”の提供を実施。また、povoのアプリには新たに「Explore(探索)」タブが設けられ、一部のユーザーに対して試験的な仕掛けを展開していく。

「Explore」タブ

 今後について秋山氏は「HDビデオを再生できる(速度の)トッピングのように、速度別のトッピングなども検討しているが、品質の担保といった課題がある」とコメント。マルチアカウントへの対応やサービスのオープン化、グローバル化なども視野に入れていると語った。

質疑応答

――「ギガ活」に関する考えは。

秋山氏
 ギガ活は、自分のなかではバンドルプロダクトです。生活のなかの商品に、ギガ(データ容量)がついてくる。povoではさまざまなプロモーションを実施していますが、やっていることはほぼギガ活です。DAZN(のトッピング)を買ったらギガがついてくるのも同じで、ギガをバリュー(価値)としていろいろなものにつける。3年目は新しい案内もできるようにしたいと思います。

――ギガ活では、もらったギガを使わないことも多い。

秋山氏
 そのあたりは我々のプロダクトの課題でもあります。(ギガ活を)活用しているユーザーの方がマジョリティではなく、開発リソースをあてられなかった部分もある。対象を広げると同時に、ユーザー体験の向上も図っていきたいです。

――「120GB(365日間)」の期間限定トッピングが好評だったとのことだが、ユーザーがアプリを開かなくなる(エンゲージメントが低くなる)のでは。

秋山氏
 おっしゃるとおりです。ただ、365日間データは買ってもらえないかもしれませんが、いろいろな商品を出していけば、アプリを開いてくれるかもしれない。むしろ、そういう人に対して、「どうすればアプリを開いてもらえるのか」を確認するきっかけになります。

――povoのユーザーの年齢層は。

秋山氏
 20代~30代に少し寄っています。ただ、40代~50代がいないかというと、そうでもない。「おもしろいものを見てみよう」という方は、年代に左右されないのではと考えています。

――定番のトッピングを変えていく考えはあるのか。

秋山氏
 変えていっていいと思っていますが、現時点で、変える積極的な動機がありません。定番化にあたって確信があればやりますが、そうでなければ「試して引っ込めて」というかたちでいいのかなと考えています。

 お客さまの期待値があると思いますが、そこまでの確信がないというのが正直なところです。

――定番に昇格させようと思った期間限定トッピングは。

秋山氏
 ありますが、言いづらいですね……(笑)。

――繰り返し出た期間限定トッピングもある。

秋山氏
 はい、あります。そこは察していただければ(笑)。

――ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)はどのようなかたちで推移しているのか。

秋山氏
 ARPUは安定してきています。構成比のところで、これまでサブ回線用途だった人がメインに使うようになったり、お試しで使っていた人が大容量トッピングを購入したりなど、課金している人の比率も上昇傾向にあります。

――コンテンツトッピングは「DAZN」「smash.」の2種類しかないが。

秋山氏
 増やしたいとは思っていますが、(コンテンツトッピングは)パートナーさん側でも割と手を入れる必要がある。「試してみてダメだったら(引っ込める)」のような感じでやりづらい部分もあります。

 「Pairs」とのコラボレーションは、定常的ではなく期間限定でやってみて「双方がOKであれば」というように、段階を踏んだアプローチになっています。

――ギガのトッピングは積極的だが、それ以外(の開発)はあまり……といった印象も受ける。

秋山氏
 まさにそのとおりかなと思っています。ギガ(のトッピング)はすぐ結果が出るので、力を入れすぎている部分がある。

 コンセプト的には、通常運用のオペレーション進化に50%、新しいものの開発に50%のようなかたちで、両利きの経営を目指していきたいです。