石野純也の「スマホとお金」
「ahamo」「povo」「LINEMO」登場から1年、オンライン専用料金プランはどう進化したのか
2022年4月28日 00:00
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用プラン/ブランドですが、提供開始から1年が過ぎ、徐々にその姿が変化しています。
そもそも、オンライン専用プランは国際比較で20GBの中容量帯の料金が高止まりしているという指摘を受け、導入されたものです。そのため、昨年(2021年)3月のサービスイン当初は、3社とも20GBプランとしてオンライン専用プラン/ブランドを提供していました。
一方で、20GBプランだけではユーザーのニーズをくみ取りきれなかったこともあり、徐々に選択肢を広げたり、料金プランをリニューアルしたりしながら、今の形に至っています。料金提供開始時から中身を変えてこなかったahamoも、6月には80GBを追加する「大盛りオプション」をスタートします。そこで今回は、三社三様になりつつあるオンライン専用プラン/ブランドの中身を比べていきます。
小容量の選択肢を増やしたLINEMOとpovo2.0
オンライン専用プラン/ブランドの共通点は、手続きがすべてオンラインで完結するところにあります。
裏を返せば、各社が全国に展開しているショップは原則として利用できないということ。
ahamoのように、有料でドコモショップのサポートを受けられるケースはありますが、基本的には、料金プランの変更やサポートといった手続きをすべてユーザー自身で行う必要があります。店頭でのサポート廃することで、コストの削減を行い、低料金を実現した格好です。
ただし、データ容量はドコモのahamo、KDDIのpovo、ソフトバンクのLINEMOとも、20GB一択でした。元々の料金はahamoが2970円、povoとLINEMOが2728円です。
povoとLINEMOがahamoよりわずかに安いのは、5分間の音声通話定額がオプション扱いになっているため。これに対し、LINEMOはMVNOに近い水準の「ミニプラン」を21年7月に導入しました。データ容量は3GB、料金は990円です。
LINEMOは、前身がMVNOのLINEモバイルで、小容量プランを契約していた(いる)ユーザーが多いことから、その移行先を設ける意味でもミニプランが必要でした。3GBとデータ容量は少ないですが、LINEでの通信をデータ容量から除外する「LINEデータフリー」には対応しています。総務省の調査によると、データ使用量が2GB未満の利用者は20年時点で約半数に上ります。こうした点を踏まえると、ミニプランにフィットするユーザーは少なくなさそうです。
既存の料金プランの延長線上にミニプランを設けたLINEMOに対し、KDDIはpovoの料金プランそのものを全面的にリニューアルして、トッピングを主軸にしたpovo2.0を21年9月に開始しています。基本料は0円ですが、そのままだと通信速度は128Kbpsに制限されます。高速通信を利用するには、データ容量ごとに分かれた「トッピング」を購入する必要があります。
トッピングには、1GB(390円)や3GB(990円)といった低容量の選択肢が用意されています。ただし、それぞれのトッピングで有効期限が異なっており、1GBトッピングは7日間しか利用できません。通常のスマホ料金に近い形で利用できるのは、有効期間が30日間に設定されている3GBトッピングや、20GBトッピング(2700円)です。その他の選択肢もありますが、3GBか20GBを選び続けるのであれば、料金はLINEMOに近くなります。
トッピングの導入で料金の柔軟性を高めたpovo2.0
とは言え、povo2.0は単に低容量プランを拡充しただけのブランドではありません。
トッピングで、都度、必要なデータ容量を足していくことが可能なため、プリペイドの料金プランに近い感覚で利用ができます。先に挙げた1GBトッピングも、そのように利用するためのもの。普段3GBや20GBのトッピングで利用しつつ、月の後半に足りなくなった際に購入したり、2回線目として0円で維持しておき、いざというときだけ1GBを買い足すといった使い方ができます。
24時間データ通信が使い放題になる330円のトッピングが用意されているのも、povo2.0ならでは。このトッピングは、前身となるpovo1.0にも採用されていましたが、極端にデータ通信を利用したい日にだけ買い足せるのは便利です。出張で泊まったホテルの回線が遅かったときや、休みの日に思う存分動画を見たいときなど、1日だけ使い放題を適用することができます。
povo2.0には60GB(6490円)や150GB(1万2980円)といった大容量のトッピングも用意されています。ただし、こちらはいわゆる大容量プランとは異なり、複数月に渡って使い続けることが想定されています。
そのため、60GBトッピングは90日間、150GBトッピングは150日間と、3GBや20GBのトッピングよりも有効期限が長めに設定されています。もちろん、1カ月で60GBを使い切ってもいいのですが、 大容量であれば、後述のahamo大盛りの方がお得 になります。
また、同じKDDIでは、auの「使い放題MAX 4G/5G」が7238円で提供されており、各種割引適用時には4928円まで料金が下がります。こうした点を加味すると、 毎月データ通信量が多い人は、povoの60GBトッピングではなく、他社や他ブランドの料金プランを検討した方がいい でしょう。一方で、povo2.0の60GBトッピングは、30日あたりに換算すると20GB、2163円(端数切捨て)になり、20GBトッピングを購入するよりもお得になります。
同様に、150GBトッピングは30日あたりのデータ容量が25GBで、料金は2163円(端数切捨て)です。オンライン専用の料金プランが横並びで提供していた20GB前後のデータ容量がマッチしているのであれば、60GBトッピングや150GBトッピングを購入した方が、料金は安くなります。
こうした柔軟な組み立てができるのが、トッピング方式の魅力と言えるでしょう。アプリで簡単にトッピングを追加できるのも、オンライン専用プランならではです。
大容量に振り切って差別化を図るahamo、ローミング無料も
ただ、LINEMOもpovo2.0も、20GB以上の大容量が手薄になっています。
LINEMOには20GBプラン以上がなく、povo2.0の大容量トッピングも、先に挙げたように単月で使おうとすると少々割高感があります。こうした中、いち早く大容量プランの提供に舵を切ったのがahamoでした。それが、6月にスタートする100GBの「ahamo大盛り」です。
大容量プランと記載しましたが、より正確を期すなら、これはpovo2.0のトッピングに近いオプションサービスという位置づけになります。20GBのahamoに、80GBの大盛りオプションを足すことで、計100GBのデータ容量が利用できるようになります。大盛りオプションの料金は1980円。ahamo本体の2970円と足すと、合計金額は4950円になります。
大盛りオプションはオプションのため、月の途中で追加することが可能。翌月から外すこともできます。普段は20GBで使いつつ、容量が月の初旬から中旬ぐらいで尽きてしまった大盛りオプションを足せるのが便利です。もちろん、毎月データ容量が20GBで足りない場合は、毎月、月初から大盛りオプションを適用させてもいいでしょう。ドコモの「5Gギガホ プレミア」はデータ容量が無制限で、料金は7315円。各種割引適用後は4928円になります。
割引を適用できるのであればデータ容量の制限がない5Gギガホ プレミアを選ぶ方がいいかもしれませんが、1回線目から固定回線などがなくても100GBが4950円になるのがahamo大盛りの魅力。シンプルさを重視しつつ、大容量のデータ通信を使いたい人に向けた新サービスがahamo大盛りというわけです。単月で使うためのオプションという意味では、先に挙げたpovo2.0の60GBトッピングとも、位置づけが大きく異なります。
1年でそれぞれの個性を打ち出した3社のオンライン専用料金プラン
このように見ていくと、当初はデータ容量が20GBで、料金もほぼ横並びだった3社のオンライン専用料金プラン/ブランドが、1年で大きく変化したことが分かるでしょう。
小容量を伸ばしたLINEMOに対し、ahamoは真逆の大容量を強化。一方のpovo2.0は、トッピングに振り切ることで小容量、大容量の枠だけではくくれない柔軟性を提供しています。
料金やデータ容量が横並びだと決め手に欠け、選択が難しくなりますが、ここまで差が出てくれば、自分の使い方を踏まえた“答え”がおのずと出てくるはずです。
反面、各社の違いを把握しなければならず、複雑になってしまうのはトレードオフと言えます。大局的に見ると、携帯電話の料金は、シンプルさの反動として、選択肢が多様化し、その複雑さが嫌われ、再びシンプル化するということを繰り返しています。1年でここまで変わるのは珍しいことですが、そんな変わり身の速さも、オペレーションがシンプルなオンライン専用プラン/ブランドならではなのかもしれません。