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NTT島田新社長就任会見、コミュニケーションから「データをつなぐ会社に」決意語る

 NTT(持株)の新たな社長執行役員に、島田明副社長が昇格した。新社長就任会見の場に登壇した島田氏は、今後のNTTの注力分野や展望について説明した。

社長に就任した島田明氏

これまでの流れ継承、グループ再編に力入れる

 島田氏は、2代前の鵜浦氏から始まったBtoBtoXのパートナーに付加価値を提供するというビジネスモデルを前任の澤田氏が年間5000億円超の規模にまで成長させたことを紹介。固定通信と移動通信の融合など新たなサービスの提供に向けて、全体で大規模な再編を行っているNTTグループ。

 社長のバトンを受け継いだ島田氏は「当面、この大規模再編の実行を引き継ぎ新たなドコモグループの再編、海外事業会社の統合を着実に実行し、その成果を上げていくことに集中したい」と決意を口にした。

 加えて「CX(カスタマーエクスペリエンス)をEX(エンプロイーエクスペリエンス)で創造」、「テクノロジーでの脱炭素化」「巨大災害時の通信の持続」の3つも合わせて注力していくと語る。

 「新しいものはすべて人から生まれる」という島田氏。社員のワクワク感(=EX)がユーザーの体験(=CX)に結びつくとして社員の体験の仕組みを作り、ユーザーの新たな体験や感動につなげていく。

 さらにIOWNの推進で電力消費の削減、再生可能エネルギー開発、再エネ蓄電所とスマートグリッド事業の推進、新たな脱炭素技術の開発に取り組み、2040年のカーボンニュートラルを目指す。また今後、発生が予測される首都直下型地震や南海トラフ地震など、巨大災害時にも通信インフラを支えるべく、その仕組みと人材育成に取り組む。

 島田氏は、これまでのNTTを通信で「コミュニケーションをつなぐ会社」と表現し、今後は「データをつなぐ会社」へ転換すると明言。同社の社会課題の解決に向かう姿勢は変わらないとしつつ、成長に向けた新たな展望を示した。

今後のNTTグループの姿は

 ドコモグループの再編について、島田氏は記者の質問に答える形で今後への期待感を示す。携帯電話業界を牽引してきたドコモはこれまで多くのプロダクトを生み出し、成長させてきた。

 その一方で「成長しているプロダクトが競合他社の成長と比べてどうか。(自社が)伸びているから満足するのではなく、競争事業者が倍の伸びをしているならそこを上回る伸びにしなくてはいけない」と語る。

 加えて「常にプロダクトを磨き競争事業者の上をいくような企業に(なって欲しい)。今も頑張ってもらっているが一段と(そういう姿に)なってもらいたい」とコメントした。

 今後のNTTの姿を「データをつなぐ会社」と再定義した島田氏。京都大学と共同で電子カルテの構造データ化で医療の高度化を図る取り組みやゲノム解析と健康管理データと組み合わせて予防医学につなげる取り組みなど、テクノロジーで暮らしを豊かにする取り組みを例示。「ヘルスケアだけではなくスマートシティなどでもデータを蓄積し解析、新しいアルゴリズムを作ることに挑戦する必要がある。5年後にはそういうことがしっかりやれるグループに変身させたい」と語った。

 加えて、日本を代表する企業の1社であるNTTの今後の在り方を問われた島田氏は「日本で時価総額5位以内に入っているが、グローバルでは上位に入っていない。上位に入るよう頑張るといっても簡単にはいかない」と実態を語る。

 その上で、グローバル事業に注力し世界での存在感を高める、IOWNなど含めて新しいテクノロジーで新機軸を打ち出すといったことを今後の目指すかたちとして「日夜続けていくことが成長につながる。いきなり(時価総額)上位に入れる秘策はない。M&Aなども含めて地道に努力して成長させていくことが重要」と語った。

 澤田氏から、社長就任の打診を受けたのは2021年の12月の終わりのことという。当時について島田氏は「非常に重責なので、重く受け止めた」と振り返る。4年間、澤田氏とともにさまざまな施策を実施してきた同氏は「勉強もさせてもらったし、少しは役に立ったこともあると思う。その延長線上でNTTをさらに成長させてほしいという気持ちがあったのでは」と澤田氏を慮る。

 その上で「その意思を受け継いでこれからしっかり経営に当たりたいと思う」と今後への熱意を示した。