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ドコモが語る「オープンRAN」の意義と取り組み

 NTTドコモは、5G時代の本格到来とともに普及が進む「オープンRAN」に関する同社の取り組みや世界の状況などを説明する記者発表会を実施した。

広がりつつあるオープンRANとは

 「オープンRAN(O-RAN)」とは、携帯電話基地局の設備を構築する際の考え方のひとつ。これまでは、ノキアやエリクソンといった特定のベンダーの機器のみで設備が構成されることが一般的だった。

 こうした従来型の設備では、専用のハードウェアが多数使われるなどの理由でコストが高いことや同じベンダーが提供する機器同士でしか使えないといったデメリットがある。

 NTTドコモ 無線アクセス開発部長 安部田 貞行氏は「家電でたとえると、テレビを変えたらビデオデッキやスピーカーまでも変えないといけないようなもの」と説明する。

 これに対して、オープンRANに対応する機器は、機器同士を接続するインターフェイスがほかのベンダーの機器にも接続できるため、必ずしもすべての機器が同一ベンダーである必要がない。

 これにより、欲しい装置や導入したいソリューションを柔軟に導入できることが強みという。加えて、特定のベンダーに調達を依存しないことからサプライチェーンリスクの回避にもつなげられるメリットがある。

オープン化の意義

 オープンRANはなぜ必要なのだろうか。携帯電話を中心としたコンシューマーサービスがメインだった4G時代とは打って変わって、5G時代では企業や団体との協力でさまざまなサービス・ソリューションの展開が見込まれている。

 ドコモでも、「5Gオープンパートナープログラム」を通じて、モバイル通信の垣根を超えたさまざまな企業と連携。次世代のサービスの実現や社会問題を5Gを含めたテクノロジーのちからで解決しようと取り組んでいる。

 安部田氏は、さまざまな展開シナリオが考えられるとした上で、最適なソリューションでいかに早く効率的に提供できるかが重要と語る。オープンRANでは、世界中で開発されるソリューションを迅速に利用できることから、タイムリーにサービスを展開できるとメリットを説明する。

 また、新型コロナウイルスの流行により、さまざまな業界で問題とされたサプライチェーンのリスクについても、ひとつのベンダーに縛られないという観点から対策につなげられるという。

ドコモの取り組み

 ドコモは、オープン化の流れに対してどう取り組んできたのか。同社では2020年の3月に5Gを開始。マルチベンダーかつオープンRANを導入しての商用サービスは世界で初のものだという。

 同社では、「5GオープンRANエコシステム」を開始。パートナーとの協業で技術を展開。富士通やインテル、クアルコム、レッドハットなどさまざまなテクノロジー企業が参加しているもの。安部田氏は「単にパートナーの技術をつなぎ合わせるというのではなく、ドコモの技術と融合させることで、新たな可能性を見出したい」と語る。

 ドコモは、ここで生み出された技術は同社内のみならず、海外の通信キャリアに対しても展開していきたいという考えを示した。4G時代から積み重ねてきたオープンRANのノウハウをもとに、「シェアドオープンラボ」を通じて、海外キャリアに対してリモートでvRANの検証が可能な環境も用意する。

 汎用ハードウェアでは、専用のそれと比べて性能が劣るといったデメリットがあるものの、ドコモではNVIDIAなどとの協力により、アクセラレーターサーバーのさらなる性能向上を目指しているという。

 また、小規模な通信会社などでは技術力の不足などから、オープン化が難しい側面もあるとの意見もあるが、安部田氏は「インテグレーションでは協力できる。我々が検証済みのものも利用することで、導入のハードルを下げられる」とした。

世界的な流れは

 世界でのオープンRANの動きはどうだろうか。安部田氏によれば、テレコムインフラプロジェクトやGSMAなど、各国で複数の団体がオープンRANを推進している。

 ドコモが設立メンバーとして参加する「O-RAN Alliance」は、その中でももっとも注目を集めていると安部田氏。

 O-RAN Allianceは2018年2月に設立。世界の有力な通信会社などが多数参加しており、装置間のインターフェイスのオープン化に加えて、装置内のインターフェイスのオープン化も重視している。

 装置内のソフトウェアとハードウェアを切り離すことで、ハードウェアを汎用的なものに置き換え、ソフトウェアベンダーもオペレーター側が自由に選べるようになる。

 加えて「インテリジェント化」を進めることで、多様化する5G時代のサービスを展開する複雑なネットワークの自動化を進めることも重要という。設定や接続などを自動化する「RAN Intelligent Controller」(RIC)の実現などについても合わせて進めている。

 O-RAN Alianceは当初、ドコモや米AT&T、仏オレンジなどが設立メンバーとして参加。2022年2月時点では300をこえる企業や大学などが参加するまでに規模を広げている。オープンRANの普及にあたっては、独自で動くのではなく、テレコムインフラプロジェクトなどと協同でイベントを実施するなど、協力して動いている面もあるという。