【MWC Barcelona 2022】

富士通やドコモが語るO-RANの今、横須賀に開設したラボもアピール

富士通は、MWCでO-RANをテーマにしたイベントを開催。ドコモや米キャリアDish、NVIDIAらと、O-RANの可能性を語った。写真は同社のシステムプラットフォームビジネス部門副部門長、水野晋吾氏

 MWC Barcelona 2022に合わせ、2月24日にO-RAN(Open RAN)に準拠した低消費電力の5G SA対応仮想化基地局を発表した富士通。2月18日には、KDDIが同社のRU(Radio Unit)とサムスンのDU(Distribution Unit)/CU(Centralized Unit)を組み合わせたデータ通信の実験に成功するなど、O-RANに商機を見出し、積極的に取り組んでいる。

 そんな富士通が、MWCでパートナーイベントを主催。同社のシステムプラットフォームビジネス部門副部門長、水野晋吾氏が「すべてのネットワークはオープンになると言われているが、モバイルも例外ではない。無線ネットワークがオープンになるメリットを確認したい」と語り、ゲストとしてドコモのCTOを務める谷直樹氏や無線アクセス開発部部長の安部田貞行氏らを招いた。

ドコモの谷CTOは、ビデオ会議で日本から参加

 ドコモの谷氏は、ドコモが以前から無線ネットワークのオープン化に取り組んできたことを紹介した。谷氏は、「5Gのサービスを開始して2年経ち、加入者はドコモ全体の10%にあたる、1000万になった」と現状を紹介。パートナーとのコラボレーション事例が増えていることに言及して、その理由の1つとして「ドコモがO-RANを採用したことがある」と語った。

ドコモの5Gに関する現状を解説。ユーザー数や運用周波数帯、基地局数に加え、パートナーの多さが強調された
O-RANで複数のベンダーを組み合わせられることのメリットを紹介

 実際、ドコモは4つのベンダー、15タイプの無線機を組み合わせて使用しており、O-RANは導入済み。18年には、AT&T、チャイナモバイル、ドイツテレコム、Orangeと、O-RAN Allianceを立ち上げ、仕様の統一を図っている。谷氏によると、「4G時代からマルチベンダー環境を構築し、マルチベンダー接続のノウハウはO-RAN Allianceを通じてフィードバックしている」という。

18年に設立したO-RAN Allianceはメンバーが順調に拡大。ドコモのノウハウは、このアライアンスを通じてフィードバックしているという

 O-RAN Allianceは設立後、急速に拡大しており、キャリアは19年に19社だったのが、22年には31社まで増加。コントリビューターは55社から293社に増え、合計で300を超える企業が参画している。谷氏は、「次のステップがvRAN(Virtual RAN)」だと語る。仮想化のメリットは、コスト削減やAIによる自動化、インフラシェアリングにあるという。

次のステップが仮想化だという谷氏は、その利点を解説した

 ドコモは21年に、海外キャリアがO-RANを導入する際に最適な組み合わせをパッケージ化して提供することを目指す「5GオープンRANエコシステム」を立ち上げ、22年のMWCに合わせ、遠隔でドコモのR&Dセンター内に構築した仮想化基地局の環境にアクセスし、検証を行える「シェアードオープンラボ」を開設した。谷氏は、このラボを紹介。海外キャリアに向け、「リモートでアクセスできる」とアピールした。

横須賀のR&Dセンターに開設したシェアードオープンラボ。ドコモが構築したvRAN環境に、海外からアクセスして検証できるのが特徴だ

 谷氏の講演後に開催されたパネルディスカッションでは、米キャリアで同じくO-RANを採用しているDishのCNO(Chief Network Officer)、マーク・ルーアン氏が、「O-RANは難しいと思われがちだが、実際にはずっと簡単なものだ。かつてノキアに勤めていたときよりも、今の仕事の方が簡単になっている。あまりに複雑なレガシーや期限切れのソフトウェアを抱え込む必要がないからだ」と語った。

O-RANは思われているより簡単だと語るDishのルーアンCNO

 これに対し、ドコモの安部田氏は、「マークはインターオペラビリティが簡単になっているというが、正直にいうと最初は難しかった。簡単なのは(O-RANが始まって)時間が経っているから。(O-RAN Alliance設立後の)19年に戻ると、ベンダーによって仕様を間違えていたり、解釈に相違があったりして、それを富士通たちと修正してきた」と打ち明けた。

ドコモの安部田氏は、日本からビデオ会議でパネルディスカッションに参加。O-RANをスタートした際の苦労を語った

 こうした努力もあり、「今は新しい装置を追加しようとした際には、非常に短い時間しかかからず、性能も安定している」という。ドコモがシェアードオープンラボを開設したのは、ここに海外キャリアのニーズがあるとにらんだからだ。安部田氏は、海外のキャリアが「互換性のテストをするために、自前のラボを持つ必要がなくなり、もっとフレキシブルにベンダーのセレクトができるようになる」とその狙いを語った。