【Mobile World Congress 2018】

ドコモ吉澤社長、5Gではパートナーとの「協創」を強化

MWCのオープニングキーノートに登壇した、ドコモの吉澤社長

 Mobile World Congress 2018は、世界各国のキャリアやメーカー、サービスプロバイダーが一堂に会する場だ。Congress(会議)と名付けられたイベントなだけに、基調講演の充実ぶりは同イベントの特徴の1つで、モバイルに関連した各国のキーパーソンが登壇する。

 会期初日にあたる2月26日(現地時間)の午前9時に開催された最初の基調講演には、英Vodafoneや中国移動のCEOらとともにNTTドコモの代表取締役社長、吉澤和弘氏が登壇。5G時代に向けた、同社の取り組みを紹介した。

 吉澤氏は、ドコモの中期戦略を開設。1999年のiモード開始以来、そのビジネスモデルを徐々に広げてきたとしながら、中期経営戦略として「beyond宣言」を打ち出していることを語った。beyond宣言は、コンシューマー向けとビジネスパートナー向けに分かれるが、MWCの基調講演では後者にハイライトが当てられた格好だ。

通信からプラットフォーム、サービスへと徐々にビジネスモデルを変えてきたドコモ。5Gではパートナーとの「協創」を強化する
中期経営戦略としてbeyond宣言を打ち出していることを解説

 吉澤氏はまず、「何年も前に4Gを導入したとき、高速通信の必要性を疑問視する人もいたが、実際にはSNSの普及が非常に速く進み、今では多くの人の生活に不可欠なものとなっている」としながら、LTE時代はネットワークが先行していたことを語る。「最初にネットワークが展開され、サービスは後から出てきた」というわけだ。

 これに対し、5Gは「最初からサービスが使えるような世界を作りたい」という。ユースケースまで見すえたうえで、「ネットワークとサービスが同時に開始されなければならない」。そのために必要なのが、ドコモの掲げる「協創」という考え方だ。

2月に始まったドコモ5Gオープンパートナープログラムを紹介

 この理念を具体的な形にしたのが、2月から開始されている「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」。吉澤氏によると、すでに600社以上の企業が参加を表明しており、15社とは「コラボレーションを開始し、トライアルサービスで実際のサービスを作ろうとしている」という。

 基調講演では、建設機械を5Gのネットワークに対応させ、遠隔で制御するコマツとの取り組みを紹介。合わせて大学病院と診療所を5Gで結ぶ、和歌山県や和歌山県立医科大学との実証実験も披露された。また、吉澤氏は車と車、車と人、車と道路上の設備が通信する「セルラーV2X」の実験についても言及。「車両の通信能力を最大限高め、自動運転の高度化を図る」と語った。

建設機械を遠隔操作するコマツとの実験を紹介
和歌山県、和歌山県立医科大学との5Gを使った遠隔医療の実験も披露
日産やクアルコムらとともに、セルラーV2Xにも取り組んでいる

 ドコモにはIoTやAIエージェント、dポイントなどのロイヤリティプログラムがあり、パートナーへの提供にも積極的だ。これについて吉澤氏は「パートナーにこうしたプラットフォームへのアクセスを許容し、アセット(資産)をつなげることで生産性を高めていきたい」とした。

 基調講演の最後で吉澤氏は、LTEの立ち上げ時から徐々にビジネスモデルが拡大してきた図を示しながら、「私たちはこれまで事業構造を変え、成長してきた」と語る。5Gの導入では、その変化を加速させていく方針。「私たちがパートナーと組む協創を組みわせて、より豊かな社会を作っていきたい」と基調講演を締めくくった。2020年の5G導入を控える中、世界のキャリアに対し、より具体的なユースケースを示した基調講演だったと言えそうだ。

ドコモの持つ資産を、パートナーに対しオープンにしていく
5Gではパートナーとの取り組みを通じて、ビジネスモデルを拡大していく必要性を説いた