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O-RAN活用でローカル5Gを国外にも展開、ドコモが取り組む日系企業の「チャイナリスク」回避

 NTTドコモは、MWC2021 docomo Special Showcase in Tokyoにおいて、ローカル5Gのグローバル展開やVRソリューションについて公開した。

O-RAN活用でローカル5Gソリューションもグローバル展開

 ローカル5Gは、特定のエリアだけで用いられるクローズドな5Gネットワーク。キャリアのモバイルネットワークの影響を受けず、必要な機能だけで構築できる柔軟性といったメリットがある。

 キャリアのモバイルネットワークからは独立しているため、外部と切り離して運用でき、工場などで取り扱う機密情報も安全にやり取りできる。

 このローカル5Gでもオープン化(O-RAN)を図る。5Gで利用される周波数は各国ごとに異なるため、日本向けの無線装置をそのまま海外で利用することは難しい。しかしそのために装置を新規設計するとしてもコスト面などで課題が立ちはだかる。

 そこで、O-RAN対応の日本製のネットワーク装置を用いて世界各国のメーカーの子局(RU:Radio Unit)と利用することで「国ごとの周波数差異を吸収する」という。これにより、設置場所やニーズに応じて振興の無線装置ベンダーやドコモ保有のフレキシブルアンテナやメタサーフェスレンズといった資産を組み合わせ、最適なネットワーク環境を実現する。

 想定するターゲットは、主にベトナムやタイなどに工場を持つ日系企業。日本製機器を提供することで、いわゆるチャイナリスクなどを避けたい事業者に向けたソリューションという。一方、タイなどローカル5G専用の周波数帯を設けていない国もあり、そうした場合は現地MNOとの協力を強化して対処していくという。

 これを推進するため、機器ベンダーや工事事業者など13社で構成されるコンソーシアム「5GEC」(ファイブジェック)を設立。ソリューション含めてワンストップでデジタルトランスフォーメーション推進に向けたサービスを提供すべく現在準備中という。

 まだまだ黎明期といえるローカル5G市場。導入コストのハードルは高く、ドコモとしてもそれは認識しているとしつつ「立ち止まっていると、(他社・他国企業に)遅れを取ってしまう」とした上で、コストはかかっても今のうちから早期参入するという同社のこの分野に対する意気込みが説明された。

国境を超えて作業支援も

 ドコモでは、docomo Open Innovation Cloud内にウェアラブル端末「AceReal」のアプリケーション環境を構築している。docomo Open Innovation CloudとタイAISの5Gネットワークを専用ネットワークで接続する「クロスボーダー基盤」により、国外でもセキュリティを担保したまま、AceRealを利用できるようになる。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、国外の工場など拠点に出張に行けないという製造業関係者が多いなか、このソリューションを活用することで日本にいながら、現地のタイ人へ作業支援を実現できる。

 現状ではクロスボーダー基盤に対応するのは、AceRealのみだが、今後もアプリケーションは順次拡大される予定。加えて、接続する国も現状のタイに加えて日系企業の工場が多くあるベトナムやインドネシアなどにも拡大していくという。

 報道陣向けに公開されたデモでは、実際にタイと東京の会場をつないで作業指示が行われた。

画面に赤枠を書き込んで指示を出す様子
こちらはタイから日本で作業支援を受ける様子

階層に分かれたAR空間「ABAL」

 「ABAL」は、複数人が同時接続できる「多階層VR空間」。VRヘッドセットを装着してVR空間内にある特定の場所に移動すると、エレベーターで移動して別の空間へ行く、というような体験ができる。

 このほかにも2Dビデオを表示してVR空間内で説明などが行える機能もあわせもつ。

 3m×3mの四方でも東京ドーム並の空間を再現可能。3月には東京駅に隣接する「JAPAN RAIL CAFE」においてABALを用いた次世代物産展の実証実験「Hybrid Retail Platform」を実施した。

 階層ごとにまったく違うVR空間を再現可能で、任意の製品をCGとして取り込み、VR空間内でショッピングもできる。空間に浮かび上がる購入ボタンなどの選択肢に視線を合わせることで操作できる。

 ビデオチャットへの参加者は5G含むモバイルネットワークなどからスマートフォンを介して参加する一方、VRヘッドセット装着者はWi-Fi経由で参加するという仕組み。5Gの利点である高速・大容量通信により、VR空間内のコンテンツをモバイル端末へ安定して伝送できるという。