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O-RAN仕様の認証拠点「Japan OTIC」、横須賀YRPに開設

 YRP 研究開発推進協会とNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは、O-RAN ALLIANCEの仕様に基づく、試験認証を行う拠点「Japan OTIC」(ジャパン オーティック)を横須賀リサーチパークに開設した。複数の通信事業者が共同で同種の拠点を設立するのは世界初という。

Japan OTIC 理事 渡辺克也氏

O-RANの加速に向けて

 Japan OTICは、2018年にドコモなどが設立したO-RAN ALLIANCEの企画に準拠した各種機器の試験を行える拠点。ヨーロッパやアメリカ、アジアで同様の拠点が設立されているが、複数の事業者が共同で運営するのは世界初。YRP 研究開発推進協会とドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの各社でオープン化の促進を目指す。

Japan ORTICがおかれる横須賀リサーチパーク 1番館

 拠点内では、O-RAN仕様にそった中立的でオープンな相互接続性の検証環境を提供し、基地局などの基地を試験。O-RANに適合することの認証ができる。

 基地局の機器はメーカー独自の仕様となっており、単一のメーカーから機器を納入することが一般的。多数のメーカー同士の機器の接続を可能にするO-RANの仕組みでは、基地局にさまざまなメーカーの機器を設置でき、コスト削減などの効果が期待できるとされる。

ドコモと楽天モバイルの設備が公開

 Japan OTICの設備として、NTTドコモと楽天モバイルのそれぞれの検証に利用する部屋が公開された。基地局の親局や子局、解析装置などが一式揃えられており、機器のベンダーがO-RANの認証を取得したい場合、ここへ機器を持ち込んで、O-RANの仕様で正しく動作するのかといったことを検証することになるという。

 基地局設備のほか、スマートフォンなどの端末の大規模な接続を再現する機器も導入されており、より実際に近い環境での検証が可能。大手ベンダーの場合、自社で検証する設備を持つこともあるが、中小規模のベンダーにとっては大きな負担となる。そこでJapan OTICの設備を活用することで、迅速に製品の検証を可能にし、中小ベンダーの業界参入の障壁を取り払うことも期待できる。

右から5G親局、4G親局などが並ぶ。検証環境で端末とコアネットワークはシミュレーターで再現する。左端に見えるのはデータの解析装置
端末のシミュレーター
左=4Gの子局。右=5Gの子局。親局はNEC製で子局は富士通製だが問題なく動作するという
楽天モバイル側の設備。仮想化により汎用サーバーを用いることを特徴とする。
端末のシミュレーターなど
データの解析装置。移動できるためそのままドコモの部屋にも
子機(楽天モバイル)

 ドコモと楽天モバイルの設備で検証できることはいずれも同じ。一方で複数事業者横断での設立という強みを活かして、ドコモと楽天モバイルの両方のネットワークで検証したいというニーズにも応える。先行する海外の事例では、特定のキャリア一社のみが主導して設立しているケースのみで、複数社のネットワークで検証できるのは、Japan OTICならでは特長といえる。

 Japan OTICには、KDDIとソフトバンクも参画しているが、現時点で両社はまだ検証できず、設備の導入を検討している最中という。まずはオープンRANへの取り組みでリードしているドコモと楽天モバイルの両社からスタートしたかたちになる。

テープカットで開所

 開所式では、Japan OTIC 理事 渡辺克也氏が挨拶に登壇。世界でも類を見ない、複数の事業者が共同で設立したJapan OTICについて「Japan OTICは欧州、アジア、北米に続き世界で8番目。共同体制のOTICとしては世界で初めて」としたうえで、O-RAN仕様の普及や高度化などの促進を図ると語る。「まだ設立されたばかりで課題も多いかもしれないが、支援を受けながら成長させていきたい」とした。

Japan ORTIC 渡辺氏
総務大臣政務官 国光氏
衆議院議員 小泉氏
横須賀市長 上地氏

 また、総務大臣政務官の国光あやの氏が祝辞を述べた。国光氏はJapan OTICについて「この活動でよりオープンで確実な5Gが実現し、世界において5G社会の発展を牽引することを期待する」と語る。また「総務省としてもBeyond 5Gに向けた研究開発としてNICTに662億円の基金を創設することを決めている。Japan OTICの活動も両輪として充実していくことを期待している」とコメントした。

 このほか、衆議院議員の小泉進次郎氏、横須賀市長の上地克明氏も祝辞を述べた。同氏は世界で唯一の複数事業者によるOTICであることに触れて「(携帯電話4社を代表する)4人を開会式で見られるのは世界で唯一ここということで、仲良く横須賀でやってください」と語った。古くから電波や国防に関して特色のある横須賀の街について「これからDX人材を次々と排出できるようなそんな官民・教育機関との連携含めて発展してほしい」とした。

衆議院議員 古屋範子氏とO-RAN ALLIANCE 会長のアレックス氏からも祝電・メッセージが寄せられた

 開所式では、Japan OTIC 渡辺氏らによるテープカットが執り行われた。