【MWC Barcelona 2025 】
KDDI Digital Life秋山社長が語る、povoの方向性とは?
2025年3月5日 19:18
昨年のMWCで、オープン化や外部パートナーへのSDK開放を発表したKDDI Digital Lifeのpovo。その成果として、DMMやAbemaなどの企業が、povoの通信をサービス側に取り込んでいる。KDDIが傘下に収めたローソンとの取り組みでも、SDKが活用されている。MWC Barcelona 2025では、新たな取り組みとして海外のパートナーとの連携を発表。Facebook、Instagramでおなじみのメタ(Meta)や、TikTokを運営するByteDanceがパートナーの名前に挙がった。
これらのパートナーとどのようなサービスを実現していくのか。また、povoはどこに向かっていくのか。KDDI Digital Lifeの代表取締役社長を務める秋山敏郎氏がグループインタビューで、同サービスの方向性を語った。
――この1年で、どんな進展がありましたか。
秋山氏
昨年のMWCで「グローバルでやります」と宣言し、いろいろな営業と並行しながら、世界に持っていける成功モデルを国内パートナーと一緒に作ることにフォーカスしていきました。日本での進展としては、AbemaやDMMがあります。これから、TikTokにエンベッドするモデルを近日中にリリースします。
AbemaやDMMと始めてみて、直さなければいけないところは見えているので、PDCAループをめちゃくちゃ早く回してそこを直しています。どういうところでユーザーがドロップするのかを改善し、パフォーマンスが上がるようにしています。そこと並行して、TikTokでのサービスが始まるというのが現状ですね。
パートナー側には、本業貢献という言い方をしています。実際、5倍から6倍ぐらい、アプリの利用が増えている。何分滞在しているかまでは取れないので、データトラフィックで見ていますが、これが6倍ぐらいまで増えています。小さなサクセスケースが見えたら、そこに注力するのがpovoのやり方で、パートナーシップについても6倍になったからそこに注力するという形でやっています。
――それは、イコール満足度が上がっているという理解でしょうか。
秋山氏
そのはずです。この手のオンラインサービスプロバイダーの方々が自由に使えるコネクティビティがあったら何をしたいのかというのが我々の考え方です。5G SAが広がれば、優先的につなげてほしいということも出てくると思います。滞在時間は取れていませんが、KPIでこういう結果が出たのはポジティブにとらえています。
――サービス側の解約率が落ちる、というようなことはありますか。
秋山氏
そこまではまだ見ることができていません。ただ、スケールしていけば、解約率にも効いてくるはずです。
――メタとも提携するようですが。
秋山氏
メタとの取り組みも、近日中に始めます。メタの場合は、トラベラー向けですね。インバウンドで日本に来られる方に向けて、我々のオファーを出すイメージで、それがFacebookとInstagramの双方で使えるようになります。
――メタは、日本法人との提携なのでしょうか。
秋山氏
窓口は日本にありますが、ディシジョンメーキングはグローバルです。ByteDanceもそうで、日本ローカルというよりグローバルな取り組みの一環です。この辺は、次のステップになります。伸ばす仕組みは知見もたまってきたので、その関係性を元にパートナーと培ったものがグローバルで通用するようにしていきます。
それができれば、同じパートナーでも違うマーケットに行きたいということが起こってくるのではないでしょうか。国内の事例を出したときには、いくつか他のプレイヤーからお声がけをいただいています。メタやByteDanceの話が出れば、「それってうちでもできるの?」となる。そういった実例を作ることに、この1年間を使ってきました。
――例えば、メタの場合、海外キャリアもこの仕組みを使いたいということもありそうですよね。「ほかのプレイヤー」というのはキャリアでしょうか。
秋山氏
キャリア系です。これと同じか、それ以上に受けているのがローソンとの取り組みです。国内では「povo Data Oasis」を始めましたが、これを完コピして自分の国でもやりたいというキャリアのCEOがいたぐらいです。
――それを海外キャリアがやった場合、KDDI Digital Lifeのビジネスになるのでしょうか。
秋山氏
ちょっとはお金を落としてほしいですね(笑)。もちろん知見を落とし込んでいきながらなので、すぐにお金にならないケースはありますが、もう1回通信で日本がリードするのはいいいことだと思っているので、そこまで細かい話はしないようにしています。
――収益にならないと、やり損になってしまう可能性もありますが、どのようなビジネスモデルにしていくおつもりでしょうか。
秋山氏
2つあると思っています。1つは、共同でやっているCircles.Lifeと我々の間での話で、同じようなプラットフォームを使うところが増えてきた際に、(Circles.Lifeに対して)営業貢献しているので、そのフィーをいただく。これが1つ目のパターンです。
もう1つあるのは、デジタルテレコ(povoのようなオンライン特化型キャリア)にはいろいろあって、必要なのはプラットフォームだけではないということです。レガシーなシステムを持っているキャリアがデジタルテレコをやろうと思っても、すぐには成功しません。考え方はもちろん、ディシジョンメーキングの仕方やデータの見方がまったく違うからです。
どちらかと言えば、ハイパースケーラーに近いKPIの見方や、マーケットへの出し方をしています。我々も最初はバタバタしていましたが、ようやくこうやればできる、スピードが出せるということが分かってきました。キャリアによっては人をバンと雇ってやってしまえばいいとなるかもしれませんが、テレコムサービスとして譲ってはいけない信頼性のようなこともあります。
そういうプレイブックのようなことは、実際にやらなければ身につきません。作った車をどのように運転するか、プレイブックのような部分に関しては一日の長があります(筆者注:それをコンサル的にビジネス化していくことを意味している)。
――ローソンとの取り組みは、どういう部分が受けていたのでしょうか。
秋山氏
海外でも店舗でSIMを売っていることがありますが、ディストリビューションコストが高い。お店でトップアップするだけでも、お金が取られます。ですから、リテールを単なる販路にするのではなく、両者(販売店とキャリア)にメリットのある形にすることが重要です。我々も、ローソンへのメリットは打ち出していくつもりです。それができれば、ディストリビューターへ支払っているコミッションをセーブできますし、お店側も集客につなげられる。そういったところに、関心を持っていただけています。
――ローソンでは「ギガチャージ」も始めました。サブ回線狙いなのか、そこからメイン回線化を狙っているのかを教えてください。
秋山氏
究極的にはメインになりたい。なり方はいろいろですが、サブとしても使っていただけるよう、基本料は0円にしています。2回線目というふうにすると、データがちゃんと取れる。どこのコンバージョンが悪いのか、頻繁にアプリに来ていただけているかが可視化できます。お試しから入っていただくことで、それがきっちり可視化され、エンゲージメントが取れるのは、道筋として間違っていないと思っています。
それをメインにしてもらうときに、本当にずっとpovoでいいのかという話はいろいろな議論があると思います。2回線目として使っていただきながら、KDDIのプロダクトをどう使っていただくか。最終的には、auやUQ mobileにスムーズに行けるようなこともしなければいけないのかもしれません。
――ローソンでギガをもらおうとすると、結構な頻度でログインが必要になりますが、これはあえてやっているのでしょうか。
秋山氏
人や環境によるようですが、そこはわざとではありません。ローソンは大事なパートナーです。
正直、始めたときには、その大事なパートナーのところでpovoを宣伝するのは「あまり上品ではないな」と思っていました。普通の広告に見えてしまうからです。むしろ自我を消し、ローソンのためのコネクティビティというようにきっちり見せていくべきだと思っていました。povoアプリとは別のSDKベースでやっているのはそのためです。ただ、(ログインが面倒という)ご批判があるのは分かっています。
――自我を消すという意味だと、サービスによって温度差があるように見えます。Abemaはpovoの名前が前面に出ていましたが、逆にDMMはDMMがモバイルサービスを始めたかのように見えました。後者の方が理想ということでしょうか。
秋山氏
はい。そちらが理想だと思っています。ただ、パートナーによってはそれだと何のことから分からないので、むしろpovoと言ってほしいということもあります。2回線目から入る前提なので、キャリアフリーのコネクティビティにしたい。こういうストラテジーの中で、名前を出していくのは避けたいと考えています。









