本日の一品
見やすいし買いやすい「やさしい時計」を手に入れた
2026年2月10日 00:00
現代において、スマートフォンの所有率は、旧来の携帯電話(ガラケー)を含めればほぼ100%に達していると言って良いだろう。時刻を知るためのデバイスは、常に我々のポケットやカバンの中にあり、駅のホームや街中のビルを見上げれば、いたる所に正確な時計があふれている。論理的に考えれば、現代人があえて腕時計を身につける理由は、もはや存在しないはずだ。
しかし、市場には今なお多種多様な腕時計が存在している。それはファッションとしての自己表現であり、資産価値としての投資であり、あるいは趣味のコレクションでもあるだろう。だが、実用面における最大の存在理由は「ポケットから端末を取り出さずとも、手首を返すだけで現在時刻が分かる」という、わずか1秒のアクセス性の差にある。これこそが、多機能すぎるスマートウォッチが普及した現代においても、シンプルな腕時計が一定の支持を集め続ける理由だ。
特に最近では、キッズウォッチの枠を超え、あえて機能を削ぎ落とした「シンプル」な時計が、目の肥えた大人たちの間でも注目されている。今回は、複雑な多機能時計も愛する筆者が、その潔い設計と思想に惚れ込み、思わず手に入れてしまったサン・フレイム社の「やさしい時計」をご紹介したい。
今回筆者が購入したのは、腕時計メーカーであるサン・フレイムが「お客様の『声』をかたちにしました!」と銘打って展開している「やさしい時計」である。ラインアップにはブラックとブルー(ネイビー)の2色が存在するが、今回はそのガジェットらしい佇まいに惹かれ、ブルーモデルを選択した。
標準で装着されているのはナイロン製ストラップだ。ベルクロ式で、腕の太さに対する調整幅が広く、衣服の上からでも無理なく固定できる。筆者はこれまでにもナイロンストラップ仕様の腕時計を複数所有してきたが、装着の簡易さという点ではやはり群を抜いている。
このストラップは、腕の太さを選ばないだけでなく、冬場に厚手の衣服の上から固定するといった使い方もフレキシブルに対応できる。筆者のような腕時計好きにとって、この「迷わず巻ける」という感覚は、日常使いにおいて極めて重要な要素である。
「やさしい時計」が定義する「やさしさ」とは、何よりも「視認性」と「操作性」の簡潔さに集約されている。通常、アナログ時計における「おしゃれさ」を追求すると、時刻マーカーをバー(棒)のみにしたり、針を細くしたりと、視認性を犠牲にする傾向がある。しかし、本気で「やさしさ」を追求するならば、装飾的な要素は一切不要だ。文字は大きく太く鮮明で、針と文字盤のコントラストが明確であること。これが鉄則だ。
今回筆者が選んだデジタルモデルにおいても、その思想は徹底されている。まず、時刻を表示するデジタルフォントが、一般的な液晶時計よりも圧倒的に太く、大きい。そして最大の特徴は、曜日表示などが「日月火水木金土」という日本語表記である点だ。
多くのデジタル時計が「MON」「TUE」といった英語表記を採用する中、日本語での曜日表示は、我々の脳にとって「脳内翻訳」の手間を省いてくれる。これこそが、ミドルからシニア層にかけて、あるいは疲弊した現代人の脳にとっての「真のやさしさ」ではないだろうか。
また、操作性においてもシンプル設計が光る。ボタンの数は少なければ良いというものではない。ボタンが少なすぎると、ひとつのボタンに複数の機能を割り当てる必要が生じ、「長押し」や「2度押し」といった複雑な操作をユーザーに強いることになるからだ。
この時計には、大きく色分けされた3つの大きなボタンが配置されている。取扱説明書を読み込まずとも、「黄色を押せば光る」「青で選び、赤で決める」という直感的な操作が可能だ。ボタンサイズも指先に馴染むよう大きく設計されており、操作ミスを極小化する工夫がなされている。そして取説の中でボタンを指定する時にもボタンAとかボタンBとかでは無く、色指定で明確に記述できユーザーの認知性は確実に向上する。
夜間、黄色い「光る」ボタンを押せば、バックライトが点灯して暗闇での視認性はさらに向上する。この押しやすい「一発で確実に光る」という安心感は、アウトドアや就寝時など、特定のシチュエーションで絶大な信頼感を生む。そして、これだけの機能を備えながら、重量は驚異の35gである。
手首への負担はほぼゼロに近い。重厚な機械式時計を「着ける喜び」とは別に、この「何も着けていないかのような自由さ」は、一度味わうと病みつきになる快適さだ。
筆者は、あえて視認性を極限まで削ぎ落とした、Bell & Rossの「ステルス」のような重厚な変態腕時計も大好きだ。それはそれでひとつの様式美であり、所有欲を満たしてくれる素晴らしいプロダクトだ。しかし、今回手に入れた「やさしい時計」は、その対極に位置する愛らしい存在である。
この数カ月、実際にこの時計を常用してみたが、季節を問わずその使い心地は超快適の一言に尽きる。1920円という価格は、高級時計のオーバーホール代の数十分の一に過ぎないが、得られる満足感は決して小さくない。「スマホがあるから時計はいらない」という時代に、あえて選ぶこの超シンプルでやさしい選択が楽しい。
それは、ユーザーの目に優しく、手首に優しく、そして何より財布にも優しい。機能過多なガジェットに囲まれて疲れた我々大人たちにこそ、この「やさしさ」を体験してほしいと思うしだいだ。
| 製品名 | 発売元 | 価格 |
|---|---|---|
| やさしい時計(ブルー) | サン・フレイム | 1920円 |














