【MWC Barcelona 2024】
スマホと「Starlink」の直接通信への期待は? KDDI、SpaceX、T-Mobileのキーパーソンが語る
2024年2月27日 11:35
KDDIは、26日(現地時間)にMWC Barcelona 2024でSpaceX、米T-Mobileとともに、Starlink(スターリンク)の展開を解説するイベントを開催した。
KDDIは、24年内にStarlinkとスマホの直接通信サービスを提供する予定。T-Mobileも、KDDIと同様、24年にメッセージングサービスを開始するほか、25年に音声通話やデータ通信などにその範囲を広げていくことを表明している。
イベントでは、KDDIの取締役執行役員 松田浩路氏がStarlinkを活用したユースケースを紹介した。
松田氏は、最初に“3つの初”を実現したと語る。1つは、Starlinkを基地局のバックホールに使うというもの。KDDIはこの合意を21年9月に行っており、22年12月には静岡県熱海市の初島で最初のStarlink基地局を開局している。この取り組みは、世界で初になるという。
2つ目は日本初となる認定Starlinkインテグレーターになり、Starlink Businessを展開していること。現在はドコモやソフトバンクもリセラーとしてStarlinkを法人や自治体などの行政機関向けに販売しているが、その取り組みの先駆けとなったのがKDDIだ。
3つ目は、冒頭で挙げたStarlinkとスマホの直接通信への対応。この発表も、23年8月に行っている。
Starlinkは、1月1日に発生した能登半島地震で被害にあった基地局の復旧活動にも活躍しており、松田氏はその取り組みも紹介。不通になったファイバーの代わりにStarlinkをバックホールに使い、早期の応急復旧を実現。さらに、「SpaceXチームの協力のおかげで、350台のStarlinkを避難所に提供できた」と語る。
また、音楽フェスなどの人が集まるイベントにもStarlinkを活用し、決済端末の回線がスムーズに通信できるようになった事例も紹介した。
24年から提供が始まる衛星とスマホの直接通信は、「モバイルのデッドスポットを消し去るもの」(SpaceX VP Starlink Enterprise Sales ジェイソン・フリッチ氏)。
当初はSMSやメッセージングのみの展開だが、打ち上げた衛星の数が増えていくのに伴い「音声通話やデータ通信にも拡大していく」(同)。そのサービスを利用するパートナーが、KDDIやT-Mobileといったキャリアだ。
Starlinkを使った直接通信の強みとして、T-MobileのVP Business Develpment Partnershipsを務めるジェフ・ジアード氏は「既存のデバイスをそのまま使える」ことを挙げる。
KDDIも、直接通信を2GHz帯のLTEとして提供する予定で、「我々の端末はすべてBand 1(2GHz帯)をサポートしている」と語る。
ジアード氏は、「アプリや4Gが出てくるまではUberのようなサービスは想像できなかった。Starlinkでどこでもつながるようになったときに、どうなるのか」と、上位レイヤーのサービスに変化が起こる期待も語った。
Starlinkを積極的に活用し、ユースケースを広げているKDDIだが、この点にはT-Mobileも注目しているようだ。ジアード氏は、「KDDIから学べることは非常に多い」としながら、「たとえば、Starlinkを基地局のバックホールにすることや、災害時に活用するということは、米国でも応用できるのではないか」と語る。こうした事例を共有できるのは、「お互いにとってメリットになる」(同)という。
こうした活用が進んでいる理由として、松田氏は「C(コンシューマー)の人の気持ちを分かったうえで、B(ビジネス)の方にも提供している」ことを挙げる。
先に挙げた音楽フェスのケースでも、コンシューマー側は「通信が普通に来ると思っている」一方で、「いざ物販で使えず、物が売れないとなると困るのである程度帯域の保証はしたい」(同)。こうしたコンシューマーの気持ちを理解しつつ、法人向けにStarlinkを提供しているのが同社の強みだという。
組織的にも「コンシューマー部門と法人部門という分け方ではなく、ちゃんとミックスしたチームで検討させた」(同)という。
24年にStarlinkとスマホの直接通信が始まり、世界各国でこうした事例が積み上がっていけば、こうした事例が積み上がっていくことが期待できる。
SpaceXのフリッチ氏も、「私たちも常に顧客やパートナーがStarlinkをどのように使っているかを学びたいと思っている。そのユースケースから学び、それをグローバルに提供していくようにしたい」と語った。