三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

1型センサースマホの「シャープ AQUOS R9 pro」と「Xiaomi 14 Ultra」でブラブラ撮ってみたら

 「AQUOS R9 pro」と「Xiaomi 14 Ultra」は以前この連載で取り上げたように、大きな1型センサーを搭載し、写真の仕上がりについてライカが監修している端末だ。高級コンパクトデジタルカメラ並みのリッチな描写がウリだが、スマートフォンフォトグラフィーに関心のある読者なら、どちらがいいか気になるところだろう。そこで今回はこの2台を持ってブラブラと撮影を楽しんでみた。各端末の特徴や詳しいスペックなどは、本誌別記事を参照いただけると幸いだ。

搭載カメラ比較

 まずは両機ともに搭載されているカメラを比べてみよう。

 「AQUOS R9 pro」はトリプルカメラだ。前モデルは1カメラでクロップ処理する形だったが、今モデルで改められた。

  • 標準カメラ:約5030万画素 大型1/0.98インチセンサー F値1.8、23mm相当、OIS
  • 広角カメラ:約5030万画素 1/2.5インチセンサー F値2.2、13mm相当
  • 望遠カメラ:約5030万画素 1/1.56インチセンサー F値2.6、65mm相当、OIS

 一方、「Xiaomi 14 Ultra」は2つの望遠カメラを装備し、合計4カメとなっている。

  • メインカメラ:35mm判換算約23mm F1.63 ソニー製1型「LYT-900」センサー 「LEICA VARIO-SUMMILUX光学レンズ」採用 無段階可変絞りシステム(F値1.63~4.0)
  • 望遠カメラ:35mm判換算約75mm F1.8 フローティング望遠レンズ
  • 望遠カメラ:35mm判換算約120mm F2.5 ペリスコープレンズ
  • 超広角カメラ:35mm判換算約12mm F1.8

1型センサー搭載のメインカメラ比較

 一番注目するべきなのはやはり1型という大きなセンサーをおごった標準カメラ(メインカメラ)だろう。極小サイズのセンサーと違い、画素ピッチが広く、光を存分に取り入れられるため描写が一般的にいい。低ノイズ、ボケ味など、写真表現的にアドバンテージが生まれる。しかしただそのサイズのため、端末にいかに配置するかが問題になる。また消費電力量も課題だ。これらは画質とのトレードオフの関係となる。

 それぞれの端末の撮影画面と各画角による写りはこのような感じだ。

「AQUOS R9 pro」
AQUOS R9 proの0.6倍 広角カメラのゴーストが気になるが、それ以外はまずまずの写り
等倍
AQUOS R9 pro、3倍
「Xiaomi 14 Ultra」
Xiaomi 14 Ultraの0.5倍 ウリである望遠カメラの画質がいい印象だ
Xiaomi 14 Ultraの等倍
Xiaomi 14 Ultraの2倍
Xiaomi 14 Ultraの3.2倍

 「Xiaomi 14 Ultra」は可変式の絞り搭載を搭載しているところが特徴だ。メインカメラにおいて無段階に絞りを変えることが可能(F値1.63~4.0)。

後ボケの量と描写の違いに注目したい。

 さらにデジタルズームも驚異的で、120倍までのズーミングができる。

最大までズームインすると塗り絵的な写りだが、ここまでアップで撮れるのがスゴい

操作系の特徴は?

 「AQUOS R9 pro」は物理的シャッターキーを搭載している。その操作感はコンパクトデジタルカメラのようである。長押しによるカメラ起動機能もいい。そのほかにもオプション品としてアクセサリー「AQUOS R9 proハイブリッドケース」も用意。アタッチメントを用いて62mm径の円形フィルターを装着可能である。

 「Xiaomi 14 Ultra」は撮影体験を向上させてくれる「Photography Kit」を用意している。ケース、シャッターボタン搭載バッテリー内蔵グリップ、フィルターリングの構成で、グリップから本体充電、ダイヤルでの露出補正、レバーで焦点距離変更が可能と、使っている気分はコンパクトデジタルカメラに近い。

「AQUOS R9 pro」と「Xiaomi 14 Ultra」でブラブラ実写スナップ

 この2台の端末をポケットに突っ込み、いろいろなところを撮り歩いてみた。やはり多用したのは大型1インチセンサー搭載のメインカメラだ。リッチかつ表現力が高い写りは魅力的である。もちろん他のカメラも優れた描写で、特に望遠カメラの良さには驚いたほど。

比較カット

 比較カットを用意した。両機による写りの違いを確認してみてほしい。どちらも甲乙つけがたい良好な描写で、好みによってどちらを選ぶか、になりそうだ。

AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra
AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra
AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra
AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra
AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra
AQUOS R9 pro
Xiaomi 14 Ultra

「AQUOS R9 pro」

古い洋館を撮った。タイル張りのアーチエントランスと、年季の入った窓枠、壁のリアルな描写が素晴らしい
天井から吊られたシャンデリア。実際よりやや明るめの露出になったが、細かい部分までしっかりと写しとられている
望遠カメラの写りもまずまずである。遠近感を圧縮した絵作りも楽しめる。1インチセンサーだけでなく他のカメラも優秀な印象だ
横浜港でのカット。あいにくの曇り空だったのが残念である。広角カメラも伸びやかな描写を見せてくれる。周辺部がやや流れ気味だがこんなものであろう
夜の街で飲み屋街の壁を撮った。ザラザラとしたその質感を「AQUOS R9 pro」は見事に描いてくれた。ハイライト部からシャドウ部までトーンの連続感がいい
薄暗い裏通りも明るく確実にキャプチャーできるのがいい。大きなセンサーならではの描写だ。ところでこのマーク、今の若い人には意味がわかるのだろうか?
当然夜間撮影も優れた画質である。物理的なシャッターキーではなく、スクリーン上のシャッターボタンを使った方がこのようなシチュエーションでは微ブレが防げる。点光源部周辺のフレアの発生が残念だ

「Xiaomi 14 Ultra」

洋館の壁面、斜めに差し込む光の感じが気に入った。色合い、コントラストともに良好でコンパクトデジタルカメラ顔負けの精細感だ
外光が入る和室で。畳の目の細かい写り、鏡台の木材感、壁の微妙な凹凸まで「Xiaomi 14 Ultra」はリアルに写しとった
「Xiaomi 14 Ultra」は望遠カメラもいい。手軽に遠方の風景をグッとたぐり寄せられるのが楽しい。ただ「Photography Kit」があった方がより撮影体験が向上するはずだ
超広角カメラもなかなかの写り。渋谷駅前の建物も直線が気持ちよく写っている。ヌケ感もまずまず
大きなセンサーはボケを活かした撮影が楽しめる。電柱が背景から浮かび上がっている。可変式絞りも搭載されているが実際の撮影シーンでは使う機会はあまりなかった
薄曇りの日だったがけっこう色のりがいいカットになった。モニュメントを構成するさまざまな素材のテクスチャー感がリアル。この端末はやはり「Photography Kit」があると使いやすいなあ、と以前の連載で取り上げた時の使用感を思い出した
1型で大きいセンサーと明るいレンズはナイトシーンに強い。クリーンで低ノイズの写真をパッと撮影できる。ホワイトバランスと発色も、現場の雰囲気をうまく再現している

「AQUOS R9 pro」と「Xiaomi 14 Ultra」まとめ

 両機とも1型という大きなセンサーと、ライカ監修の描写がウリだが、どちらもいい端末、という感想だ。

 「AQUOS R9 pro」は物理的なシャッターキー、握りやすいシボ加工の外装がいい感じだ。一方、「Xiaomi 14 Ultra」はメインカメラ以外に望遠カメラがとても優秀だし、「まるでデジカメ?」と思わせる「Photography Kit」が用意されているのが魅力である。

 どちらをチョイスしても、1型センサー搭載カメラの高い画質を堪能できるのは間違いない。絵の好み、デザイン、ブランド、価格でどちらかを買うか、決めたほうがよいだろう。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau