スマートホームのミライ

【新連載】2020年がターニングポイント、今年こそ”スマートホーム元年”に!

 みなさん、はじめまして。スマートホーム商品を作るメーカーであり、世界中のIoT商品を販売するプラススタイル株式会社の近藤と申します。縁あって、こちらで日々思うことや、私の事業に関してなどを書かせていただくことになりました。いつまで続くかわかりませんが、お付き合いを宜しくお願いします。第1回は、スマートホームがなぜ流行しないのか、流行したらどんないいことがあるのか、流行するために何をしているのか、といったあたりに触れていきたいと思います。

10年たっても流行しないスマートホーム

 さて、「スマートホーム」と言われて、もう10年以上が経ちました。最初に(業界的に)騒がれ始めたのは、元Appleのエンジニアが立ち上げたサーモスタットの「Nest Labs」が出てきた2010年あたり(後にGoogleに買収)。日本では、2015年頃にスタートした「intelligent HOME」や、2017年にスタートした「au Home」あたりがハシリでしょうか。他にも電力系の会社など、数多くの企業がスマートホームを頑張っておられます。

グーグル傘下になった現在のNestファミリー
au Homeのラインアップ

 しかし現状を見てみると、Nestから10年、intelligent HOMEから5年が経過しているものの、日本ではあまり浸透していません。日本のスマートホーム系サービスのアプリダウンロード数を調べる限りでは、ユーザー数で10万人もいないと推計。肌感覚で言えば、「ちょっと話題になっている」となる一つの目安は、100万ダウンロードくらいから。ということで、日本ではまだ“流行していない”状況だと思います。

 ですが、毎年1月初旬に行われるIT業界最大の展示会「CES」では、Tech Westと呼ばれるエリアにあるSands Expoという展示会場(の2階)の半分ほどをスマートホーム企業が占めています(1階はスタートアップが約1000社!)。しかもこのエリア、毎年少しずつ大きくなっているのです。さらに米国某大手ECプラットホームでは、米国で2019年にスマートプラグ(コンセントの間にかませてスマホでON/OFFできる機器)が年間1000万個以上売れています(と聞いています)。これはもう”流行している”と言えると思います。ちなみに、ヨーロッパや中国でも近い数字が出ています。そう、日本以外の地域では、それなりに流行してきているのです。

パナソニックなど大手も出展していたスマートホームエリア

 一方、日本では、同じような商品が(たぶん)年間10万個くらい。諸外国とは圧倒的な差をつけられています。ちょっと古いですが、平成28年度版の情報通信白書に掲載されている「IoT導入状況(2015年)と今後の導入意向(2020年)」を見ると、2015年ではアメリカが40%超とずば抜けていますが、日本は20%前後で他国と同じような位置にいます。しかし2020年になると、他国は90~70%くらいの導入意向に対し、日本は40%と、圧倒的に差がつくことが想定されていました。そしてそれが現実のものとなり、日本は他国と比べて5年遅れてしまっているのです。

米国では好調のRingや、弊社のパートナーTuyaなどが大きなブースを構える。

ではなぜ日本では流行しないのでしょうか? コンシューマー向けの家電製品で考えてみたいと思います。

進化しすぎた家電がスマート化を阻む

 いくつか理由はあると思いますが、「日本の家電は良くできている」「DIYをする文化がない」「スマートなんちゃら商品は高額」といったあたりが主な原因でしょう。

 その中でも大きな壁になっている理由は、「日本の家電は良くできている」だと思っています。ご存知のように、日本の家電は早くから多くの機能が搭載されていました。エアコンは人を検知して空調をコントロールでき、電子レンジは解凍や温めなど多くのモードが備わっています。だからスマート化する必要性を感じていないのです(そもそも使わない機能もたくさんありますよね)。一方で海外の家電はあまり進化してきませんでした。ちょっと言いすぎかもしれませんが、いまだに物理的なスイッチでコントロールしている家電も多くあります。そのため、スマート化による進化が大きなジャンプアップとして、わかりやすくユーザーに伝わるのです。

 スマート化による進化は、「クラウドやアプリを使った機能のバージョンアップ」「機器と機器を連携して使える」点が挙げられます。海外の家電はそちら側に進化を振ってきています。たとえば炊飯器。日本の炊飯器は、炊き方や釜の質を追求し、“どんなお米でも全て同じように”炊けるように作られています。その品質により、中国人が爆買していくという光景も見られています。一方、スマート化による進化は、お米の産地や品質、作られた年代などによって水加減や火加減が違うのは当たり前という考え方で、“それぞれのお米に合わせた炊き方”をクラウドからダウンロードして使う、というもの。日本の炊飯器のような「どのお米もすべて同じ炊き方」ではないのです(最近では日本でも一部のメーカーがお米によって水加減を変える“レシピ”を炊飯器本体に備えている炊飯器を出しています)。“炊く”というベーシックな機能以外はその時々で変わるため、最初から炊飯器本体に入れておく必要がないもの。そのため、炊飯器本体は“炊く”という機能だけに絞れるので、安く作ることが可能となるのです。既に中国のメーカーは昨年行われた展示会で上記のコンセプトモデルを出展。このままいくと“日本人がこぞって中国に炊飯器を購入しに行く”という現象が起きるかもしれません。

AWE2019のMideaブースに展示されていた炊飯器のコンセプト。右のモニターには、中国各省のお米の特徴が表示され、その特徴により水加減や炊き加減を変化させられる

 また、追加できる機能としては、人の行動によってコントロールも可能になります。たとえば、自宅近くまで来たら炊き始め、自宅に着いたと同時に美味しいご飯が炊けているといったことも可能です。位置データを取得しているスマホとの連携で可能になるこの機能は、スマホ時代の賜物とも言えるでしょう。

「ガラケー」の時のような、メーカーの淘汰ふたたび?

 かつて日本だけ独自に進化し、使い勝手も良かったガラケーですが、スマホの時代になって、どんどんシェアが奪われていきました。日本のメーカーもこぞってスマホに進出しましたが、時すでに遅く、十数年前に多勢を占めていた日本メーカーは、いまはあまり残っていません。スマホやデジタル家電のみならず、白物家電においても日本の家電メーカーが同様の状況に陥る可能性があると思っています。

 なぜなら、現在日本で販売されている「スマート化された商品」の多くは、海外メーカーのものだからです。LED電球やシーリングライト、ロボット掃除機などなど、スマート化された商品でパッと思い浮かぶのは、海外メーカーの商品だと思います(ちなみに日本のAmazonさんで一番売れているスマートLED電球は弊社プラススタイルのスマートLED電球です!)。もちろん、日本の大手家電メーカーさんもスマート化した商品を作られていますが、スマート化を売りにした「付加価値の高価格帯商品」であるケースが多く、大きな販売に繋がっていないのでは? と思われます。ガラケーからスマホになった時と同じようにメーカーの勢力図が変わり、スマートホーム商品だけでなく、スマート化されている商品でも同じく勢力図が変わる可能性があるとみています。数年後にはスマート化していない商品がガラケーと同じように“じゃないほう”として扱われることでしょう。そこに商機があると思い、+Styleではスマート化した商品を多くラインアップし、販売しているのです。

ちなみに、海外の展示会で見るスマートホーム商品のラインナップは、ほとんどがカメラ、センサー、LED電球、スマートロックくらい。それ以外の商品を、スマートホーム商品を作るメーカーは出していません。+Styleはそれらに加え、ロボット掃除機やシーリングライト、アロマディフューザーなどをラインアップしています。手前味噌ですが、実は世界でも希有なラインアップを持つメーカーなのです。

2020年は改めてスマートホームを推進

 私たちは、2020年を「スマートホーム元年」と銘打ち、日本国内で“スマートホームを流行させる”活動を推進していきます。自動化や機器連携といったスマートホームの良さをPRするのみならず、自社の販路で他社のスマートホーム商品の販売も強化。スマートホーム商品を導入してもらいやすいように低価格で提供していきます。数年後に振り返った時、「2020年はスマートホームが流行し始めたターニングポイントで、“スマートホームのリスタート元年”だったね」と言えるような1年にしていきます。ぜひ期待してください。

 最後は宣伝っぽくなっちゃいましたが、また次回。

近藤 正充

プラススタイル株式会社 取締役社長
出版社での雑誌編集や、通信会社での企画/マーケティングを経験し、現職。座右の銘は「来る者拒まず、去る者ちょっと追う」。Twitter:@kmasa106