石川温の「スマホ業界 Watch」
ソフトバンク「値上げ」はauの徹底模倣か? 既視感の裏に透ける“なりふり構わぬ増収策”
2026年4月11日 06:00
「令和のオレンジプランかっ」
ソフトバンクは4月10日、新料金・サービス発表会を開催。「ペイトク2」「テイガク無制限」「ミニフィット2」などを発表した。
冒頭、寺尾洋幸コンシューマ副統括が「事業環境の変化」として、ネットワーク品質の維持・向上や原価高騰、新技術への投資にお金がかかっているといい、安定した通信を維持していくために「料金改定に踏み切る」と宣言した。ぶっちゃけて言えば「値上げする」というわけだ。
通常、金曜日午後の発表会は、謝罪会見など、世間にあまり認知されたくない内容であることが多い。
今回の発表会は10日13時から、しかも、いつもであれば、事前にSNSなどで告知があり、YouTubeなどでもライブ配信があり、発表会の終盤にはフォトセッションなどもあるものだが、そうした賑やかしも一切なかった。つまり、ソフトバンクとしては値上げというネガティブな発表だけに、できるだけ世間に伝わらず、ひっそりとやりたかったのだろう。
そんな会見で、寺尾氏が最初に出してきたのが、発表内容をまとめた1枚のスライドであった。これを見た瞬間、思わず「令和のオレンジプランかっ」とつぶやいてしまった。
オレンジプランとは、ソフトバンクがボーダフォンを買収し、携帯電話事業に参入した20年前、他社よりも絶対に安い料金プランを出すと宣言し、auに対応するプランとして投入されたものだ。
auがオレンジである一方、NTTドコモに対抗するプランとしてはNTTのコーポレートカラーとなる「ブループラン」があったのだ。
今回、ソフトバンクが発表した新料金プランはauよりも決して安くはないが、内容やプレゼン資料の見せ方がauそっくりなのだ。
たとえば、スマホと衛星の直接通信サービス「SoftBank Starlink Direct」や、5G優先接続機能である「Fast Access」(ちなみにauはau 5G Fast Lane)、200以上の国・地域でデータ使い放題となる「海外データ放題」(auはau海外放題)といった具合だ。
しかも、キャッチコピーも「日本も、世界も、もっとつなげる」として、auの「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」に寄せまくっている。
ソフトバンクといえばPayPayを中心にした経済圏が強いのだから、そっちをメインにアピールしてくるかと思いきや、通信サービスを訴求してきたことで、一層、「auのパクリ」っぽく見えてしまった。
あまりの既視感に1年前に行われたKDDIの発表会を思い出してしまったほどだ。
今回、NTTドコモ、KDDIに続いて値上げに踏み切ったソフトバンク。そもそも、この値上げ基調を作ったのは、紛れもなく、ソフトバンクの宮川潤一社長だ。
決算会見で人件費や外注費、電気代の高騰に触れ「どこかで値上げをせざるを得ない」として、料金改定を匂わす発言を繰り返してきた。
そこにまんまと乗ってしまったのがNTTドコモとKDDIで、相次いで値上げプランを出したものの、張本人であるソフトバンクがなかなか料金改定をしてこなかった。
結局、ソフトバンクが値上げプランを発表したのが、今回のタイミングであるが、1年以上、他社を研究した割にはauに極めて近い内容になっていたのに驚いたのであった。
こんなにauに寄せるのであれば、もっと早く発表できたのではないかという気がしなくもない。
ただ、ソフトバンクとしては値上げに踏みきる段階で、スターリンクへの直接通信を盛り込むことで「単なる値上げではなく、サービスを充実させた上での料金改定」というアピールをしたかったのだろう。
しかし、スターリンクにおいては、KDDIと1年間の「独占契約」が存在していたようで、KDDIがスターリンクとスマホの直接通信サービスを提供してからちょうど1年が経過した、このタイミングでしか発表できなかったものと思われる。
昨年中に値上げプランを発表できなくもなかったが、スターリンクのサービスは2026年4月まで明らかにできない。2025年中に値上げプランを発表したら、2026年4月にまた改定プランを発表せざるを得なくなる。このタイミングにずれ込んだのはそうした「大人の事情」があったものと思われる。
今回、ソフトバンクは既存の料金プランもすべて値上げする。端から見れば、強気な値上げのように感じる。
しかし、すでに昨年、KDDIが新料金だけでなく、既存の料金プランも値上げしたものの、世間の反発も薄く、ユーザーが大挙して逃げることがなかった。
実際、KDDIは既存の料金プランを値上げしたことで、モバイル通信収入が爆上がりし、収益に大きなプラス効果が働いた。
ソフトバンクとしては、KDDIの動向を注視していたようで、寺尾氏に「KDDIの値上げは励みになったのか」と質問したところ、素直に「はい」と答えてくれた。
ソフトバンクが既存プランの値上げに踏み切ったのは、KDDIの成功を見たからということだろう。
ここで気になるのがNTTドコモだ。
NTTドコモは昨年、「ドコモMAX」など新プランで値上げを行ったが、一方で、既存プランは値上げしなかった。
KDDI、ソフトバンクが既存プランにも手を入れたのだから、NTTドコモとしても既存プランを値上げしたというのは本心だろう。
しかし、KDDI、ソフトバンクはいずれも「ネットワーク品質が高い」という免罪符を持っている。
その点、NTTドコモは、いまだにネットワーク品質に対する不満の声が大きい。ここで、既存プランを値上げするなんて宣言したところで、ユーザーの大量離脱は避けられないだろう。
同じことは楽天モバイルにも言える。現状、3000円程度でデータ使い放題という料金プランが魅力な楽天モバイルだが、一方で、SNSを見ると、ネットワークに対するクレームのつぶやきを多く見かける。他社に比べて安いから、多少、ネットワーク品質が悪くても我慢しているという印象だ。
いまの楽天モバイルは、かつて三木谷浩史会長が約束していたように、すぐに値上げに踏み切るとは思えない。しかし、楽天モバイルも経営を維持していくには、いまのコスト構造では厳しいのは間違いないわけで、「ユーザーに値上げしても納得してもらえる通信品質」にしていく必要があるだろう。
KDDI、ソフトバンクが既存プランの値上げという綱渡りを見事こなすなか、NTTドコモと楽天モバイルが、既存プランを値上げできるかが、今後の見どころと言えそうだ。




