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ソフトバンク寺尾氏が語る「つながり続ける」ための決断、料金改定と引き換えに提供する新価値とは

 ソフトバンクは10日、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「SoftBank Starlink Direct」の提供を開始した。あわせて、PayPayポイント還元を強化した新料金プラン「ペイトク2」や、海外でのデータ通信が使い放題になるサービス、固定ブロードバンドの新プランなど、通信サービスを大幅に拡充する施策を発表した。

専務執行役員 寺尾洋幸氏

発表内容

衛星とスマホが直接つながる「SoftBank Starlink Direct」

 4月10日から提供が開始された「SoftBank Starlink Direct」は、空が見える場所であれば山間部や海上でも通信ができるサービス。専用のアンテナなどの追加機材は不要で、手持ちのスマートフォンで直接衛星と通信できる。

 ソフトバンクとワイモバイルのユーザーは、対応する料金プランに加入していれば追加料金なしで利用できる。対象外のワイモバイルプランやLINEMOユーザー向けには7月から月額1650円のオプションとして提供されるが、6月までは体験利用として無料で開放される。

 サービス開始時点でiPhoneを含む全82機種、1000万台以上の端末が対応済み。メッセージ送受信やデータ通信が可能で、LINEやPayPayなどのLINEヤフーのアプリも衛星通信に対応する。4月中旬からはauやドコモのユーザーも含め、他キャリアの利用者も対応アプリを通じて一部の機能を利用できるようになる。

PayPay還元を最大10%に強化する「ペイトク2」

 6月2日から提供される新料金プラン「ペイトク2」は、キャッシュレス決済「PayPay」の利用に応じたポイント還元が特徴。現行のペイトクプランを刷新し、PayPayカード ゴールドでの決済による還元率を従来の+5%から+10%へと倍増させた。付与上限は月間4000円分となる。

 また、新たに物理的なPayPayカードによる決済も特典の対象に加わった。YouTube Premium Liteが1年間追加料金なしで利用できる特典も付与される。

 専務執行役員の寺尾洋幸氏は、モバイル事業開始から20周年を迎える中で、ネットワーク維持コストの増大や新技術への投資が必要な状況を説明した。その上で、安定した通信と事業基盤の維持を目的とした料金改定を実施しつつ、ユーザーに還元できる仕組みとして新プランを提示した。

 そのほか、ソフトバンクの新料金プランとして「テイガク無制限」と「ミニフィット2」の発表や、ソフトバンクとワイモバイルにおいて、既存プランの値上げも発表された。

200以上の国・地域で使い放題「海外データ放題」

 海外渡航時の利便性向上を目的とした「海外データ放題」も6月2日から開始される。対象は200以上の国と地域で、従来の「アメリカ放題」に加え、多くの渡航先でデータ通信が使い放題となる。

 「ペイトク2」や「メリハリ無制限+」などの無制限プラン加入者は、追加料金なしで利用できる。その他のプランでも月間最大3~5日間は無料で利用可能。4月20日からは、海外の実店舗での決済で必ずポイントが当たる「PayPayスクラッチくじ」も実施される。

5Gで優先割り当て「Fast Access」

 ネットワーク品質の向上策として、6月2日から「Fast Access」が提供される。特定のエリアで5G SA(スタンドアローン)の無線リソースを相対的に多く割り当てることで、混雑時でも快適な通信を実現する技術。舞浜駅やユニバーサルシティ駅など、人が密集する場所でのフィールドテストでは通常の約2倍の通信速度を記録したという。

 常務執行役員兼CNOの大矢晃之氏は、5G基地局が12万局を超え、トラフィックが過去5年で約1.6倍に急増している現状を報告した。AIを活用した運用の自動化を進め、障害検知から復旧までを自動で行うシステムを開発しているという。

常務執行役員兼CNO 大矢晃之氏

固定回線も刷新、ソニーやフリービットと協業

 固定ブロードバンド事業では、ソニーネットワークコミュニケーションズと共同出資会社を設立し、6月1日から「SoftBank 光+」の提供を開始する。10Gbpsおよび2.5Gbpsの高速プランを用意し、PayPayカードでの支払いによる割引も適用される。

 また、全戸一括型マンションISPでシェアの高いフリービットグループとの協業も拡大する。これまで光セット割の対象外だった140万戸規模のマンションにおいて、順次「おうち割 光セット」が適用可能になる見込み。

主な質疑応答

――ペイトク2について、基本料金で1万円の大台を超えてくる料金設計になっている。新規ユーザーが入りにくくなるのではないかという点もあるが、この料金設定にした背景を教えてほしい。

寺尾氏
 今回の料金については、PayPayをしっかり使っていただくお客様が選んでいただくサービスかなと思っております。PayPayカードなどを使っていただきますと最大4000円の還元を行いますので、実質的には3000円~5000円ぐらいという形で、PayPayを使うお客様にとっては非常にお得な料金になっているのではないかと考えております。

――全体的に経済圏サービスを使っていただくのが前提のようだが、その狙いも教えてほしい。

寺尾氏
 我々にとってお客様をいかに我々のファンにしていくか、どれだけ我々のグループの中にいていただけるかが大きな課題です。PayPayやヤフー、あるいは光サービス、これらをしっかり使っていただくお客様ほど解約率が低いというデータもございます。通信事業としてもLTV(顧客生涯価値)が上がりますし、相乗効果を狙ってこのような設計としております。

――ペイトク2も既存プランも、額面だけ見ると値上げという形になる。この値上げ幅をどれくらい持たせるか、どのような考え方で今回の設定に行き着いたのか。

寺尾氏
 これは本当に悩みました。300円がいいのか400円がいいのか、議論百出の中で決めた料金です。一番の理由は、ネットワークをしっかり維持していかなければならないということです。ネットワーク投資を一瞬止めたら、あっという間にネットワークは繋がらなくなります。

 ヨーロッパなどへ行ってみると、本当にネットワークが悪くなっていると感じることがあります。一方で投資を続けてきた韓国や中国は全く違う世界があります。我々としては、ちゃんと繋がるネットワークをこれからも作っていく。そのために必要な、大変申し訳ありませんが少しだけご協力をお願いしたいということで、今回の改定をさせていただきました。

――ペイトク2でゴールドカードの優遇が強まり、通常カードの上限が下がっているが、ゴールド獲得への強い意向があるのか。

寺尾氏
 ゴールドカードについては、月500円の割引となります。家族5世帯、光も入れると月1500円、年間で1万8000円ほどの割引になりますので、ゴールドカードの年会費を上回るメリットがあると考えています。

 グループへの利益貢献も大きいため、少しゴールドに寄せた設計にいたしました。また、条件金額についても一般の方が普通に達成しうるレベルに設定しています。

――他社が先行してきたものをキャッチアップしたような印象を受ける。ソフトバンクならでは、ワイモバイルならではのものは今後考えているのか。

寺尾氏
 一部はキャッチアップに見えるかと思いますし、キャッチアップです。

 しかし一番大きいのは、本日発表した「SoftBank Starlink Direct」かと思っております。20年間、基地局をコツコツ打ってまいりましたが、それでも日本から圏外はなくなりません。我々の最大の責務は通信を繋ぐことです。Starlinkを活用して圏外をカバーするサービスは、今最も意味のあるサービスだと考えております。

 また、AIに対しても多額の投資をしており、これを新たな価値として届けることも差別化の要素にしていきます。

――これまで決算の中でも宮川潤一社長が、値上げの考え方について「いらないものをくっつけてもしょうがない。やっぱり必要なものを入れて値上げをして理解を得ていくんだ」といった話をしていたと思うが、今回「必要だ」と思ったものはどれか。

寺尾氏
 やはり日本全てのお客様にすぐに関わるところでは、SoftBank Starlink Directだと思います。今までは、やはりどうしても1割2割は山の中で繋がらないところが出てきますし、高い山に行けば繋がらないというのは、当然ありました。この「繋がる」という意味では一番意味のあるサービスかと思っております。

 その上で、私自身、一番価値があるのは海外ローミングではないかなと思っております。至らなかったところだと思いますけれども、皆さんが海外行かれるときに、「通信どうする?」と頭を悩ませていらっしゃったかと思います。実際、Wi-Fiなどを借りるのもいちいち手間だったと思います。

 ここを全部なくすことができたということで、日本国内での圏外を、完全ではないですが減らすことができた、そして海外でも安心して使っていただくことができたということで、我々の今回の大きな価値ではないかなと思っております。

――宮川社長は以前、他社の優先制御について否定的な見解を述べていたと記憶しているが、今回の「Fast Access」は他のユーザーへの悪影響はないのか。

寺尾氏
 まず「Fast Access」についてですが、導入にあたり技術メンバーと凄く議論しました。既存のお客様にネガティブが出るようではやるべきではないと、余裕のあるエリアでしっかり速度が出るようにしており、厳しいところではあまり差が出ないような仕組みにしています。

――なぜ今のタイミングで料金改定をしたのか。昨年から宮川社長も言及されていたが、この2026年4月というタイミングになった理由を教えてほしい。また、ワイモバイルのシンプル3も昨年改定したばかりだが、再度の改定となった理由も伺いたい。

寺尾氏
 なぜ今か、というのは非常に難しいですが、設備更新やネットワーク投資を精査してきた結果です。コンシューマー事業としてもコスト削減の努力をしてまいりましたが、正直、今の品質を維持するにはここが限界のタイミングだと判断しました。部材の高騰、人件費、燃料費を考慮すると、これ以上は待てないという状況です。

 シンプル3についても、昨年改定した段階でもう一段行くかは検討しておりました。収益構造をシンプル、シンプル2、シンプル3で同等にするためのバランス調整として今回お願いすることにいたしました。

――サービスが複雑になっている一方で、メリハリ無制限プラスの新規受付を終了した。今後、シンプルな「通信量と料金のみ」のプランはもう展開せず、何かしらの付随サービスをセットにしたビジネス方向に舵を切るということか。

寺尾氏
 メリハリ無制限プラスの後継として、今回「Fast Access」などを入れた機能強化版として「テイガク無制限」を提供いたします。

 ただ、ご指摘の通りシンプルさを求めるお客様もいらっしゃいます。我々には3つ目のブランドとして「LINEMO」がございます。こちらでは従来通りギガ数で選べるシンプルなサービスを継続していきます。

――楽天モバイルが低料金で頑張っていますが、ソフトバンクとしてはネットワークさえ良ければ値上げしても大丈夫という認識なのか。

寺尾氏
 楽天モバイルさんは非常に脅威だと感じております。ただ、何よりも「繋がること」が重要です。繋がらないことはお客様にとって最大のデメリットになります。それを守るための改定です。

――販促費の振り分けについては、やはり既存客の囲い込みに軸足を置いていく流れになるのか。

寺尾氏
 既存のお客様に留まっていただくサービスをしっかり作っていくのは大きな使命です。一方で、新しいお客様を取るのも重大な任務です。ただ、短期間でぐるぐる事業者を回るようなお客様については、インセンティブをコントロールしていかないと、全員が不幸になっていくと考えています。そのあたりはバランスを取りながらやっていくことになります。

――Starlinkの技術的な部分ですが、地上局についてソフトバンク独自で用意するのか、既存のものを利用するのか。また、アメリカなど海外でのStarlinkローミングは可能なのか。

執行役員 技術統括 プロダクトR&D本部 本部長 小林丈記氏
 地上局については、既存のStarlink地上局と我々の設備を接続して提供いたします。海外利用については現在検討を進めており、近いタイミングでお話しできればと考えております。

――「JAPANローミング」を自社サービスのように見せるのは少しずるい気がする。

寺尾氏
 「JAPANローミング」は新しい取り組みなので、認知拡大のためにも入れました。災害時に他社回線でも繋がるようにする我々の努力の結果として、知っていただくためにあえて入れさせていただきました。

 決して売り物にするというより、我々の「繋ぐ」ための取り組みとしてご理解いただければと思います。

主な囲み取材

寺尾洋幸氏と大矢晃之氏

――今年の夏に、ドコモが銀行サービスなど新しい取り組みを予定しており、料金面でも連携していくという方向性を表明しているが、そういった他社の動向も含めて対抗していけると考えているか。

寺尾氏
 経済圏の連携については、まだまだやることがたくさんあると思います。経済圏は大きな差別化の種になります。そこは仕込んでいますが、まだ言えないので、しっかりやっていきたいと思います。

――「Fast Access」について、余裕があるところで差を出すと回答していたが、具体的にはどのような場所で価値が出るのか。

大矢氏
 場所や時間、そこにいる対象のユーザー数にもよります。鈴鹿サーキットでも導入しましたが、我々はトラフィックの状況やキャパシティの状況をウォッチしながらチューニングするシステムを持っています。それを駆使することで、一般ユーザーにはある程度のパフォーマンスを維持しながら、「Fast Access」ユーザーには優位性を体感していただけるよう、バランスを調整します。

――他社が販促費用を増やしているが、その影響は感じているか。

寺尾氏
 もちろん我々も対抗しなければなりません。限られた予算の中で、いかに知恵を絞ってお金を使うか、という点に非常に注力しています。

――「ペイトク」を値上げし、「ペイトク2」も新設した。既存ユーザーの移行を狙っているのか、それともワイモバイルからの移行を狙っているのか。

寺尾氏
 どちらかというと、より経済圏を使っていただける「新しいお客様」を狙っていきたいと思っています。当然、新規顧客をどれだけ獲得できるかが事業の基本ですので、新規獲得のための新料金プランだと思っていただければと思います。

――既存の「ペイトク」ユーザーが移らなくても問題ないのでしょうか。

寺尾氏
 大きな問題はありません。一方、「ペイトク」を利用中で、かつPayPayカード ゴールドをお持ちのお客様は、すぐに「ペイトク2」に移ったほうが良いです。そのあたりは、今回の料金プランの設計に織り込み済みです。

――消費者の「価格へのこだわり」に変化は見られますか。

寺尾氏
 安さだけであれば、すべてのお客様がMVNOに流れてしまうはずです。やはり一定の品質や信頼度を得たいために、我々を選んでいただいているのだと思います。

 主力はやはりワイモバイルになりますが、一定の割合で「リッチコンテンツを楽しみたい」「通信制限で我慢したくない」というお客様が増えています。そういう意味で、データ無制限へのニーズは確実にあります。

 昔から変わらず、「しっかり節約したいお客様」と「動画視聴などの楽しいことを存分にやりたいお客様」のバランスは、それほど変わっていないように感じます。

 お客様の経済状況にもよりますので、我々としては、それぞれのお客様に合わせたサービスを提供していくことが最善だと考えています。