石川温の「スマホ業界 Watch」

ドコモとソフトバンクが「スマホと衛星通信」でスターリンク採用、差別化困難な“空のインフラ”争奪戦

 NTTドコモは、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「docomo Starlink Direct」を4月27日に開始すると発表した。NTTドコモの発表から30分遅れて、ソフトバンクもStarlinkを使った衛星とスマートフォンの直接通信サービスを提供するとアナウンスしたが、詳細は後日発表するとした。

 これまで、衛星とスマートフォンの直接通信といえば、KDDIの独擅場であった。同社は2025年4月10日に、日本で初めて衛星とスマートフォンの直接通信サービスを開始。

 当初はテキストメッセージの送受信のみであったが、その後、8月には地図や天気などのアプリでのデータ通信を提供するようになった。対応する衛星の数が増えるなど、衛星とつながる時間も延びるようになった。

 さらに今年3月には、アメリカのキャリアであるT-Mobileとのローミングを実現。auユーザーはアメリカでも衛星につないでデータ通信が行えるようになった。

 KDDIがStarlinkによるサービスを強化する一方、NTTドコモの前田義晃社長が2025年5月に「我々も2026年夏に(衛星とスマホの直接通信サービスを)開始できる」と言及したのだった。

 同じタイミングでソフトバンクの宮川潤一社長も「我々も来年、提供する」と明言。両社ともどの衛星事業者と組むのかなど具体的な内容には触れなかった。

 ただ、同じタイミングでNTTドコモとソフトバンクがサービス開始について触れる一方、Starlinkと同等レベルのサービスを提供できる衛星事業者が見当たらないことから、両社ともにStarlinkと提携するものと見られていた。実際、ドコモ関係者からは「うちもStarlinkとやる」とささやかれたことがあった。

 NTTドコモとソフトバンクがStarlinkと組むのが明確に見えてきたのが、2026年3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC26だった。

 Starlink関係者が基調講演を行ったのだが、そのなかで衛星とスマートフォンの直接通信サービスの提供国を挙げた際、日本では「KDDIと今年2社、新たに追加になる」とコメントがあったのだ。

 楽天モバイルは以前からAST社と組むとアナウンスされていたことを考慮すると、この2社がNTTドコモとソフトバンクだと言っているようなものだった。

難しくなる差別化と、各社の料金・対応アプリ

 NTTドコモとソフトバンクがStarlinkと組むことで、先行していたKDDIの優位性は消滅しつつある。3キャリアにとってみれば、他社との差別化が難しく、かといって有料オプションとして稼ぐことも難しい商材となってしまった。

 KDDIは対象となる料金プランの契約者に対して、無料で提供する一方、他社回線利用者向けに月額1650円で利用できるプランも提供している。

 一方、NTTドコモはahamoを含めたすべての料金プランを契約するユーザーに対して、当面、無料で提供する予定だ。

 料金体系を発表していないソフトバンクに注目が集まるが、当然、後出しジャンケンで負けるわけにはいかないので、ソフトバンクも当面無料で提供するというのがもはや既定路線になっている。

 使えるアプリに関してはKDDI、NTTドコモともにGeminiを使った検索、RCSやiMessageなど基本的なアプリだけでなく、X(旧Twitter)やYAMAP、SmartNews、特務機関NERV防災、WhatsAppなどが対象となっている。

 KDDIであれば、auカーナビやau PAY、NTTドコモであればドコモメールやd払いなど、自社のキャリアが提供するサービスが使える。

 かつて、ソフトバンクの宮川潤一社長に対して「衛星とのダイレクト通信で差別化できるか」と聞いたことがあったが、宮川社長は「衛星通信サービスだけで差別化することは難しいのではないかと考えている」と白旗を揚げていた。

注目されるソフトバンクと楽天モバイルの動向

 今後、ソフトバンクもStarlink Directに関する詳細を発表する予定だが、PayPayやLINEなど「自社グループの企業が提供するサービスを、ソフトバンクユーザーだけに提供するのか、他社ユーザーにも開放するのか」が注目と言えそうだ。

 企業からすれば、自社と契約するユーザーだけに囲い込み、差別化したいというのが本心だろうが、PayPayやLINEなど国民に広く普及している、もはやインフラのような存在を、自社ユーザーだけに囲い込むのは炎上の対象になりやすい。

 やはり、山で遭難した際など、いつものLINEを使って、Starlink経由で助けを呼べるのはかなりの利便性があるだけに、ソフトバンクにはぜひともLINEをすべてのユーザーに開放してほしいものだ。

 楽天モバイルは、Starlinkではなく、AST社と組んで年内に衛星とスマートフォンの直接通信サービスを開始する。無料で提供するのはもちろんのこと、3社が提供するStarlink Directに比べて、通信速度が速く、使えるアプリも豊富で、使える時間も長く提供できるなど、さまざまな面で差別化できれば、楽天モバイルが見直されるようになるかもしれない。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。