石川温の「スマホ業界 Watch」

「Pixel 7/7 Pro」がドコモで販売されない理由

 グーグルの新製品スマートフォン「Pixel 7シリーズ」が発表となった。

 日本の記者説明会ではスンダー・ピチャイCEOがサプライズで登壇。さらに製品プレゼンでは、カメラ周りやPixel Watchを含めたエコシステムなどが丁寧に説明された。

日本の発表会に登場した米グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏

 このあたりは、日本市場で圧倒的なシェアを持つアップルの「iPhone」や「Apple Watch」を相当、意識した説明会になっていた感がある。

 昨今、円安基調でスマートフォンの価格が高騰するなか、コストパフォーマンスに優れた値付けとなっており、iPhoneからユーザーを奪う気満々だ。

 10月6日夜(日本時間)に開催されたニューヨークでの新製品発表後には、日本のキャリアであるKDDIとソフトバンクからもPixel 7シリーズを販売するとのアナウンスがあった。今回も残念ながらNTTドコモからの発表はなかった。

 奇しくも、NTTドコモは同じ日である6日に、この秋から来年の春に向けての新製品ラインナップを発表している。メディアに事前の告知があった際、関係者の間では「NTTドコモが10月6日に新製品を発表するということはもしかしてPixelも含まれているのではないか」との期待の声も上がっていたが、残念ながら見事にスルーされてしまった。

 かつては「Nexus」、最近でもPixel 3を取り扱っていたNTTドコモであるが、果たして、なぜPxel 6シリーズに続き、Pixel 7シリーズを避けるのか。

 単刀直入に言えば、Pixel 7シリーズは、 NTTドコモが重視している「n79」という周波数帯に対応していない というのがひとつの理由だ。

 Pixel 7シリーズでは、n77とn78という3.7GHz帯に対応する。このバンドはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが保有している。

 一方でNTTドコモだけが、n79という4.5GHz帯を独自に保有している。実は3.7GHz帯は衛星などと干渉するとされており、各社ともネットワークの構築に苦労してきた。その点、NTTドコモは4.5GHz帯を持っていたこともあり、5Gネットワークを構築する上で、4.5GHz帯をメインにしてきたのであった。

 つまり、スマートフォンが4.5GHz帯に対応していないと、5Gをつかむ場所が極端に狭くなってしまうのだ。NTTドコモとしても、満足に5Gにつながらないスマートフォンは調達できないというわけだ。

 ただ、NTTドコモ関係者は「n79問題は採用しない理由のひとつでもあるが、それだけではない。市場環境を見極めている段階だ」と語る。

 NTTドコモが欲しいとは思えないほど、Pixelシリーズがさほど売れていないのかと思いきやNTTドコモ関係者は「Pixel を扱うソフトバンクでは若者を中心に売れているようだ」と分析する。

 Pixelが若者に売れるスマートフォンならば、ahamoを持つNTTドコモこそ、取り扱いをするべきではないか。なんだか、もったいない気がする。

 PixelはグーグルのAIのチカラをつかい、カメラや文字起こしなど、とても便利なスマートフォンであり、価格も安く抑えられているので、幅広い人が満足できるデバイスに仕上がっている。

 デバイスの実力の割には、もうちょっと日本市場でユーザーを増やしてもいいような気がするのだが、ブレイクできておらず、くすぶっている感がある。

 日本ではじけ切れていないPixelに足りないのは、やはりキャリアのチカラ、つまりNTTドコモなのではないか。

 iPhoneがなぜ日本で売れたかといえば、2007年のソフトバンクによる独占的な販売から、数年ごとにKDDI、NTTドコモ、楽天モバイルに販売キャリアを増やしてきたことが大きい。いまでは4キャリアが競ってiPhoneの販売競争を繰り広げている。アップルがつくったCMも最後のキャリアロゴが出るだけにもかかわらず、各キャリアが宣伝費を負担して流しまくっている。

 家電量販店で1社が多額の割引を盛れば、他キャリアも負けずに応戦する。

 iPhoneは4キャリアが競って売るという構図が上手いこと構築されている。

 一方で、PixelはKDDIとソフトバンクのみが扱うということで、そこまで販売競争合戦に至っていない。Pixelとしては、NTTドコモを加えることで、3キャリアを戦わせる関係性を築くことが急務ではないか。

 n79問題は、NTTドコモがグーグルに「Pixelを調達するよ」をいえば、すぐに対応できそうなものだが、グーグルとしてはNTTドコモが調達してくれるかわからない中でn79に対応するのは面倒と感じているのかもしれない。

 実際、n79は日本ではNTTドコモが保有するが、世界では中国ぐらいしか扱われていないので、グーグルとしては優先順位は低いのかもしれない。

 n79という、たった一つのバンドであるが、PixelとNTTドコモにとっては避けては通れない問題のようだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。