レビュー
基本機能からSuica、ナンバーシェアまで、「Google Pixel Watch」をいち早く使ってみた
2022年10月13日 02:01
10月7日、グーグルが初めてのスマートウォッチ「Google Pixel Watch」を発表した。Wear OS by Google(Wear OS 3.5)を搭載し、Android 8.0以上を搭載するスマートフォンとペアリングして使える。BluetoothとWi-Fiで接続するモデル(3万9800円)と、BluetoothとWi-Fiに加えて4G LTEにも対応しているモデル(4万7800円)がある。
筆者は、10月13日の発売に先駆けて4G LTEモデルを試せる機会を得たので、いち早く使ってみた率直な印象をお伝えしたい。なお、スマホは同日発売のGoogle Pixel 7 Proを使用した。
2つのアプリでの初期設定が必要
Google Pixel Watchは、本体とバンドがセットで販売される。最初に付いているバンドはフルオロエラストマー製の「アクティブ バンド」。
フルオロエラストマーは、Apple Watchのスポーツバンドにも用いられている素材で、シリコンのように見えるが、シリコンよりも耐久性が強く、肌触りが良いことも特徴。なお、バンドはS、Lの2サイズが同梱されているので、腕が細め、あるいは太めの人でも合うはずだ。
充電器が付いたUSB-Cケーブルも同梱されているが、ACアダプタは付いていない。コンセントから充電したい場合は、USB-Cケーブルを挿せるACアダプタを用意する必要がある。
スマホとのペアリングは、「Google Pixel Watch」アプリから行う。画面の案内に従って、スムーズにペアリングができた。
注意しなければならないのは、健康状態やワークアウトのデータを記録するために「Fitbit」アプリが必要になること。「Fitbit」アプリでも、Pixel Watchを紐付ける設定が必要になる。これまでにFitbitのデバイスを使ったことがある場合は、そのアカウントでログインしてスムーズに設定できるはずだが、初めて使う場合は、やや手間に思えるかもしれない。
ほどよいサイズ感だが、細かいタッチ操作はしづらい
Google Pixel Watchの文字盤は円形。腕時計としてはベーシックな形状だが、エッジが曲面で、ベゼルが黒く、ディスプレイの背景も黒く表示されるので、ベゼルレスのようにも見える。
腕に巻くと、単なる “時計” ではなく、未来感があり、何か特別なことができそうな “ギア” という趣が感じられる。
ケースはステンレス製で、直径41mmで、厚さは12.3mm。重さは36g(バンドを除く)。薄くもなく、厚くもなく、シャツの袖に隠すこともできる。シンプルなデザインなので、年齢や性別に関係なくフィットしそうだ。ただし、高級感には欠けるので、腕時計にそれを求める人は、別売のレザーバンドやメタルバンドに交換すべきだろう。
ディスプレイの解像度は320ppiで、最大輝度は1000ニト。常時点灯も設定できる。画面は大きいとは言えないので、50代の筆者の目には、小さく表示される文字は見づらく感じた。タッチレスポンスはスムーズで、スマホと同じような感覚で操作可能。ただし、電話番号や文字の入力など、細かいタッチ操作ではミスが生じやすいかもしれない。
ケースの右側にはリューズとボタンがある。リューズを押すとアプリ一覧が表示される。リューズは回すことができ、縦に長い画面のスクロールや音量調整などに用いられる。画面をタッチして操作するよりも便利に感じられた。リューズの上にあるボタンを押すと、最近使ったアプリを表示できる。
付属しているアクティブ バンドは、ちょうどいい位置で固定して、余った部分を内側に収められる仕様。ソフトな肌触りで、フィット感はよかった。きつめにしたり、緩めたりもしやすく、エクササイズ時にも適しているだろう。
操作性はシンプル。画面カスタマイズはアプリを使うと便利
Google Pixel Watchのホーム画面と言える「ウォッチフェイス」は、「ユーティリティ」というデザインが初期設定されている。現在時刻のほかに、歩数、Fitbit Today(運動のデータ)にアクセスするアイコン、心拍数が表示される。
この表示をカスタマイズしたり、ほかのデザインに変更したりすることもできる。Pixel Watchの「設定」でも変更できるが、スマホで「Google Pixel Watch」アプリを使って行うのがスムーズだ。全部で8つのデザインが用意されている。
ウォッチフェイスを下方向にスワイプするとクイック設定が表示され、上方向にスワイプすると通知を確認できる。Pixel Watchに表示させる通知は「Google Pixel Watch」アプリで設定可能。メッセージやメール本文も読めて、返信することもできる。
ウォッチフェイスを左右になぞると「タイル」を表示できる。よく使うアプリや機能、情報画面などを設定できるが、最初は何も設定されていない。しばらく使ってみてから、アプリ一覧からの呼び出しが手間に感じる機能を設定すると便利だろう。
Fitbit機能には、日本では使えない機能も
Google Pixel Watchは、グーグルが買収して傘下に入れた「Fitbit」が培った健康管理機能を搭載していることも優位性としてアピールしている。
「Fitbit Exercise」から起動できるエクササイズモードは、数えると41種類あった。ランニング、ウォーク、サイクリング、水泳など一般的なものから、インドアクライミング、カヌー、カヤック、ヨガ、格闘技といったモードまで、幅広く揃っている。モードを選択して、▶︎(スタート)をタップするだけで計測が始まる。距離、時間、消費カロリーなどの目標を設定して、到達したら通知されるようにすることも可能だ。
ランニングやウォークなど、移動を伴うエクササイズは、GPSで現在地情報が取得されてからスタートする。なお、他社のスマートウォッチでは、ユーザーが運動を始めたことを自動で検知して、エクササイズモードの起動に導いてくれる機能が搭載されている機種もあるが、Pixel Watchには自動検出機能はないようだ。
エクササイズモードの使い勝手は標準的。心拍数がモニタリングされて、運動の強度も確認できる。運動を終えると、Pixel Watchの画面で記録されたデータを確認でき、スマホの「Fitbit」アプリで、より詳細なデータを確認できる仕組みだ。
Pixel Watchを腕に巻いたまま寝ると、睡眠の状態がモニタリングされる。結果は「Fitbit」アプリで確認できる。かなり詳しい分析結果が表示されるが、Pixel Watchのユーザーなら6カ月無料で試せる「Fitbit Premium」(通常は月額650円または年額6400円)に加入すると、より詳しい分析結果を知ることができる。
ヘルス関連の機能で気になったのは「心電図」と「血中酸素濃度」。
Pixel Watchのアプリ一覧には「Fitbit 心電図」があるが、起動することはできない。日本では医療機器としての認可が取れておらず、機能として実装されてはいるが使えないとのことだ。しかし、発表会ではグーグルの担当者が「日本でも使えるように努力を続けていきたい」と話していたので、今後使えるようになる可能性はゼロではないのだろう。
今や、ほとんどのスマートウォッチが搭載している血中酸素濃度を測定する機能だが、Pixel Watchのアプリ一覧には見当たらない。
しかし、スペックシートには「血中酸素センサー」が搭載されていることが記されている。どうやら血中酸素濃度は睡眠時などに自動で計測され、手動で計測できる機能は備えていないようだ。発熱したり、体調を壊したりした場合の健康指標のひとつとなるので、ユーザーが好きなときに計測できる機能も追加してほしいと感じた。
「Suica」でスピーディーに決済できるのは魅力
Google Pixel Watchは、Googleアプリの使い勝手に優れていることも利点。「Googleアシスタント」や「Googleマップ」のナビ機能を利用でき、Google PlayストアからPixel Watchで使えるアプリをダウンロードして、インストールすることもできる。
「Google Pay」に対応し、「Suica」が使えることに関心を持っている人も多いようだ。Suicaは、スマホの「Google Pay」アプリでSuicaを使える状態にしてから、「Google Pixel Watch」アプリでPixel Watchに追加できる。
すでに、スマホでGoogle Pay版のSuicaを使っている人はスムーズに設定できるだろうが、初めて登録する筆者は、「Google Pay」アプリでSuicaのアカウントを取得しようとするとエラーが表示され、つまずいてしまった。そこで、モバイルSuicaのヘルプページを参照して、「モバイルSuica」アプリで会員登録をして、新しいSuicaを発行。そのSuicaを「Google Pay」アプリで使えるようにできた。
Pixel Watchで「Google Pay」を使うには、セキュリティのためにパスコードまたはパターンの設定を求められる。しかし、Suicaを使う際は、その都度ロック解除をする必要はなく、リーダーにかざずだけで決済できる。
ちなみに、Pixel Watchの「Google Pay」で使える電子マネーはSuicaのみ。スマホの「Google Pay」で使える「PASMO」「楽天Edy」「nanaco」などは使えないので注意が必要だ。
クレジットカードとデビットカードは、VISAとMastercardのタッチ決済に対応している。
しかし、筆者が三井住友のVISAカードの登録を試みると「使えない」と表示された。Google Payのヘルプページを参照すると、三井住友カードについては「現在、スマートウォッチでのVISAタッチ決済はサポートしていません」と記されていた。カードのタッチ決済を使いたい場合は、事前に調べる必要があるだろう。
ランナーには非常に便利な「ナンバーシェア」
筆者が使っている4G LTEモデルは、スマホと接続しなくても、Pixel Watch単体で通話や通信ができる。それには、スマホと同じ通信事業者が提供するプランに加入する必要がある。
筆者は、「Pixel 7 Pro」にauのSIMを挿して使っているので、auの「ナンバーシェア」(月額385円)に加入した。なお、ソフトバンクの「ウェアラブルデバイスモバイル通信サービス」(月額385円)も利用できる。ちなみに、両社ともに48カ月無料で使えるキャンペーンを実施している。
「ナンバーシェア」への加入は、Pixel Watchの初期設定時に誘導されるが、それをスルーしても、後で「Google Pixel Watch」アプリの「モバイルネットワーク」から申し込むことが可能。電話番号が自動で認識されるのでスムーズに利用でき、申し込みの完了とほぼ同時に、Pixel WatchのeSIMが有効になった。
ナンバーシェアを契約すると、スマホが近くになくても、Pixel Watchだけで着信して通話ができ、アプリの通知も受信できる。「YouTube Music」のストリーミング(他のサービスは試していない)が聴けて、SuicaもPixel Watch単体で利用できる。
ランニングやウォーキングを日課としている人は、運動中はスマホを持ち歩きたくないと思う人が多いだろうが、Pixel Watchの4G LTEモデルがあれば、ワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら走って、電話が着信したら、そのまま応答でき、休憩の際に、コンビニで水を買うこともできるわけだ。
しかし、ほかに4G LTEモデルが役立つ場面は、スマホの電池が切れたときくらいで、そんなには思い当たらない。外出時に常にスマホを携帯している人は、Bluetooth/Wi-Fiモデルを選ぶのが得策だ。
電池持ちは良いとも悪いとも言えず……
グーグルが公表するスペックによると、バッテリー容量は294mAhで、最大24時間の連続使用を見込めるとのこと。筆者がGoogle Pixel Watchを使った初日は、まだ多くの機能を活用できなかったこともあり、朝から使い始めて、翌朝まで付けっぱなしで、10%以上の電池が残った。しかし、3日目に自分が使いやすい設定にして、GPSを使うエクササイズを1時間ほどすると、朝7時に100%にまで充電したが、夜の11時には7%になっていた。
電池持ちは使い方によって差が出るが、筆者が3日だけ使った印象としては、あまり多くの機能を使わない場合は1日持ちそうだが、エクササイズモードを使うと1日持たせるのは厳しい。
充電時間は、スペックには「約30分で50%、約55分で80%、約80分で100%」と記されている。
筆者のPixel Watchの電池残量が7%まで減った時に充電を始めて、100%になるまでの時間を測ったところ70分ほどかかった。なので、ほぼスペック通りだ。
睡眠をモニタリングしないのなら夜間に充電できるが、睡眠時も着けたいなら、デスクワーク中や入浴時間などにPixel Watchを外して、“追い充電”をする必要があるだろう。
楽しく使えるスマートウォッチだが、競合モデルとの比較も不可欠
Google Pixel Watchは、多くの人に好まれそうなデザインで、健康管理トラッカーとしての性能に定評があるFitbitの機能が搭載されている強みも持っている。Suicaだけとはいえ、電子マネーが使えるのも便利だ。操作に迷うことが少なく、使っていて楽しい気分になれるスマートウォッチだと感じた。Androidスマホのユーザーにとって、非常に魅力のある選択肢となるだろう。
しかし、Androidスマホと連携させて使えるスマートウォッチは数多くあり、Pixel Watchよりも画面が見やすいものや、電池が長持ちする機種もある。価格が安いスマートバンドという選択肢もある。画面の視認性や電池持ち、コストを重視するなら、他社のモデルと比較検討することをおすすめしたい。