法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)

ハードウェアの進化が著しいGalaxy Z Fold7と要所を的確に抑えたCMF Phone 2 Proは識者の目にどう映る

 通信業界を中心に活躍するライター4人による「スマホ会議(仮)」。今回はGalaxyやNothingの新端末に加え、気になる業界ニュースについて話し合っていきます。

Galaxy Z Fold7は衝撃の完成度

佐藤
 新端末としては、サムスンから「Galaxy Z Fold7」「Galaxy Z Flip7」が発売されました。


佐藤

法林氏
 Galaxy Unpackedは、現地で取材できてよかったね。


法林氏

石野氏
 Galaxy Z Fold7の薄さにはびっくりしました。久しぶりに、スマートフォンを見て、「おぉ!」と声が出てしまいました。

石野氏

石川氏
 7世代目にして、まだ進化するのかという驚きもありますね。

石川氏

法林氏
 閉じた時に、ディスプレイの隙間がなくなったGalaxy Z Fold5(2023年発表)でも驚いたけど、今回はそんなレベルではない驚きだったね。

関口
 前段的に、Galaxy S25 Edgeという薄型モデルが出ていますよね。あれは、ただ単に薄型モデルを作りたかったというよりは、折りたたみ機種に応用するためのものだったんですかね。

石野氏
 そうですね。閉じた時の見た目は、ほとんど普通のスマートフォンですよ。

法林氏
 中国市場を見ると、確かにとても薄い折りたたみスマートフォンは出ているので、技術的にできないわけではないとは思っていた。ただ、Galaxyは一歩先に行っている感じがする。

石川氏
 来年には、アップルが折りたたみスマートフォンを出すと噂になっているけど、Galaxy Z Fold7を見てしまうと、アップルは出せないんじゃないかとすら思ってしまいます。7世代作っているだけのアドバンテージが相当ある。ヒンジの構造然りね。

法林氏
 今回、ヒンジの構造を改良して、支える部分と稼働する部分が分かれている。結果、これだけの薄さですよ。

石野氏
 折りたたんだ状態なら、もう普通のスマートフォンと同じ感覚で使えます。

法林氏
 今回、貸出機も借りるし、発売後には製品を買うつもりだったから、先にAmazonでカバーを買ってみたけど、これだけ薄くなると、カバーによる厚みがもったいなく感じる。

石野氏
 そうですよね。だから僕はカバーをつけない、いわゆる裸の状態で使っていますよ。

法林氏
 裸での運用はちょっと怖いけどね。

石川氏
 僕は今まで、Galaxyはアメリカで買っていたけど、今回は日本で買って、保証サービスをつけないとダメだなと思いました。

法林氏
 Galaxy Careね。保証は大事だけど、Galaxy Careは申し込むのが結構面倒くさいんだよね。Apple Care+の方が、はるかに簡単。

石野氏
 ただ、僕はGalaxy Z Fold6を2、3回落下させているけど、一切割れていないし、傷もほぼついていない。細かい傷がつくくらいなので、裸でもある程度は大丈夫ですよ。

法林氏
 個人的には、サムスン純正の保護カバーは背面だけを保護していて、なるほどねと思った。中国や海外の市販品には、背面と側面だけを保護するようなカバーもある。今まで、カバーは多少分厚くても、安全な方がいいと思っていたけど、薄さのアドバンテージを活かすなら、カバー選びは真剣に考えないといけない。

石野氏
 Galaxy Z Fold7は、値段が値段なので、ドコモで割賦を組もうとしたら組めなかった。原因を探ったら、先に購入しているGalaxy Z Fold6の割賦があるので、上限に達していたみたいです。先にGalaxy Z Fold6の返却を申し込むと、残債が精算されるので、Galaxy Z Fold7の割賦が組めるようになりました。リアルタイムに与信枠が回復したのはすごいのですが、ちょっと不親切というか、こっちが考えながら作業をしなければいけないのはおかしいですよね。

関口
 値段に関しては、仕方ない部分もありますよね。

法林氏
 今、各キャリアの販売ページを見ると、ドコモのジェットブラック 256GBモデルはもう在庫がないんだね。

石野氏
 結構売れているみたいですよね。発売前日の朝に申し込んだら、もう発売日の到着は無理そうでした。

関口
 ソフトバンクは、機種変更だと256GBモデルが月々5550円、1年間の分割と早トクオプション利用料を含んで、支払い総額は約10万円です。

石野氏
 価格は頑張っていますよね。

石川氏
 頑張っているけど、色は1色だったり、ラインナップは絞っている。

法林氏
 Galaxy S25シリーズとかと比べると、お客さんは絞られるよね。

石野氏
 ソフトバンク的には、もう少しGalaxy Z Flip7を頑張るべきだとも思いますけどね。

石川氏
 でも、ソフトバンクは、縦折りタイプのスマートフォンが他にもあるからね。

石野氏
 そうなんですよ。

法林氏
 ただ、Flipは、女性ユーザーがかなり増えたという話もあるし、期待値はある。

石野氏
 この前、電車で女子高生が使っているのを見ましたよ。

関口
 路線として、カメラをあえてスペックダウンして、出っ張りを抑えて、より薄くするとか、安くするといった方向はないんですかね。

法林氏
 それでいうと、日本では出ていないけど、グローバル向けにはGalaxy Z Flip7 FEが発表された。ユーザーの母数を見ると、FoldでFEモデルを展開するほど、まだユーザー数が見込めないんでしょうね。

石野氏
 今回、ちょっと引っかかるのは、Sペンに非対応になったところですかね。

法林氏
 Sペンは、気にする人と気にしない人で、はっきり分かれるよね。

佐藤
 個人的には、Sペンは気にならないですけど、インカメラがパンチホールになったのが気になります。

石野氏
 パンチホールが許せない派閥と、Sペンは必要派閥がいて、内紛状態になっていますよ(笑)。

法林氏
 UDC(アンダーディスプレイカメラ)は、モジュールを作っているメーカーが、やめたんじゃないかなと思っている。継続するなら、自前で作るしかない。

石野氏
 UDCに関しては、画質が悪かったので、パンチホールになってもいいかな。

石川氏
 サムスンとしては、ビデオ通話をするときに、画質が悪いというクレームが多かったという話をしている。

石野氏
 その話は納得できます。一方で、Sペンに関しては納得できない。

法林氏
 この薄さを実現するためには、しょうがないよね。

石野氏
 そうですね。Sペン非対応にも目をつぶれるくらい、衝撃の薄さではあります。Sペン派の人のために、いろんなペンで試したんですけど、静電容量式の、ゴムタイプのものとかは使えます。でも、バッテリーで磁気を発生させるタイプのものはダメでしたね。

法林氏
 いわゆる、初期のスマートフォンやiPadなどで使われていた市販品のペン先がゴムタイプのものならって感じだよね。そもそも、別に指で書けばよくない?

石野氏
 いやいや、全然違いますよ。あと、Amazonで売っていた細い金属のタッチペンなら、メモ書きくらいは普通にできました。

石川氏
 そもそも、手書きでメモを取る時代じゃない。音声でメモをとって、AIに流すという使い方でいい。Galaxy AIも、そういう使い方になっていくんじゃないかな。

石野氏
 でも、Galaxy Z Fold8になったら、しれっとSペンが復活すると、僕は思っています。

法林氏
 いや、ないんじゃないかな。思い返せば、Galaxy Z Foldが出始めた頃は、Sペンには非対応だったよね。

石野氏
 今回は休止しているだけですよ。本体に格納できなくても、Apple Pencilとかと同じ形で持ち運べればいい。このサイズのタブレットで、専用ペンが全くないのも、それはそれで珍しい。シャオミやOPPOも、タブレットにはペンをセットで販売しているので、Sペンにこだわらなくても、そういうソリューションで出して欲しい。

 あと、サムスンは、タブレットでは周辺機器をそこそこ出していますけど、Foldシリーズの周辺機器がもっとあってもいいですよね。キーボードとかも売って欲しいです。

法林氏
 しかも、発売日には、純正ケースが売り切れている。もっと用意しておかないと。

石野氏
 ケースもそうですけど、キーボードとかペンとか、通電ものが一切ないんですよ。もっと色々やっていいと思います。

法林氏
 何はともあれ、Galaxy Z Fold7の完成度は高いよね。良かったと思う。

石川氏
 久しぶりに、人に自慢したくなるようなスマートフォンです。家族に見せたくなる。

法林氏
 たたんだ状態で、Galaxy S25 Ultraとか、iPhone 16 Pro Maxとかと同じくらいの厚さっていうのは、インパクトがでかいよね。

石野氏
 それでいて、開けるわけですからね。

価格で攻めるPOCOとローカライズに注力するNothing

佐藤
 新製品としては、シャオミから「POCO F7」も発売されましたね。

石野氏
 デザインが特徴的ですね。「Nothingキラー」という感じです。

石川氏
 Nothing潰しもいいところだよね。値段もそうだし、デザインもそう。なんでこの値段で出せるのかと、疑問に思ってしまう。

法林氏
 搭載チップセットのSnapdragon 8s Gen 4が、どれくらいの価格なのかってところだよね。日本では、このチップセットを搭載したスマートフォンが、まだほかにないので。

石川氏
 国内はまだですけど、海外で出ている「Nothing Phone(3)」が、日本円だと大体14万円くらいの計算になります。

(編集部注:8月20日に国内発売を発表)

法林氏
 他メーカーの人もPOCOブランドの搭載チップセットに対する価格の設定はおかしいと話していましたね。

石野氏
 コスパは群を抜いていますよ。

法林氏
 あくまでもチップセットをベースにしたコスト対パフォーマンスという意味。他の部分は差し置いている。

関口
 販路としては、基本はオンラインで、一応直営店からも買える形です。

石野氏
 端末としては、おサイフケータイ機能も非搭載ですし、気になるところはありますよね。そういう意味では、同じく新発売になった、Nothingの「CMF Phone 2 Pro」は、考えられています。

法林氏
 考え方が違うよね。POCOはとにかくコスパ重視。スペック的なパフォーマンスに振っている。

石野氏
 なるべく安く、なるべく重いゲームをこなせるっていうニーズはありますよね。

法林氏
 一定のニーズはあると思うし、先に発売している、Snapdragon 8 Eliteを搭載したPOCO F7 Ultraが10万円弱で売られている中で、あえて刻んだスペック、価格のモデルを出すのかという驚きはありましたね。

石野氏
 ファンの人も、なかなか差がわからないですよね。

法林氏
 伝わりにくいよね。シャオミとしてはグローバル向けを含め、コスパのいいモデルを多数展開して、存在感を高めたいという思いが強いんだと思う。

石川氏
 手当たり次第端末を出しているような状況なので、ユーザーからすると、いつ買えばいいのかわからないですよね。

石野氏
 少ししたら、Xiaomi 15Tシリーズも出るはずですしね。

関口
 コスパで攻めるPOCOに対して、NothingのCMF Phone 2 Proはどうですか。

法林氏
 同じ価格帯で、もう少し防水がしっかりしているモデルとかもあるけど、個人的には、結構いいと思う。eSIM、おサイフケータイ対応だし、対応バンドも広げている。

石野氏
 グローバルは、eSIM非対応ですからね。日本市場向けに頑張っています。eSIM対応は、楽天モバイルでの採用のためにあえてやったのかなと考えられます。

法林氏
 背面素材は、ガラス仕上げに比べると、ちょっと安っぽさはあるけど、日常使いにはいい仕上がりだし、カラーバリエーションにも個性がある。サブ端末みたいな使い方も、全然ありだと思う。

石野氏
 ファーストスマートフォンにも良さそうですよね。バランスも良くて、スペックが低すぎて使いにくいといったこともなさそうですし、おサイフケータイ機能も使える。素材感もいい。CMF Phone 1に比べると、背面パネルを付け替えるといった、クラフト要素みたいなのがなくなっていますが、その分薄くなったり、ストラップの付け替えができたりします。後ろにつけるストラップのバリエーションは、もう少し欲しいですね。

石川氏
 やっぱり、キャリアと仲良くするのは大事だなと思いましたね。

法林氏
 SIMフリーが増えたとはいえ、まだまだ8割以上はキャリアモデルがシェアを持っていると思う。あと、楽天モバイル視点で言えば、こういう個性的な端末を揃えるのは、いい傾向だと思う。問題は、しっかりと端末を売っていけるのかだけどね。

石川氏
 相変わらず、端末ラインナップは物足りないですからね。

関口
 Rakuten AI Optimismの、楽天モバイルブースにも、CMF Phone 2 Proは展示されていましたね。

法林氏
 楽天で言えば、楽天市場に、サムスンの公式ストアが8月1日からできた。公式ストアが楽天市場にあると、楽天カードも使いやすいし、ポイントも貯まるからいいよね。Galaxy Z Fold7とかの予約キャンペーン期間に開いていれば、もっと良かったけどね。

石野氏
 ポイントは結構でかいですね。

法林氏
 あと、ポイントという意味では、楽天リーベイツがお得だし、この前、サムスンの公式ストアにも対応していた。頻繁にチェックした方がいい。

関口
 楽天リーベイツ経由で、サムスンの直販サイトに行くということですね。

石野氏
 アップルとかも、結構ポイントが返ってきますからね。

法林氏
 それぞれのメーカー直販サイトから何かを買うときには、とりあえず楽天リーベイツをチェックした方がいいよ。

関口
 新端末に話を戻すと、日本では発売されていませんが、「HUAWEI Pura 80 Ultra」はインパクトがありましたね。

法林氏
 特徴的なのが、約1インチのセンサーで、ペリスコープ式カメラの内側で、プリズムを移動させることで、焦点距離の切り替えができる望遠カメラ。ステージに立っている人を、三脚に固定した端末で撮影したけど、結構綺麗に撮影できた。推し活スマートフォンみたいなイメージだね。

石野氏
 結構綺麗に撮れていますね。

法林氏
 新しい方向性として、望遠カメラに大きいイメージセンサーを搭載して、高倍率で撮影するというのは、今までになかった。結構面白いよね。カメラモジュールを作る技術がないとできない。

関口
 日本メディアを呼ぶということは、日本でもう一度スマートフォンを展開したいという思いがあるんですかね。

法林氏
 技術力があるというアピールはしたいんでしょうね。

石野氏
 日本では出ませんけど、ファーウェイ自体は、グローバル展開をまた始めていますよね。三つ折りスマートフォンもそうですけど、東南アジアなどでも販売しています。中国以外で売る端末は、AndroidベースのEMUIになっているので、こっそりAndroidアプリをインストールできてしまう。

法林氏
 アジア圏では、ショップでグーグル系のアプリを入れてから売っているところもあるみたいだね。

Xperia 1 VIIは初期不良で回収騒ぎに

佐藤
 ソニーの「Xperia 1 VII」で、一部端末に電源が落ちる、再起動がかかる、電源が入らないといった事象が発生したことで、製品交換対応が行われています。

石川氏
 Xperiaは、ここ数年で立て直しを頑張っていました。2年くらい前までは、かなりマニアックな端末で、わかりにくいUIとか、なぜかカメラアプリが3つあるといった状況だったのが、ここ1、2年では、ライトなクリエイターに向けて、わかりやすくなってきていた所でのトラブル。正直つらいですよね。

石野氏
 今回のモデルは、タイにあるソニーの工場ではなく、中国の工場で製造されていることも話題になりました。その工場で出荷している端末が、毎回不具合を抱えているというわけではないし、ソニーも元々自社以外の工場は使ってきたとは思うんですけど、フラッグシップモデルを別の工場で作るにあたって、ちゃんと手綱を握れていたのかと、疑問符がついてしまいます。

法林氏
 フラッグシップモデルは、構造的にも難しくて、手間がかかる。中国の工場で、今までもそこまで複雑な製品を作っていたのかはわからないし、今までと違う工場で製造するというのは、やっぱり大変だよね。

石野氏
 その工場が原因かはわからないですけどね。ただ、工場を変更して1つ目の製品でトラブルが起きてしまったので、品質管理面で関連性を疑われてしまうのは、仕方ありません。

法林氏
 中国製だからとか、iPhoneをアメリカで作れとか、色々な話は出ているけど、結局は製造をどうコントロールするかという話。今回は見落としがあったのかもしれないし、工場側も、甘く見ていた部分があるのかもしれない。

 Xperia 1 VIIは、前モデルと比べると、値段が高いという不満はあるけど、カメラの見せ方とかがよくなっていたので、ちょっと惜しい。

石野氏
 ただ、Xperiaとして、年間2モデルしか出ないうちの1モデルなのが厳しい。

法林氏
 しかも高いモデル。

石野氏
 そうですね。赤字にならないことを目指して経営していたのに、こういうトラブルが起きてしまうところを見ると、もう少しバッファーが必要だったのかなと思います。

石川氏
 コストを下げるために製造場所を変えたんだとすると、ちょっともったいないよね。

法林氏
 あとは、取り扱いキャリアがどう思うか。

石野氏
 キャリアからしても、いい迷惑という感じですよね。

法林氏
 期待値は高かったと思うし、Xperiaはやっぱりブランド力があるからね。

石川氏
 周りを見ていても、「Xperiaだから買い換える」といった、ブランドのファンはいる。これを裏切る形になってしまいました。

関口
 ケータイWatchでも、Xperia関連の記事はよく読まれますね。ブランド力はすごく感じます。

法林氏
 この問題は、ソフトウェアの話ではなく、ハードウェアの問題なので、製品を交換しないといけないというのがダメージが大きい。誰が責任を被るのかという話はあるし、キャリアとしても3社が採用しているように、それなりに見込みはあったはず。

石野氏
 あと、海外にも影響が出てしまっていますね。

関口
 個人的には、交換対象端末の確認プログラムにも不具合が出てしまったのが、気になりました。弱り目に祟り目というか、ミスとしては軽微なものかもしれませんが、タイミングが悪いですよね。

石野氏
 あえてポジティブな話をするのであれば、回収対応になってから、原因を特定するまでは早かったですよね。

石川氏
 なんとなく当たりはついていたのかもよ? 社内にも使っている人はいるはずだし。

法林氏
 完成形というか、最終版に近いものが発売の1ヶ月前くらいにはできているはず。それを使ってみて、発覚することはなかったのかな。

石川氏
 インフルエンサーにしか、レビュー用端末を貸さないからですよ。メディアに貸してたら、発見していたかも。

石野氏
 とはいえ、発見しようと思って見つかる不具合ではないですからね。

法林氏
 メディア関係者はヘビーにモバイル回線で試す人が多いから、これほどの不具合なら、見つかりそうなものだけど、製造のどの段階で起きた不具合なのかはわからないから、なんとも言えないね。

 とはいえ、電源が落ちるとか、再起動がかかるといった不具合は、事前に見つけてほしいよね。使っていればわかるはず。特定ロットの基板に不具合があるのかもしれないけど。

石川氏
 どれくらいの割合なんですかね。SNSで見ていると、有名どころのYouTuberやインフルエンサーはみんな買っていて、みんな回収されている。

石野氏
 結構多そうですよね。

法林氏
 「一部の製造ロットにおいて」という表現が気になるよね。

石野氏
 仮に9割でも一部ですからね。

関口
 発火とかではなかったのが、せめてもの救いですね。

石野氏
 そうですね。発火とかになると、欠番になってしまったGalaxy Note 7を思い出してしまいます。

モバイルバッテリーの取り扱いはどうするべきか

関口
 電源関連という意味では、モバイルバッテリーの問題が最近話題ですね。一般のニュースで広まってきていますし、電車が止まったといった話もありましたが、こういう出来事自体は、前々から言われ続けています。では、どうしたらいいのかという話ですよね。

石川氏
 答えがないですよね。

法林氏
 確かに答えは出ないんだけど、テレビでこのニュースの解説をしているのを見ててもほとんどのスマートフォンが衝撃からバッテリーを保護するための内部構造になっていることを説明している人がいないのが1つの問題。

 モバイルバッテリーは、スマートフォンのような衝撃テストを行なっているものがほとんどなくて、落下させたらアウトだし、カバンの中にある状態で、カバンを強くぶつけても、多分アウト。こういう部分がちゃんと周知されていない。もっと言えば、試験もしていなくて、バッテリーを包むだけで製品化しているようなものもある。

 この辺りは、スマートフォンとは全然、違う。スマートフォンから絶対に発火しないとは言わないけど、試験はしっかりと行われている。

石野氏
 スマートフォンも、激しく落とし続けていたら、発火する可能性はありますよね。

法林氏
 もちろんゼロではない。どちらにしろ、落下させる、衝撃を与えるという行為は良くないので、しっかりと周知してほしい。

石野氏
 そういう意味では、ディスプレイが割れているスマートフォンも、バッテリーに影響があるかもしれないので、使い続けるのは危険ですよね。

法林氏
 あと、近年のスマートフォンは、温度管理がしっかりしていて、本体が熱くなったら、クロックを落とすといった制御をしている。スマートフォンで、そこまで酷いことには、なかなかならないと思う。

石野氏
 どちらかというと、粗悪な充電器を使った結果、問題が起こるといったケースが多いですよね。

石川氏
 スマートフォンは、充電の制御もしっかりとされている。microUSBが主流の頃は、管理が甘い部分があったけど、USB Type-Cになって、管理はかなり厳しくなって、いろんなアダプターを繋いだり、ワット数が違っても、しっかりコントロールされている。

 スマートフォンはレベルが違うというか、明らかにモバイルバッテリーはレベルが低い。有名なメーカーだから安心というわけでもないし、高い製品だから品質がいいというわけでもなくて、落としたら影響は受ける。

法林氏
 iPhoneがLightningを採用していたのは、元々の規格に、粗悪なサードパーティ製品が多かったから。あのやり方は1つの正解だと思うし、その後USB Type-Cに統一されたことで、制御の仕組みも含めて、しっかり作り込まれている。

 リチウムイオンは、モバイルバッテリーの問題もあるし、今はハンディファンも問題だよね。

石野氏
 ハンディファンも、構造的にはモバイルバッテリーにファンをつけたようなものですし、より頻繁に外に持ち出すので、落とす確率は高まります。

法林氏
 Galaxyのモバイルバッテリーとか、シャオミのモバイルバッテリーとかは、頑丈に作られていそうなので、確約はできないけど、まだいいかなと思う。あと、寿命的に考えても、microUSBで充電しているような古い製品は、早めに手放した方がいい。

石川氏
 問題は、どう手放せばいいのかというところですよ。

法林氏
 そこだよね。回収の仕方は自治体によってバラバラだし、JBRC(小型充電式電池のリサイクル活動を推進する一般社団法人)が請け負うといっているけど、以前JBRCの回収ボックスがあるお店に製品を持っていったら、新しい製品を買ってくれたら、回収すると言われた。こういうお店も結構あります。

石川氏
 回収方法は、もう少しどうにかしないと、どんどん家に溜まっていく一方になる。

法林氏
 環境省がリチウムイオン電池やモバイルバッテリーなどを自治体が回収するようにという指示を出したけど、実際に自治体に問い合わせると、対応していないことがまだまだある。

石野氏
 まだ浸透していませんよね。

法林氏
 スマートフォンに関しては、モバイルリサイクルネットワークがあるので、充電器なども含めて、キャリアショップで回収してくれる。ただ、回収してくれるのは、キャリアが販売したものに限定されていて、SIMフリーモデルは回収してくれない。

関口
 ハンディファンもそうですし、最近は空調服と呼ばれるものもありますよね。特に空調服は、乱雑に扱われる機会も多そうなので、心配です。

石野氏
 元々、現場仕事で使われることを想定したものですからね。

法林氏
 バッテリーが必ず燃えるというわけではないけど、リチウムが使われているものは、格段にリスクが上がる。

関口
 一定周期で買い換えるといった意識は必要ですよね。

法林氏
 でも、ニッケル水素電池が使われているものは、そこまでリスクがないからね。

石野氏
 あと、そもそもですけど、モバイルバッテリーってそこまで便利ですかね。最近は充電速度が早いものもありますけど、常にケーブルで接続していないといけなかったり、充電中はスマートフォン本体が熱くなってしまって、操作性が悪くなったりします。

 おすすめは、やっぱり2台持ちですよ(笑)。

石川氏
 スマートフォンを複数台持つのが、一番いいよね。

石野氏
 そうですよ。2台と言わず、3台くらい持っておいて、バッテリーが減ってきたら、使う端末を変えればいい。そうすれば1日は持ちますよ。

石川氏
 モバイルバッテリーを持ち歩くのも面倒だし、複数台を持ち歩いていた方が安心だよね。

石野氏
 お金はかかりますけどね。

法林氏
 そもそも日本は電源事情が良くて、どこでも充電できるので、モバイルバッテリーは必須じゃないと思うけど、みんな持ちたがるよね。

石野氏
 僕はUSB PDのアダプターを必ず持っていて、これに加えてスマートフォンが3台あれば、モバイルバッテリーは必要ないです。

石川氏
 前にメーカーの人に聞いたら、海外では、とにかく早く充電ができればいいという発想になるけど、日本人は、バッテリー残量が残っている方が安心らしい。だからこそ、モバイルバッテリーの需要が大きい。

法林氏
 昔のケータイも含めて、充電して動くものを使っている人は、バッテリー残量がなくなる恐怖がわかっているので、バッテリー残量が多い状態で保っておきたいという気持ちはわかる。

関口
 僕は仮に複数台のスマートフォンを持っていても、モバイルバッテリーは欠かせないですね。

法林氏
 遠出をするときは持っているけど、出先でも大概充電できる環境があるのに。

佐藤
 LINEが1端末でしか使えないイメージなので、1台のバッテリーを維持したいという人が多いんじゃないですかね。

石野氏
 でも、LINEもサブ端末の設定ができるようになったので、iPhoneとAndroidを持っていれば大丈夫ですよ。

石川氏
 LINE専用のスマートフォンを1台用意しておいてもいい。

法林氏
 モバイルバッテリーに関しては、政府がもう少し本気で取り組んで、自治体による差がないようにしないと。この前も埼玉県戸田市でゴミ焼却場が燃えて、ゴミの回収ができなくなったりしていたけど、これもモバイルバッテリー起因だと思う。

石野氏
 モバイルバッテリーを買う時も、Amazonとかで怪しいメーカーのものを買うのではなく、ヨドバシカメラとかビックカメラとかで、ポイントカードを紐づけておけば、回収の連絡がきます。個人的にはスマートフォン3台持ちがおすすめですけど、モバイルバッテリーを買うのであれば、責任を持ってくれるところから買うべきです。

 3台持ちは難しいかもしれませんが、スマートフォン2台とiPadでもいいんですよ。そうすれば、LINEは3台共通のアカウントで入れますしね。

石川氏
 あと、ポータブル電源も困っている。2021年に災害対策で買ったけど、全然使っていなかった。この前久しぶりに使おうと思ったら、コンセントの部分が壊れていて、メーカーに問い合わせたら、サポート期間が終わっているからといって、直してもくれなかった。

石野氏
 それは酷いですね。

法林氏
 他にもあって、バッテリーが交換できるノートPCもある。交換できるのはいいけど、古いヘタったバッテリーはどうするのかという話になる。

石川氏
 もっと社会問題化した方がいいですよね。

法林氏
 そうだね。ちゃんと体制を整えないと、家とかビルが丸ごと燃える時代が来てしまう。

関口
 リチウムイオンを使う製品が格段に広がったことで、問題が表に出てきていますよね。

石野氏
 日本でも燃えていますし、中国でも一部持ち込みが禁止になったりとか、国際線でも積み込みを厳格化していたりとか、グローバルで同時期に問題になり始めています。

関口
 日本では、国内便の持ち込みが厳しくなって、座席の上の収納棚にしまってはいけないというルールになりましたね。韓国では、飛行機内でモバイルバッテリーを紛失して、飛行機が引き返したというニュースもありました。

石野氏
 これも近年、結構問題になっていますよね。バッテリーに限らず、スマートフォンを機内で落としてしまって、見つからないから引き返すとか。

関口
 スマートフォンだと、Galaxy Note 7が発火する問題が起きてから、かなり厳しくなりましたね。

法林氏
 あの事故があってから、スマートフォン業界の人たちは、慎重になった部分はある。

石野氏
 サムスンはいまだに、急速充電の速度をあまり上げていないですよね。そこだけは、中国メーカーに追従しないで、安全に安全を重ねている。Galaxy Note 7は再販もしていないので、損失を取り戻しようもなかった。

法林氏
 あれ以来、バッテリーの設計は、各メーカー慎重になっているよね。

石野氏
 シャオミやOPPOが、120Wの急速充電を始めて、最初は心配していましたが、意外と問題は起こっていないですよね。

石川氏
 やっぱり、USB Type-Cになって、格段に事故は減ったと思う。

法林氏
 本当にそうだよね。

関口
 モバイルバッテリーだけでなく、ハンディファンのように、リチウムイオンバッテリーを使う製品がこれだけあると、今すぐ無くすことはできないですよね。ユーザーとしては、どうするべきですか。

石野氏
 経産省とか消費者庁にリコールで届出を出しているメーカーは、絶対安全とは言わないまでも、安心度合いは高いかなと思いますね。

法林氏
 結局、政府に仕事をしてもらうしかない。無条件で回収をする仕組みを作らないとだめ。消費者に対しては、落としたら危ないと周知する必要があるし、ユーザーは充電中に熱を持っていることを感じたら、使わずに処分するべき。

関口
 使わずに置いておくだけでも危ないんですか。

法林氏
 置きっぱなしというよりは、やっぱり電気を流した時だと思う。

石野氏
 そうですね。電気を流したり、落下のような衝撃を与えてしまったタイミングで、事故が起きる。

石川氏
 ただ、放っておいたら膨れ上がったりもするので、これも怖い。

法林氏
 突き詰めると、スマートフォンでもバッテリーが膨れた古い端末はどうするのかとかが、いまいち周知されていない。キャリアモデルであれば回収してくれるので、迷わずに持っていくべき。キャリアとしては、端末を持ってきてくれた人に、ちょっとくらいポイントをあげるとかいうルールにしてもいい。

石野氏
 一時期やっていましたけど、もっとやって欲しいですよね。

法林氏
 あと、駅前に回収ボックスを作ったっていいよね。