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第94回:VoIP とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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ネットで音声を運ぶVoIP
「VoIP」とは、「Voice over IP」(IP上の音声)の略で、「IP」は「Internet Protocol」(インターネット手順)のことです。つまり、インターネットで使われているデータ伝送の仕組みを利用して音声をやりとりし、通話することをいいます。
簡単に言えば、VoIPの仕組みを使った電話では、電話器を使って「もしもし」と話しているその向こう側の仕組みが、従来の電話回線や交換機がある電話の仕組みではなく、ゲートウェイやルーターなど、インターネットでもおなじみの機器と、IPを使ってデータを運ぶ「IP網」になっているのです。
IP網は、IPを利用したネットワークのことで、その名前の通りインターネットやイントラネット、LAN、IPが利用できる専用線である、というようなこともあります。このようなネットワークの仕組みを利用した電話は、現在では構内の内線から国際電話までいろいろな場面で利用されています。みなさんも知らず知らずにうちのその恩恵を受けているかもしれません。
VoIPの代表的な規格としては、国際電気通信連合(ITU-T)勧告による規格「H.323」や「NOTASIP」などがあり、これに準拠したインターネット電話なども既に登場しています。
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VoIPは、IP上で音声データを利用する仕組み。IP網(インターネットやイントラネット、LAN)にゲートウエイ装置経由で電話機などを接続したり、あるいはパソコンなどから通話を行なう
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メリットは運用効率・低コスト。品質を保てるかが問題
VoIPと、一般回線による電話との違いは、まずVoIPがインターネットで一般的な仕組みを利用しているために、低コストで済むということでしょう。その理由のひとつとして、VoIPでは「データをパケット単位でやりとりする」ために、効率よく回線を使えることが挙げられます。
IPでは、データをある一定の大きさの固まり、パケット単位に区切って送ります。そのため、同じ回線に複数のデータを送ることができます。通常の電話では、通話ごとに1つの回線をそれぞれ確保しますので、他の電話が同じ回線を利用しようとしても、「話し中」になって使うことはできません。
IPはインターネットデータ伝送用の手順ですから、音声だけでなく、本来のインターネットで使われるような、例えばWebのデータやメールのデータ、画像データなどと相乗りして同じ回線を利用することもできますから、結果として、VoIPは利用の仕方によっては回線網を非常に効率よく使うことができ、通話料を格段に安くすることが可能なのです。
また、VoIPで使われる機器は、インターネットで利用される機器と共通のものが多くあります。最近では、インターネット用の機器はその爆発的な普及で非常に安価なものもあります。選択肢としては、このようなものを利用して、一般の電話回線や構内電話を利用するよりも設備費用を安くあげる、というようなことも可能です。
ただ、VoIPにも弱点はあります。それは、そのままでは通話品質が保証されない、ということです。通常の電話では、電話をかける先までは回線が占有できます。つまり、ハードウエアの故障などがない限り、声が途切れたりするようなことは起こりにくいわけです。
VoIPの場合、データはひとつの回線を相乗りで利用しています。また、回線の状況によってはあるデータだけは迂回して届く、というようなこともあり得ます。ということは、例えば迂回して届いたデータだけがタイミング的に遅れてしまったり、場合によっては受け取り側が「データが届いていない」と思ってしまうことがあり、これが音声の遅延や途切れ(「プツッ」という音がしたり一瞬無音になる)となって現れてしまうのです。
パソコンなどからデータをダウンロードするような場合では、多少遅れがあってもそれほど気にならないものですが、音声のやりとりでは、ゼロコンマ数秒でも遅れや途切れは気になってしまいます。
もし、音声の品質を確保しなければならないような場合は、このような問題が起きないように充分容量に余裕のある専用線を利用するなどして、「QoS(Quality of Service)」(品質)の確保に努める必要があります。実際にIP網を通話に利用している事業者の中には、そのような工夫をしている場合もあるようですが、その場合だとコストもまたかかりますので、この辺は品質と価格のトレードオフということになるでしょう。
モバイルにもやってきたVoIP
現在では、VoIPが有線の電話や構内電話、長距離電話の新しいサービスとして、見えるところ見えないところ、様々な場面で利用されています。例えば、わかりやすいところでは、IP電話(いわゆるインターネット電話)があるでしょう。
現在、いろいろなインターネットサービスプロバイダーなどが、インターネット回線を使ってパソコンから一般家庭に電話ができるようなサービスを提供しています。例えば、インターネットのブロードバンド接続サービスを提供している「イーアクセス」では、パソコンのWindows Messengerを利用して、パソコンから一般電話に電話がかけられるサービスを提供しています。
ちなみに、このタイプのIP電話は、総務省が「050」で始まる11桁の電話番号を割り振る方針を発表しており、いずれは着信やその他のサービスなども一般の電話と遜色なく利用できるようになるかもしれません。
また、モバイル系の分野でも、VoIP絡みで様々なサービスの兆しが活発になってきています。例えば、そのひとつに鷹山が発表した「Bit Phone」というモバイルIP電話サービスがあります。これは、今春から実験が開始されている、PHSとページャー、無線LANを組み合わせた使い放題のモバイルIP電話サービスです。
街角や屋内に、IP網へ接続したステーション(Bit Stand、Web Distributer)を設置して、PHSはそこで事務所コードレスモードの子機として設定します。PHSでの通話はステーションまでは内線電話、ステーションから先はVoIPを利用するという仕組みなので、非常に通話を安くあげることができるのです。
鷹山の発表によれば、このサービスは今年の春から実証実験が開始され、今秋には本格的なサービスをスタートさせるようです。
・ 鷹山
http://www.yozan.co.jp/
・ 鷹山、PHS・無線LAN・ページャーを組み合わせたIP電話サービス
(大和 哲)
2002/06/04 11:54
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