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第51回:有機ELディスプレイとは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 有機ELディスプレイとは
有機ELディスプレイパネルは小型機器の機器のディスプレイとして使われる、新しいデバイスです。現在、パイオニア製の有機ELパネルがカーステレオの一部に、またTDK製のものがアルパインのカーディオで使われています。携帯電話関係では、パイオニア製のモノクロのものが米モトローラ社製の携帯電話に利用されています。
そして、2001年、2002年からいよいよ携帯電話に本格的なカラー有機ELパネルが登場する予定となっています。展示会では、東北パイオニアから携帯電話用としては2.1型と1.6型の4096色表示のカラー有機ELディスプレイが、また三洋電機からもアクティブ型とパッシブ型の携帯電話用カラー有機ELディスプレイが出展され、好評を博しました。
実際の製品としては、たとえば、三洋電機の製品の場合、展示会で展示されていた有機ELパネルが、パッシブマトリクスのものが2001年、アクティブマトリクス型は2002年に量産が開始される予定になっています。
■ 有機ELディスプレイの特長
有機ELディスプレイの特長は、パネルそれ自体が光る、ということです。
有機ELディプレイのELはElectro Luminescence(電界発光)の略で、その名前の通り、電気的な刺激を受けると電界発光効果によって「それ自身が光を放つ」素材を使っています。
ちなみに、これに対して、現在、ほとんどの携帯電話の表示部分に使われている液晶は、電気を通す事で光を「通さなくする」ことで画像を表示するため、画像を見せるためにはバックライトや反射型液晶では太陽光などのほかからの光が必要です。
イメージ的には、液晶と有機ELの違いは月と太陽の光り方の違いだと思えばいいでしょう。そのような理由もあり、有機ELディスプレイは非常に明るいデバイスです。
有機ELパネルを使った携帯電話では、液晶を使った携帯電話と違って暗いところでも明るくコントラストのある、鮮明な画面になります。
現在、展示会などで参考出品されている有機ELパネルは50cd(カンデラ・明るさの単位)から200cd以上で、通常の携帯電話向けに使われているカラー液晶パネルの10cdですから、実際にご覧になればその違いは一目でわかることでしょう。
また有機ELパネルには、液晶を使ったパネルと違って、応答速度も早く、視野角がとても広い、という特長もあります。つまり、動きのある画像を写してもブレることがなく、どんな角度から携帯電話を見てもはっきりした画像を見ることができるようになります。 有機ELパネルは、液晶画面にあるデメリットを克服でき、将来の携帯電話向けの動画配信などにも対応することができるため、実用化への期待が高まっているデバイスなのです。
■ 有機ELパネルの仕組み
有機ELパネルは、多くの場合、電極(アノード、カソード)、電子輸送層・正孔輸送層、発光層などの複数の層からできています。これらに、ジアミン類などの有機物が使われるので「有機EL」と呼ばれています。
有機ELの開発は1987年に米イーストマン・コダック社のタン氏とスライク氏の発表によって始まりました。有機ELはまだスタートから十数年しかたっていない、若いデバイスなのです。
さて、有機EL素子に直流電流を流すと-極からは伝導電子が、+極からは正孔(原子と原子のつながりの中で電子が欠けた部分)が出会います。この電子と正孔が結びついて「励起子」となるときにこの時に発生したエネルギーで有機材料がエレクトロルミネッセンスと呼ばれる光を放ちます。これによって、EL素子が発光する、というわけです。
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有機ELの発光の仕組み(概念図)。有機ELの構造は比較的簡単で、発光層を中心としたELパネルに直流電流を流すことで発光させることができる
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■ 有機ELにも「アクティブ」「パッシブ」型がある
夢のようなデバイス、有機ELディスプレイですが、いくつか弱点もあります。
まず、物理的な寿命が他の素材に比べて短くなりがちである、ということがあります。有機ELに使われている、炭素や水素などから構成されている有機材料は、特に電流を流す、切るを繰り返した場合非常に材料が劣化しやすいのです。また、有機ELにはそれぞれの画素にばらつきがでやすく、特に画面が大きくなった場合は輝度ムラなく画像を再現するためには工夫が必要であることなどの事情も存在しています。
いくつかのメーカーでは、寿命などの問題に関しては、有機ELを「アクティブマトリックス」型にすることで解決しようとしています。液晶ディプレイでもTFT液晶、TFD液晶など、アクティブマトリックス型の液晶パネルがありますが、有機ELでも同様に低温ポリシリコンTFT(薄膜トランジスタ)で、画素ごとに薄膜上にトランジスタを含む回路を作って、このそのスイッチング機能を利用してELの制御の補助をさせるのです。
実は、アクティブマトリクス方式でない有機ELディスプレイ(パッシブ方式)では駆動中は常に画素を点灯しているわけではなく消灯点灯を繰り返し、人間の目の残像効果を利用して画像を一枚の絵のように表示しています。アクティブ型では点灯中の画素はスイッチングによって常に点灯されるようにあり、その分低電圧でも高い輝度になり、消費電力を少なく、有機ELパネル自体も耐久性も持たせることができるようになるのです。
ちなみに、有機ELディスプレイでは、回路的にはEL素子がダイオードと等価となり、トランジスタも電圧駆動型でなく電流駆動型となるため、利用されるTFTの中でもポリシリコンTFTが利用されます。
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・ [LCD/PDP] フルカラー有機ELディスプレイは2002年に実用化へ
(大和 哲)
2001/07/10 00:00
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