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第330回:HSPA+ とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


HSPA+とは

3月にクアルコムが披露したHSPA+のデモ

3月にクアルコムが披露したHSPA+のデモ
 「HSPA+」は、W-CDMAなどの3G携帯電話の通信規格などの標準化を行なっている、標準化プロジェクト「3GPP」の定める標準規格の1つで、HSPAを基盤にさらに発展させた通信方式です。

 「HSPA+」という名称は、High Speed Packet Access Plus の略で“さらに高速なパケット通信”といった意味になります。ほかにも「HSPA evolution」、「eHSPA」と称されることもあります。

 「HSPA」は、W-CDMA方式のうち、下り回線のデータ転送レートを高速化したHSDPA、同じく上り回線も高速化するHSUPAの総称です。つまり、HSPA+は、HSDPA/HSUPA(HSPA)を拡張した規格ということになります。


HSDPA/HSUPAの発展規格、LTEまでのつなぎとして

 HSPA+の特徴を一言で表わすと、「HSPAの基盤をそのまま利用した第3世代を進化させた高速通信」です。あるいは「性能的にはHSDPA/HSUPA以上、LTE(Long Term Evolution)未満」ということになるでしょうか。

 HSDPAは3GPPの規格で、W-CDMA方式の「Release 5」で規格化された方式です。基地局→端末への下り通信速度が最大14.4Mbpsにできるとされています。一方、HSUPAはW-CDMA方式の「Release 6」で規格化された方式で、端末→基地局への上り通信速度が最大5.76Mbpsの高速データ通信が可能となっています。

 また、LTEは、W-CDMAの発展形として100Mbps以上の通信速度を目指す方式とされ、4Gに向けた3.9Gに位置づけられています。

 「HSPA+」は、W-CDMAの「Release 7」として2007年中に標準化されると見られている方式です。チップセットメーカーの米クアルコムでは今年2月に「2007年中に下り28Mbpsの基地局用チップセットを提供し、通信事業者は2008年中に商用サービスを開始できる」と発表しています。

 LTEは、変調方式も変わり、データ転送がIPベースに、帯域やサービスに対するフレキシビリティの向上が重要視されるなど、基本的な部分からこれまで利用されてきた携帯電話のデータ通信方式とは異なります。そのため、実用化までの時間がかかると考えられたため、LTEとHSPAの間を埋めるためにHSPA+が標準化されたという経緯があります。

 HSPA+は、LTEと異なり、技術の基本的な部分はHSPAそのものであり、データの送受信用に複数のアンテナを使用するMIMO、受信側では64QAM変調、また送信側では16QAM変調方式を利用し、HSPA同様回線品質やユーザー配分に応じて最適な変調方式や転送速度が適応的に選択することで高速なデータ通信を行ないます。しかも、W-CDMAと同じスペクトラムであるため、同じ周波数帯の中にW-CDMA、HSPAでの通信と混在させることができます。その意味では、W-CDMA、HSDPA、HSUPAといった方式との親和性や、互換性も高く、キャリアにとっては導入しやすい方式であるといえるでしょう。

 ちなみに、HSPA+は、これまでの方式にくらべて、遅延の減少、接続回線の増大、それに電力制御などの性能が向上するよう考えられているので、端末側もこれまでのHSPA端末に比べて低消費電力で長持ちする端末を開発できる可能性もあります。



URL
  3GPP
  http://www.3gpp.org/

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(大和 哲)
2007/07/10 13:01

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