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IPS液晶を搭載するW52H
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「IPS方式」とは、液晶パネルの駆動方式の1つで、この方式を採用した液晶パネルを「IPS液晶」と呼んでいます。「IPS」とは、平面内でのスイッチングを意味するIn-Plane Switchingの略です。
IPS方式の液晶技術は、日立製作所から1995年に発表されました。現在、同方式は日立ディスプレイズが携帯電話向け小型高精細液晶として製造し、市販の携帯電話に採用されているほか、日立ディスプレイズや松下電器、東芝などが出資するIPSアルファテクノロジ社が、海外ではLGフィリップス、Hannstarらの販売するテレビなど、大画面の液晶ディスプレイで同方式が採用されています。
■ 同一平面上で液晶分子を動かすことで、斜めからでも美しく
IPS液晶パネルの性能上の特徴は、原理的に視野角が広く、斜めから見ても画像が美しく見える点にあります。
液晶ディスプレイでは、ガラス基盤内に挟み込んだ「液晶」を動かすことで、光を通したり、通さないようにし、これによって表示する画像の一点ずつをON/OFFで表現しています。
この「ON/OFF」を実現するためには、液晶は、ガラス基板内にある一定方向に配置されます。
たとえば、TN方式やSTN方式と呼ばれる液晶技術では、光を通す場合に“偏光板”の間を光が通るようになっているため、パネル内の液晶分子は順番にねじれの位置になるように配置されます。そして、ON/OFFを行なうには、偏光板のねじれを作ったり解いたりして、光を通したり通さなかったりするわけです。
しかし、この方式では、見る人の角度によっては、液晶のねじれを通って進む光の方向からずれてしまために、斜めから見ようとしても画像が見えなくなります。
IPS方式では、ディスプレイの左右方向に液晶分子が配置されています。ON/OFFは、同一平面内で液晶分子が回転するように動くことで実現します。つまり、ディスプレイを左右どちらの斜めから見ても、同じように見えます。そして色やコントラストの変化が比較的少ない自然な画像表示になるのです。
ちなみに、IPS液晶は、画素に電流が流れていない、OFFの状態で黒い画面が表示され、スイッチをONにすると光が透過する、いわゆる「ノーマリーブラック」な液晶パネルとなります。
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IPS液晶は、配置された液晶分子が、同一平面上で動くタイプの液晶パネル
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IPS液晶には、いくつかの世代があり、それぞれ別の名前で呼ばれることがあります。
最初に開発製造されたIPS液晶は、液晶分子はいずれも同じ方向に回転するシングルドメイン方式でした。
この次の世代は、電極の配置を工夫することで、液晶分子が位置によって右回転、あるいは左回転させるようになったS-IPS液晶があります。この世代は、前世代に比べて、斜めから見た場合のコントラストが高い特徴があります。LGフィリップスの液晶ディスプレイはこのタイプのIPSパネルを主に製造しています。
その次は、AS-IPS液晶です。電極を透明化することで、前世代に比べて透過率が向上し、あざやかな画面になっています。そして、最新世代のIPS-Proでは、電極の透明化と平面櫛歯構造とすることで、コントラスト比の向上などが実現されています。
■ URL
IPSアルファテクノロジ 技術情報
http://www.ips-alpha.co.jp/technology/ips.html
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(大和 哲)
2007/06/13 13:34
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