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第206回:ASV液晶 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


「SH901iC」のディスプレイはモバイルASV液晶だ
 液晶ディスプレイの開発には、液晶の物理的特性や、構造上の問題でさまざまな困難がありました。しかし現在では、鮮やかで明るく、動画を表示してもぶれない高速応答、それにさまざまな角度から見ても画像が正しく表示できる広視野角への対応といった改良により、現在ではCRTに代わってディスプレイ装置の代名詞のようになってきました。

 ASV(Advanced Super View)液晶は、2000年にシャープが開発した方式で、視野角の広さ、高速な応答性という特徴を持つ、高性能液晶パネルです。

 ASV液晶は、同社の液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」などで使われていることでも知られています。「AQUOS」は画像の鮮やかさ、鮮明さで定評があり、また広視野角でも知られています。自宅で寝そべって見る必要のあるテレビでは、どんな姿勢からでも画像が鮮明に見られるというのは大事なことなのです。

 また携帯電話では、ASV液晶の技術を利用した「モバイルASV液晶」が、ボーダフォンの「902SH」「802SH」、およびNTTドコモの「SH901iC」に使われています。

 モバイルASV液晶は、同社の半透過型液晶パネルの方式として採用されているアドバンストTFT液晶パネルに、ASVの技術を組み合わせた製品で、ASVの応答速度、鮮明さを実現した携帯機器用の液晶パネルです。

 その構造上、ASV液晶ゆずりの高いコントラストを誇っています。従来の一般的なモバイル機器用液晶パネルでは、上や下から画面を覗き込んだ場合は40度程度、左右からは90度程度までが限界だった視野角ですが、モバイルASV液晶では上下左右160度程度の角度から覗き込んでも見えるようになっています。

 モバイルASV液晶は、携帯電話以外にも、ソニーの携帯ゲーム機「PSP」や、オリンパスのコンパクトデジタルカメラ「AZ-1」でも使われています。


花火状に配置された分子で、広視野角を実現

 ASV液晶の技術的な特徴は、配置した液晶分子の向きにあります。

 TN液晶、STN液晶などでは、パネル内の液晶分子が順番にねじれの位置になるように配置されています。そして、スイッチがON/OFFされる際に、ねじれを作ったり解いたりすることで、光の進み方を調整して画像を表示します。しかし、この方式では、見る人の角度によっては、液晶のねじれを通って進む光の方向からずれてしまために、斜めから見ようとしても画像が見えなくなってしまうわけです。

 この「斜めから見る」問題への対策として、これまで液晶分子の配置の方法には、いろいろなやり方が試みられてきました。

 たとえば、TN液晶とは逆に液晶分子をパネル面に垂直に配列するVA(Vertical Alignment:垂直配置)方式、ひとつの画素を4つの領域に分割して4方向に傾けることで上下左右ともに均等の広い視野角を実現するMVA(Multi-domain Vertical Alignment:マルチドメインVA)、液晶分子を回転させるIPS(In Plane Switching)方式、その応用のAS-IPS(Advanced Super IPS)方式などです。

 現在のASV液晶は、方式としてはCPA(Continuous Pinwheel Alignment)という方式を利用しています。原理的にはVA方式の一種で、液晶分子をパネル面から垂直に配列させておいて、これを垂直になるように動かすことで画像を表示します。ちなみに、スイッチOFFの状態で黒い画面が表示され、スイッチONで光が透過します。つまり、いわゆる「ノーマリーブラック」なパネルとなります。

 MVA方式では、セルが4ブロックに分かれていて液晶は4方向に傾きますが、CPAでは画素の中心に向かって傾くようになっています。つまり、分子が花火状に配置されるのです。

 このことによって、視線角度に依存しない画像表示ができ、また高コントラストを実現しています。


ASV液晶の特徴は、液晶分子を「花火」のように全方向に配向させることにある。これにより、広視野角と高速応答を実現している


URL
  シャープ ASV液晶 解説ページ
  http://www.sharp-ssp.co.jp/products/kigyoumuke/monitor/asv.html

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(大和 哲)
2004/12/14 12:49

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