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第275回:SOG とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ ガラス上に作られる電子回路
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東芝松下ディスプレイが「第2回 Display 2006」で展示していた「光ペン入力機能内蔵 SOG LCD」
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「SOG」は、「ガラスに載ったシステム」を意味するSystem-On-Glassの略です。そのまま「システム・オン・グラス」と言うこともあります。その名の通り、ガラス基板上に作られた回路、またはそれを作る技術のことになります。
SOG技術を使うと、ガラス基板上に、さまざまな回路を作りこむことができます。たとえば、現在ICやLSIとして供給されているDACやパワーアンプ、論理回路、マイクロプロセッサ、メモリなどをガラス基板上に作れるのです。
最近では、ICやLSIに相当する回路を液晶パネルやELディスプレイパネルなどのガラス基板上に回路を作りこむ形態が注目されています。SOG技術を使って、液晶ディスプレイに加えて、システム化された周辺回路をガラス基板上に形成することで、液晶制御回路や電源回路、入出力インターフェイス回路、信号処理回路、パワーアンプなどを、1つのガラス基板上に載せたものを、「システム液晶」と呼ぶこともあります。
一般的に、コンピュータや周辺回路を構成しているLSIはシリコンウェハーの上に作られています。液晶ディスプレイの場合、液晶をガラス基板で挟んだディスプレイ部のほかに、LSIなどを配置し、電気的に配線して、ディスプレイパネルとして駆動させるのが一般的です。一方、SOGによる液晶ディスプレイは、通常は別々となっているパーツを一体化しており、一個の部品として扱えるわけです。
このような応用が可能な技術が生まれた背景としては、液晶ディスプレイの高度化があげられます。液晶ディスプレイでは、反応速度や映像品質の改善、それに電力消費の低減のためにさまざまな技術が導入されてきました。
TN液晶やSTN液晶などよりも、高速でコントラストの高い表示を実現するために、ガラス基板上にトランジスタ回路を作り、スイッチングによって実現するTFT液晶が登場しました。初期のTFT液晶では、透明なガラス板の上にアモルファス(非結晶)シリコン膜のTFT素子を形成していたのですが、このアモルファスシリコンは加工がしやすい反面、非結晶体であるという特性から電気抵抗が大きいという弱点がありました。
低消費電力が必要な装置には、ポリシリコンなどでの回路が望まれました。そこで、一般的なガラス基板上でポリシリコンを形成できる、低温ポリシリコンTFTの形成技術が開発されました。ポリシリコンでは、シリコンが均一な結晶配列となり、アモルファスシリコンと比較すると、電子移動速度も高速で十分電子回路としても耐えうるトランジスタを基板上に作ることができるようになりました。
そこで、液晶ディスプレイやELディスプレイ基板に、電子回路を一体化させる、SOG技術が登場することになったわけです。
■ SOG技術は、携帯電話の小型化に貢献
システム液晶を使うメリットとしては、ドライバーLSIなどの回路を減らすことができることなどが挙げられます。
携帯電話のように、数g単位の重量削減が要求される設計では、数個のLSIが削減できれば、装置の小型化や軽量化で大きな意味を持ちます。さらに、部品が多ければ、その分、装置に実装する際、ハンダ不良などで不良品が製造される可能性が少なくなります。不良品減少によるコスト削減も期待できるというわけです。
また、SOGを利用することによって、液晶ディスプレイ部分のトランジスタ回路の高速化と高密度化が可能となるため、ディスプレイの高精細化が可能となることもメリットとして挙げられます。
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(大和 哲)
2006/05/30 11:54
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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