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第244回:静脈認証 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


生体認証の一種

CEATEC JAPAN 2005において、富士通がおサイフケータイと静脈認証を組み合わせたシステムを展示
 認証とは、ユーザーが「機能を使うことが許された本人」であることを確認することです。

 たとえば携帯電話のなかにも、有料メニューの登録などで、本当に利用するかどうか、暗証番号を入力する場面があります。これは「暗証番号による認証」を行なっているわけです。

 静脈認証は、生体認証の一種で、皮膚下に青い筋として見える静脈の血管形状パターンを認証のための情報として利用し、機械に触れている人間が、機能を使う権限をもった人であることを認識します。人間の血管パターンは複雑で、双子の間でも異なっているといわれており、現在実用化されている技術の中でも誤認率は非常に低い技術です。

 血管中を流れている血液には、酸素を運ぶヘモグロビンが含まれています。ヘモグロビンは、肺で酸素を取り込むと「酸化ヘモグロビン」となって動脈に、体の各所で酸素を失うと「還元ヘモグロビン」となって静脈を流れます。還元ヘモグロビンには波長約760ナノメートルの赤外線を吸収するため、この波長の光を当ててイメージセンサーで撮影すると静脈の部分の形だけを知ることができます。

 そこで血管を読み取りたい部分に赤外線を当てて、赤外線イメージセンサーで像を読み取り、コンピュータの計算によって静脈の形が持っている特徴(たとえば、枝分かれの個数や位置)などを、データベースに登録されている情報と照合して、本人確認を行なうのが、静脈認証の基本的な原理です。

 血管は人間の体の隅々を通っており、また、血管を読み取る方法もいろいろ考えられるために、各社がさまざまな方法での静脈認証を研究・開発しています。

 たとえば、読み取る血管の場所に関して言うと、人が気軽に機械に触れられる部分、また、読み取るのに邪魔になる毛が少ない部分ということで、手のひら認証や手の甲認証、指先認証などが、現在実用化に向けて開発されている静脈認証に挙げられます。

 手のひらは、面積が静脈が複雑に絡み合っているため、ほかの部位に比べて、個人を識別する情報を豊富に持っていますが、読み取り部分を大きく取る必要があります。逆に、指先では、読み取り部分を小さくできますが、その分情報量が少なくなる、というような違いがそれぞれの方法にはあります。


盗まれにくい、抵抗の少ない認証方法

 静脈認証には、

・他人に盗まれにくい
・利用者の抵抗感が少ない

といった特徴があります。

 静脈認証は、皮膚の下にある静脈の形を認証のための情報としており、外部からでは形を写したり見たりすることができません。つまり指紋のように他の物にコピーするというようなことが困難で、その分偽造に強いということが言えます。

 ただし、静脈認証は、他の認証方法とは異なる技術面で難しいポイントがある方法でもあります。指先と指の腹とでは太さが異なりますし、寒暖の変化やタバコを吸うといったことなどでも血管が膨張、あるいは収縮します。さらに、赤外線(光)をあてて皮膚下の血管を見る際には、光量の調整が必要になり、指が傾いている場合への対処方法も考慮しなければなりません。

 これらの問題を吸収し、さらに「認証」として実用に耐えうる程度の時間で行なえるパターンマッチングを処理するには、それなりのコンピュータの計算速度と、アルゴリズムの改良が必要になります。

 また、読取装置内に、指先の血管を透けて見られる程度の光を出す光源なども用意しなければなりません。

 そのため、これまで「小型機器に静脈認証を搭載するのは難しい」とされていましたが、マイクロコンピュータの性能向上や、研究開発の進展によって、小型の機器でも実用化が最近可能となってきました。


実用化が進む静脈認証

日立は指先から読み取る静脈認証装置をノートパソコンに内蔵する予定。将来的には携帯向け装置も開発していくという
 生体認証は、これまでさまざまな方式が実用化されてきました。その中でも静脈認証は、これから広く一般への導入が進むことが期待される技術です。

 たとえば、東京三菱銀行では、昨年から静脈認証が利用可能なATMを導入しています。銀行のキャッシュカードは、磁気カード1枚と、4桁の数字からなる暗証番号のみで認証を行なっていたため、セキュリティ的には非常に脆弱です。近年では特に、本来の利用者でない人が口座名義人をなりすまして不正に口座から預金を引き出すといった被害が増えてきていました。銀行で静脈認証が導入されたのは、そういった背景があったわけです。

 携帯機器向けでは、日立製作所が、従来よりも1/20の容積に小型化された「指静脈認証装置」を開発した、と発表しました。更なる小型化を実現することで、2008年度以降に携帯電話へ搭載していきたいとしています。また、富士通は、静脈認証対応の銀行ATMとおサイフケータイを組み合わせる仕組みを「CEATEC JAPAN 2005」で展示しています。


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(大和 哲)
2005/10/05 12:16

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