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第242回:P2Pとは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 「同僚」同士の通信
P2Pは、情報やデータの流通経路から見たネットワークの考え方、ネットワークモデルのひとつです。
サーバーのように決まった情報の集積場所、発信場所を持たず、末端の情報利用者同士で直接情報をやりとりします。
読み方としてはそのまま「ピー・ツー・ピー」が多いですが、この単語の本来の意味から「ピアー・トゥー・ピアー(Peer to Peer)」と読むこともあります。Peerは「同僚」を意味する英単語です。
その名前の通り、P2Pは、情報を必要とする末端と、情報を提供する末端が直接データのやりとりをするモデルです。それぞれの末端が、情報を提供する役、受け取る役になり、あるいはその両方の役割を行うこともあります。
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P2Pは、情報提供する末端と、情報を受け取る末端が直接データをやりとりするネットワークモデル。状況に応じてそれぞれの末端が、提供側になったり、受け取り側になったり、また同時に両方の役割を果たすこともある。
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一般的にコンピュータでは、これまでこのような分散的なネットワークではなく、中央集権的モデルが多く利用されてきました。たとえば、P2Pモデルとよく比較される、クライアント・サーバー・モデルもそうです。
クライアント・サーバー・モデルでは、情報を必要とする末端は、情報を発信する専用のコンピュータであるサーバーに情報を求めます。サーバーには情報が全て集められ、必ず全ての情報が一旦ここを経由するため、クライアントから他のクライアントにデータを送信したい場合でも、クライアントはサーバーに対して情報を提供し、その情報がほしい他のクライアントはサーバーからその情報を入手することになります。
こうしたネットワークモデルには、それぞれメリット、デメリットがあります。
P2Pモデルの特長は、データの発信、受け取りに必要なコストやリスクをそれぞれの末端が分散して受け持つことができる点にあります。
たとえば、P2Pでは、ネットワークのどこか一カ所に問題が起きてもそれぞれの末端とその間のネットワークさえ生きていれば情報のやりとりが行なえます。つまり、通信経路に障害が発生しても、それを乗り越えることが容易なのです。
クライアント・サーバー・モデルだと、情報がサーバーに集中するため、サーバーが止まってしまうと情報の流通が止まってしまうことになります。
ただし、P2Pでは、技術的、コスト的な点でデメリットが発生する場合もあります。たとえば、末端が欲しい情報をどのように他の末端にあることを探すかという問題があります。クライアント・サーバー・モデルではサーバーが情報のありかを一手に集中して管理できるので目的の情報を検索するにはサーバー内の情報を検索すれば良いだけなのに対し、P2Pでは各末端を全て調べる、あるいは各末端に調べてもらって結果を回収するなどの方法をとらなくてはならないため、効率よく検索しにくいといったデメリットが生じてしまいます。
そのため、実際のコンピュータや、移動体通信、無線通信などでこの仕組みが実装される際には、完全にP2Pでネットワークを構成するのではなく、部分的に利用されることが多くあります。たとえば、P2P型のファイル転送ソフトでは、ファイル転送そのものはP2Pで行なうが、どの末端が目的のファイルを持っているかを検索するために、ファイル検索用情報の流通自体はクライアント・サーバー・モデルを採用してサーバーが一括管理する、というような場合も多くあるようです。
また、P2Pでは、サーバーが介在せず、末端同士が情報をやりとりしようとするため、なりすましなど情報の詐称が容易になるという問題もあります。実際にP2Pモデルを利用したアプリケーションを開発する場合は、他のセキュリティの仕組みを導入してこのような問題に対処しなければならないでしょう。
■ 携帯電話での利用はこれから
パソコンのネットワークでは、P2Pを意識したネットワークアプリケーションがあり、OSがネットワークファイル共有機能を持っていたりすることもあります。しかし、これまで携帯電話では、P2Pモデルを利用したネットワークはほとんど構築されていません。その理由は、能力的にあまり余裕がない携帯電話では、できるだけの機能をサーバーに持たせて、携帯電話は端末に徹する方が合理的だったためと考えられます。
ただ、携帯電話にも十分なパワーが備わってきた現在では、携帯電話をP2Pネットワークに組み込もうという試みも一部で開始されているようです。
本誌のニュースでは、PUCCというコンソーシアムが、デジタル家電などの機器を相互に接続するP2Pベースのネットワークの規格を作ろうとしていることが報じられましたが、ここに携帯電話も組み込むことを考えているようです。
あるいは、現在、P2Pを利用したPCベースのVoIPテレフォニーソフトに「Skype」がありますが、開発元では、無線LAN対応のSymbian OSを搭載したスマートフォンにこのSkypeに対応させるソフトを開発中である、というようなニュースも過去に報じられたことがあります。
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・ モトローラ、音楽再生対応端末やデザイン端末などを展示
(大和 哲)
2005/09/20 13:11
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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