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第233回:全国バンド・東名阪バンド・TDDバンド とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


TDDとFDDとは

 携帯電話での通話には、通話者同士が同時に話しても、お互いがそれぞれの声を聞くことができます。一方からしか話すことができないトランシーバーや、Push-to-Talkとは異なる点です。これは、常に一方の携帯電話が基地局とやり取りし、同時にもう一方の携帯電話も基地局とやり取りすることで、双方向の通信を行なっているからです。同時に双方向の通信を行なうことを全二重通信(英語ではFull Duplex)といいます。

 携帯電話・移動体通信のシステムで、全二重通信を行なうには、いくつかの方法があります。現在、W-CDMA(UMTS)とCDMA2000では「FDD」という方式がとられています。「FDD」とは、Frequency Division Duplex system(周波数分割複信)の略で、上り通信と下り通信を別々の周波数で行なうことで全二重通信することを意味します。

 これに対し、PHSやTD-CDMAなどは、TDDを利用した方式に分類されます。「TDD」とは、Time Division Duplex system(時分割複信)の略で、同じ周波数帯を、ごく短い時間ごとに切り替えて、上りと下りの通信を行なって全二重通信を実現しています。


全国バンド・東名阪バンド・TDDバンドとは

 携帯電話の利用している電波の周波数帯は、総務省が2003年10月に「中期的(5年以内)には1.7GHz帯等を中心に、約330~340MHz幅の周波数を移動通信システム用として確保するよう再編を検討する」と発表し、これに伴う既存携帯電話事業者や新規参入を希望する事業者などに、どの周波数帯をどれだけ割り当てるかをめぐって、さまざまな議論が行なわれています。

 現在、特に、1.7GHz帯、2GHz帯における周波数の割り当て方法をめぐって活発な議論が行なわれています。6月には、総務省が1.7GHz帯及び2GHz帯の周波数について、特定基地局の開設に関する指針案を作成し、各事業者などから意見を求めました。

 「全国バンド」「東名阪バンド」「TDDバンド」とは、新規に割り当てられる周波数帯にあてられたわかりやすい呼称です。

 1.7GHz帯は、WRC(世界無線通信会議、World Radiocommunication Conference)において携帯電話用周波数として追加分配された周波数帯です。この周波数帯は、日本でも比較的たやすく帯域が確保できそうなめどがたっており、順調に行けば、2006年度から全国で30MHz程度の周波数幅を携帯電話用として使える注目の周波数帯です。

 指針案では、この1.7GHz帯にFDDによる移動体通信事業者への割り当てをしたいとされています。この1.7GHz帯の中でも、1844.9MHz~1859.9MHzの15MHz帯を全国的に利用が可能な「全国バンド」と呼んでいます。


 「全国バンド」では、新規参入希望者(最大2事業者)に対して当初5MHz幅ずつ割り当て、残りの帯域は周波数のひっ迫(1MHz当たり利用者数の増加)に応じ、割り当てたいとしています。

 また、「東名阪バンド」は、同じく1.7GHz帯の1859.9~1879.9に対する呼称です。こちらは、帯域のひっ迫した場合に、新規・既存事業者を問わず5MHz幅ずつ割当てることが想定されています。東名阪など大都市部で使われる可能性が高いことからこの名前になっています。


「全国バンド」と「東名阪バンド」は、新たに割当可能となった1.7GHz帯の周波数幅のこと

2GHz帯で新たに利用できる周波数幅は「TDDバンド」
 一方、「TDDバンド」は2GHz帯の2010~2025MHzの周波数帯に対する呼び名です。この周波数帯には新規参入希望の事業者1社に対して15MHz帯を割り当てたいとしています。既に2GHz帯には、FDDであるW-CDMA方式などで既存事業者が利用している周波数帯が存在し、「TDDバンド」ではTDD方式による新規事業者へ割り当てる予定となっているため、この呼び名となっています。

 なお、これらの割り当て案に対しては、各社から「基本的に賛成」という主旨が表明されていますが、ウィルコムが「IMT-2000には含まれないPHSだが、TDDバンドの対象に含めてほしい」とするなど、さまざまな点で議論の対象となるような意見が寄せられています。



URL
  総務省 報道資料
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050603_7.html

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(大和 哲)
2005/07/12 13:14

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