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第147回:IMCS とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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IMCSは「インクス」と読みます。Inbuilding Mobile Communication System(ビル内でのモバイルコミュニケーションシステム)の略です。ビルの中や地下街でも携帯電話やPHSが使えるようにするためにNTTドコモから提供されているシステムです。
携帯電話には、地上にある通常の基地局からの電波だけでは通話がしにくくなる場所がいくつもあります。
たとえば、地下の駐車場やレストラン・ショッピングモールなどは電波が届かず、あるいは電波が弱いエリアとなっており、通話ができません。高層ビルにあるオフィスやレストランでは電波が届いても、いろいろな基地局から電波が届くため電波干渉が起こりやすくなり、通話が不安定になります。ホテルのロビー・デパートの待ち合わせ場所などでは電波が届き、電波干渉もないのですが、利用者が集中してしまい、回線数に比べて電話や通話者が多すぎるため電話が使いにくくなります。
これらを解決するために作られたのが、IMCSというシステムです。ビルそのものにドコモの基地局を設置する「IMCSトータルプラン」、テナントやフロアごとにシンプルな基地局を設置する「IMCSエリア限定プラン」のほか、6月からは安価に店舗などに導入できる「簡易IMCS」の提供も開始されています。この簡易IMCSは本誌の記事でも「ドコモ、地下街などで利用できる簡易中継装置を提供 」として紹介されています。
IMCSが導入されているフロアや店舗などには「ドコモの携帯がご使用になれます・IMCS」と書かれたポスター・シールが貼られており、携帯電話が使えることがはっきりわかるようになっていることも多いようです。
なお、このシステムはドコモ専用のもので、各社の携帯電話が使えるような地下商店街などに設置されている中継装置などとは別物です。また、違法中継装置の増加から総務省が携帯電話事業者4社に、安価で共通利用できる中継装置を販売するよう要請していますが、これとも別になります。4社では現在、中継装置の試作機を共同で開発しており、2003年秋頃までの完成を目指しています。
■ IMCSの仕組み
本誌記事からもわかるように、IMCSの仕組みは、簡単に言えば「電波の中継装置」です。ただ、中継装置というのは、ただ単に携帯電話の電波を野外のアンテナで拾い、増幅して屋内で流すだけでよい、というものではありません。たとえば、電波は壁があっても通り抜けてしまいますから、強力に電波を増幅して店舗内に流したために、逆に店舗外の電波と増幅装置からの電波が干渉してしまい、携帯電話が使えなくなってしまうという可能性が考えられます。実際に違法中継装置(違法携帯ブースター)が市販されているようですが、正式に認可を受けていない装置を使っての電波の送信は電波法違反となり、使用すると処罰を受けることもあります。電波は公共のもので、勝手に使うと他の利用者にも迷惑がかかることになりますので絶対にやめましょう。
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違法ブースターを使った場合、屋外に電波が漏れ、外の携帯電話や基地局を混乱させ通話ができなくなってしまうこともある。迷惑なので使ってはいけない
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IMCSでは、このような干渉の起こらないようにシステムが組まれています。その仕組みですが、たとえば、ビル全体を携帯電話のエリアにする「IMCSトータルプラン」では、野外から携帯電話の電波を拾うことをしません。
ドコモの無線基地局から専用線をビル内に引き込み、そのうえで建物のフロアごとに光ファイバケーブルなどで接続した小出力のアンテナを設置しています。このアンテナからの電波が各フロア内に届き、これを携帯電話が受信して、通話できるようになるわけです。
ちなみに、IMCSでは専用線などの大掛かりな装置が必要になりますが、費用負担に関しては、オープン性が高く需要の多いビルでは、専用線料金を含め保守・運用していくための費用をドコモが負担しています。オープン性が低い、需要が少ないビルやエリア限定のプランでは、テナントが負担しています。
また、簡易IMCSでは、野外からの電波を受けて、室内のアンテナから電波を出して中継する仕組みになっていますが、この中継は出力を押さえて半径20~30mに限定し、外の携帯電話の電波との干渉を防ぐようになっています(ちなみに、このタイプでは利用できるのは現在、800MHzを利用した携帯電話のみになっています)。
簡易IMCSには電話線を使ってのドコモの監視システムと接続されており、中継機の制御も24時間行なわれているなど、かなり安心感の高いシステムになっています。
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ビル全体を通話エリアにするIMCSトータルプランではビルまで専用線を引き、ビルから基地局まではこれを利用する。簡易IMCSでは基地局から導入テナントまでは装置監視用にのみ電話線を使い、携帯電話の通話に使う電波は野外からの中継となる
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IMCSは専用線を引くなどの負担が大きかったために、より安価な違法ブースターが広まる原因の1つになっていましたが、簡易IMCSはこのような仕組みで簡易にして価格を安くしながら安心感の高い仕組みとなっており、違法ブースターの駆逐が期待されています。
■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
■ 関連記事
・ ドコモ、地下街などで利用できる簡易中継装置を提供
・ 携帯キャリア4社、地下街で通話できる安価な中継装置を共同開発
(大和 哲)
2003/08/26 12:25
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