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第141回:Linux とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 Linuxは、現在、Pentiumシリーズなどのインテル系CPUを搭載しているサーバー、ワークステーション、パソコンなどでよく使われているOSです。その他のCPU、たとえばMIPS系やPowerPC系のCPUを搭載したコンピュータ、携帯機器、あるいは組込用としても利用されています。

 携帯電話においては、2003年3月に米モトローラ社が発表したGSM/GPRS携帯電話「A760」にLinuxが搭載されています。このA760はJavaのサポートやMP3プレーヤー機能、デジタルカメラ機能、タッチスクリーン、Bluetooth、USBインターフェイスなどが搭載された端末で、OSにはモンタビスタソフトウェア製「MontaVista Linux」を搭載しています。

 MontaVista Linuxをはじめとした組込用のLinuxは、他のメーカーでも採用が予定されているほか、日本の携帯電話事業者、メーカーでも採用を検討している会社もあるようです。


Linuxの特徴は「オープンソースであること」

モトローラ製「A760」
 これから携帯電話で利用されようとしている、LinuxというOSの特徴は、「オープンソースで作られている、UNIXライクなOS」である、ということです。

 オープンソースとは、

・プログラムの元となる「ソースコード」が一般に公開されている。
・ソースコードも含めて全ての再配布が自由。
・誰にでも自由に使うことが許されている。

ということです。

 一般的に、OSを含むソフトウェアは一企業がコンセプトから開発まで行なうことが多く、改造ができなかったり、特定の機械や分野では使えなかったりというような制限があることがごく普通です。例外としては、そのコンセプトを中心となる協会が策定し、利用する会社がそれぞれに作りあげた「TRON」のようなものもありますが、この場合、コンセプトの利用は自由でも実際の製品は自由に使うことはできない、ということもあります。Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェアには(一部のソフトに「配布のためのライセンスを変更してはいけない」などの制約があるものの)そのような制約はありません。

 もともとLinuxは、最初にリーナス・トーバルズ氏が「自分で自由になるUNIXが欲しい」という理由でOSの中心部分となる“カーネル部”を作成した後に公開されました。しかし、これだけでは十分な機能やツールが揃っていません。オープンソースとなったLinuxは、最初に公開されたものをベースに、(リーナス氏も含めて)学生、企業、ボランティア、団体などさまざまな人や組織によってツールやウィンドウシステムなどがオリジナルで作られたり、他のオープンソースのソフトを組み入れたりといった作業を経て、OSとしての形が整っていきました。いわば、オープンソースの集大成としてその形を整えていったわけです。

 現在では、LinuxはOSの核になる部分をkernel.orgを中心としたLinuxカーネルの配布者グループがメンテナンスおよび開発を行なっていて、これにGNUや他のユーザーが起源のUNIXツール、ウィンドウシステム、アプリケーションなどがあり、ディストリビュータと呼ばれる配布会社・配布グループがそれらをシステムとしてまとめ上げています。ディストリビュータのまとめたLinuxシステムは、ディストリビューションと呼ばれ、パソコンやサーバーの利用者がよく目にする、いわゆる「Linux」になります。

 ディストリビューションとしては、

・Red Hat Linux
・Debian GNU/Linux
・Mandrake Linux

あたりが世界的なサーバー用・パソコン用として有名ですが、他にも、ニッチを狙った特定の分野で人気のディストリビューションというのも多く、たとえば、日本語や中国語で使うことを中心に考えられたもの、CD-ROM1枚をパソコンに入れるだけでインストールなしで使えるもの、ルーターやファイアウォールを作るため、フロッピー1枚分の容量にネットワーク機能を詰め込んだものなどがあります。


組込OSとして、そしてLinuxのメリットを生かして

 携帯電話にLinuxが搭載されるようになった理由の1つには、「リアルタイム制御が可能な組込機器用Linuxのディストリビューションが登場し、完成度も高まってきた」ということが挙げられます。

 パソコンやサーバーと違って、携帯電話などの制御ではマシンパワーが少ない割に、「時間管理」が非常にシビアです。たとえば、テレビ電話機能を実現しようとした場合、電話回線経由で送信される画像は、速く表示しすぎても遅くなっても音声とずれてしまって使い物になりません。

 Linuxカーネルはパソコン上で使うUNIXとして作られた経緯から、リアルタイム制御を意識しては作られていませんでしたが、これら組込機器用Linuxでは、リアルタイム制御ができるようにカーネル部分から修正が加えられています。この修正の一部がカーネル作成グループに送られて、Linuxカーネル自体もバージョンが新しくなるごとにリアルタイム制御と相性が良くなりつつあるのも興味深いところです。

 A760に搭載されるMontaVista Linuxは、x86、PowerPC、StrongARM、MIPSなどのマイクロプロセッサで使える組込機器用Linuxとして有名なディストリビューションです。リアルタイムOSとしての定評や実績があることに加えて、他社からもこのMontaVistaを利用したソフト、たとえばMontaVista LinuxをITRON上で動かせるツールなども発売されているなど、開発環境も整っています。

 また、これまでのOSと比べてアプリケーションも多く、これからの携帯電話に載せるような高機能なアプリケーションを作ることが容易なことも携帯電話用のOSとしてLinuxが注目される理由のひとつでしょう。

 リアルタイムLinuxもLinuxの一種ですから、Linux向けアプリケーションの多くは手を加えずに利用することができます。Linuxはいろいろな分野で使われていて、そのモジュールもオープンソースで公開されているため、そういったアプリケーションを利用できれば、より早くさまざまな携帯電話用のアプリケーションを作れるはずです。Javaやブラウザといった主要なコンポーネントもLinux用には既に多くリリースされているという安心感もあります。


 このほか、Linuxが他の組込用OSと比較して堅牢なこともメリットのひとつでしょう。携帯電話に搭載されるアプリケーションが高度、複雑になってしかも開発期間が短くなってきており、バグが出るなど品質上の懸念が大きくなりつつあります。もし携帯電話のアプリケーションでバグが出ても、携帯電話本体が起動できないといった致命的なバグに結びつかないように、いわば保険的にLinuxをOSとして採用したい、ということもあるようです。

 サーバーにも使われるLinuxは、アプリケーションが1つ暴走してもOSごと固まる、再起動が必要になる、というようなことがないように工夫されていて、その特徴は多くのリアルタイムLinuxにも引き継がれています。たとえば、携帯電話上のアプリケーションにバグがあり、システムが利用するメモリを勝手に書き換えてしまうとOS、携帯電話ごと動かなくなる、というような事態が予想されますが、現在、携帯電話によく使われているOSではメモリ管理はLinuxに比べるとかなり簡易的なものが多く、ひとつのアプリケーションのバグが携帯電話の機能全体に及ぶバグとなって現われる懸念があります。

 Linuxでは、あるアプリケーションが他のアプリケーションやシステムが使用しているメモリを勝手に使えないようなメモリ管理をしており、万一アプリに問題があっても端末そのものが機能を停止することを防ぎやすいというメリットもあるのです。


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(大和 哲)
2003/07/15 12:38

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