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第133回:地上波デジタル放送 とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 地上波デジタル放送とは
地上波デジタル放送(地上デジタル放送)とは、衛星放送ではなく地上の放送塔から電波を送る「地上波」を使ったデジタル放送です。現在、もっと普及しているテレビ放送は、VHF・UHF帯を使ったアナログ地上波ですが、これに代わるものとして利用される予定です。
この地上波デジタル放送のサービスは、UHF帯を使ってNHK総合および民放各局の放送が2003年12月より東京の一部の地域で開始され、2006年にはその他の地域でも順次開始される予定になっています。現在、これに伴って一部の地域で、アナログ放送のUHFにおける放送チャンネルを変更する「アナアナ変換(アナアナ変更)」も同時に行なわれています。
そして、2011年にはアナログでのテレビ放送は終了し、地上波デジタル放送に完全に切り替わる予定です。
地上波デジタル放送では、映像や音声の情報は従来と異なり、デジタルデータ化したものが乗せられています。テレビ放送に関しては、映像はMPEG-2(ビデオ)、音声はAAC(MPEG-2オーディオ方式の1つ)でそれぞれの情報をデジタルデータ化して送ります。
ただし、単純に今までのテレビ放送の置き換えではなく、いろいろなタイプの受信機に応じた放送や通信サービスなどが行なえるのも、地上波デジタル放送の特徴です。
■ 柔軟な日本方式、ハイビジョンも、ケータイも
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KDDI研究所が19日に発表した携帯端末受信を可能にする通信・放送端末のプロトタイプTVMobile(仮称)。
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地上波デジタル放送の仕組みに関しては、最初は世界で同じ方式にしようという動きもあったようですが、結局、世界で日本方式、米国方式、欧州方式の3方式が使われることになってしまいました。日本で開始されるものは、もちろん日本方式です。地上波デジタル放送では、1つのチャンネルは6MHz幅の帯域を利用するのですが、日本方式は、この帯域を最大3つに分割して使用することができるという柔軟さが特長です。
このため、たとえば、この1本のチャンネルを1つのハイビジョン画質放送として使ったり、3つの標準画質テレビ(SDTV)として使ったりするほか、2つをテレビ、1つを移動体向け放送用として使うことなども可能になっています。キャリア変調方式もチャネル中の分割ごとに変えることも可能で、分割した1つのチャンネルの中で、たとえば携帯端末等で受信するといったような「部分受信」に対応できるようになっています。
このような特徴を利用して、地上波デジタル放送では、
・1つのチャンネル用の帯域で多くの普通画質放送を送る「多チャンネル放送」
・高画質な「ハイビジョン放送(HD放送)」
・パソコンなどで使えるデジタルデータを送信する「データ放送」
・携帯機器向けなどの「移動受信向け放送」
と多彩な放送・サービスが行なわれる予定になっています。
また、デジタル放送は、自動車や電車の中など移動中でも、アナログ放送に比べて受信状態が安定しやすいとされており、現在のアナログ放送を小型テレビで受信するケースに比べて、より使いやすい移動端末向けの放送も可能といわれています。
■ 地上波デジタル放送を受信するには
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NTTドコモもテレビ機能を備えた端末を開発している
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地上波デジタル放送を受信するための機器は、まだ一般には販売されていませんが、いくつかの試作機が本誌を始めとするメディアで紹介されています。
地上波デジタル放送では、さまざま画質の映像やサービスが行なわれる予定になっています。これらの放送を見たり、サービスを受けるには、それぞれに対応した機器が必要になります。
今までと同じ普通画質のテレビ放送を見るには、現行のテレビに、UHF用アンテナおよびDIRD(Digital Integrated Receiver Decoder)と呼ばれる地上波デジタル放送専用のデコーダーユニットを取り付けることで視聴が可能になります。
また、地上波デジタル放送では、様々な解像度での放送が行なわれる予定で、ハイビジョン画質放送では、1,920×1,080という非常に高い解像度になる予定です。
規格 |
有効画素数 |
アスペクト比 |
走査方式 |
フレーム周波数 |
1080i |
1,920×1080 |
16:9 |
飛び越し |
29.97Hz |
480p |
720×480 |
16:9 |
順次 |
59.94Hz |
480i |
720×480 |
16:9、4:3 |
飛び越し |
29.97Hz |
720p |
1,280×720 |
16:9 |
順次 |
59.94Hz |
ハイビジョン画質の地上波デジタル放送では、テレビ受像機も高解像度に対応した機器が必要になりますが、現在販売されているハイビジョン対応テレビ、デジタル(D3、D4)端子つきのテレビにDIRDを取り付けることで視聴が可能です。
携帯機器向け放送用の受像機に関してですが、こちらは専用の地上波デジタル放送用携帯受像機が市販されることになるでしょう。たとえば、先日本誌でお伝えしたように、KDDI研究所が携帯通信・放送端末のプロトタイプ開発しており、端末のデモンストレーションも行なわれています。この携帯機器向けテレビ受信機能を携帯電話に埋め込んでしまおうという期待を持つメーカーも多いようです。
ただ、この携帯機器向け放送に関しては、動画の符号化をMPEG-4で行なおうとしていたのですが(一般のデジタルテレビ放送はMPEG-2)、MPEG-4の特許を管理している団体と、特許料支払いなどの交渉が難航しているという報道もあり、技術的には準備が整ってもサービスが行なえるのか分からない、あるいは、今後符号化方式が変更され、サービス開始時期が遅くなるということもあり得るという微妙な状況になってきています。
■ URL
総務省 関東総合通信局 地上波デジタル放送告知ページ
http://www.kanto-bt.go.jp/faq/digital/
■ 関連記事
・ KDDI、地上波デジタル放送向けのプロトタイプ端末を開発
・ 携帯向け地上波デジタル放送にMPEG-4のライセンスの壁
(大和 哲)
2003/05/21 11:09
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