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第120回:SH-Mobile とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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SH-Mobileは日立製の、携帯電話などに使われるアプリケーションプロセッサのシリーズです。かつては、S-MAP(SuperH Mobile Application Processor)とも呼ばれていました。
このSH-Mobileは、ezplus(Javaプログラム)の実行や、ムービーの保存など、多くの処理を非常にすばやく行なえる日立製CDMA2000 1x端末「A5303H」に搭載されていることが知られていますが、今後は他メーカーの携帯電話にも搭載される予定になっているそうです。
アプリケーションプロセッサとは
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日立製au端末「A5303H」
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「Javaやムービーの処理が非常に速い」という「A5303H」の特徴は、まさにアプリケーションプロセッサであるSH-Mobileが携帯電話にもたらした恩恵のひとつです。
アプリケーションプロセッサとは、携帯電話内に組み込まれているLSIの1つで、Webブラウジングやマルチメディア処理などを実行する役割を持っています。一方、基本機能である通信や通話に関する処理を行なうのがベースバンドプロセッサです。携帯電話には、このベースバンドプロセッサに加えて、第2のコンピュータとしてアプリケーションプロセッサが搭載されます。
最近の携帯電話は、電話での通話以外にも様々な機能が搭載されています。たとえば、メールをやりとりする、Webをブラウズする、Javaプログラムを動かす、カメラを使って写真を撮る、動画を再生する、というようなことです。
携帯電話は、音声をデジタル化して処理するため、これまでもマイクロコンピュータが搭載されていました。しかし、現在のように余りにも電話の基本機能からかけ離れた“Webブラウズ”や“動画再生”といった機能までひとつのコンピュータ(プロセッサ)に処理させてしまうと負荷が高くなり、処理がもたつくというような問題が出てしまいます。
そのため、多くのJavaアプリケーション対応携帯電話では、通信を司るベースバンドプロセッサがJavaVM(Java Virtual Machine:仮想計算機)も動かしているため、データ通信中はJavaの処理速度が落ちる、というような現象がおきます。そこで、携帯電話にその他の機能を処理する専用コンピュータ(プロセッサ)を搭載しようという動きがでてきました。それが「アプリケーションプロセッサ」なのです。
「SH-Mobile」を搭載している「A5303H」は、まさに、そのメリットを享受している携帯電話で、CDMA2000 1x端末で使われるQualcomm製ベースバンドプロセッサに加えて、アプリケーションプロセッサとして「SH-Mobile」が搭載されています。
これまでの携帯電話では、動画を撮影してから保存を行なうまでの処理は、かなり時間がかかるものでした。しかし「A5303H」では、撮影と同時に保存に必要な処理が完了してしまう「リアルタイムエンコード」が可能になっているため、待つ必要が全くなくなりました。
また、ezplusに関しては、そのまま実行してしまうと従来機種とは処理スピードが大きく異なってしまうため、「SH-Mobile」の性能そのままで実行する「最速モード」のほかに、わざとウエイトをかけてJavaの処理を遅くした「高速モード」「通常モード」も設定できるのです。
このように、動画の録画・再生やezplusの実行などは「SH-Mobile」側で行われるために非常に高速な処理が可能となっているのです。
ちなみに、携帯電話のアプリケーションプロセッサとしては、「SH-Mobile」のほかに、米テキサス・インスツルメンツ(TI)が開発した「OMAP(Open Multimedia Application Platform)」なども有名です。なお、OMAPに関しては、松下やNECの第3世代携帯電話などで採用されています。
SH-Mobileの中身
SH-Mobileの内部構成を見てみると、CPUコアには、32bitRISCマイコン“SH-3”にDSP機能を搭載した「SH3-DSP」を内蔵しています。さらに、カメラやフラッシュメモリへアクセスするためのインターフェイスが搭載されています。そして、動画のエンコードやデコード、JavaVM、3Dグラフィック表示向けミドルウェアなどのソフトウェアが利用できるようになっています。
SHシリーズといえば、かつてセガが提供していた家庭用ゲーム機やWindows CE搭載PDAなどのCPUに搭載されていたことでも知られていますが、さらにデジタル信号を、より高速に処理できるDSP(デジタルシグナルプロセッサ)や、携帯電話に搭載されているカメラなどの各種デバイスを利用するための装置やLSIも搭載されており、さらにソフトウェアも提供されているわけです。携帯電話メーカーにとっては、「SH-Mobile」を利用すれば、カメラや動画対応、Javaといった付加価値のある機能を持った携帯電話を、より簡単に開発することができるということにもなります。
ちなみに、「SH-Mobile」の性能面を見てみると、ラインナップの1つである「SH-Mobile 1(SH7290)」の場合で、動作周波数は最高で133MHz、コンピュータとしての処理性能は173MIPS となっています。LSIのサイズは、13×13mm(または11×11mm)で、厚さが1.40mmと非常に小さなものです。
「SH-Mobile」シリーズには、いくつかの製品が提供されています。第1弾として提供された“SH-Mobile 1(SH7290)”、カメラ付き携帯電話向けに機能を強化した“SH-MobileJ(SH7294)”、ハイエンドの“Sh-MobileV(SH7300)”などがあります。“SH-MobileV”は次世代のTV電話機能を搭載する携帯電話向けに設計されており、MPEG-4ハードウェアアクセラレータを搭載していることで、ハイクオリティな動画の録画・再生が、リアルタイムに行えるようになっています。
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SH-MobileV(SH7300)
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・ SH-Mobile紹介ページ(日立製作所)
http://www.hitachisemiconductor.com/sic/jsp/japan/jpn/PRODUCTS/MPUMCU/SHMOBILE/
・ au、“着うた”対応のムービーケータイ「A5302CA」「A5303H」
(大和 哲)
2002/12/17 12:49
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