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第101回:Vライブ とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


同時に複数端末へライブ送信できる「Vライブ」

VライブのFOMA対応機種はビジュアルタイプ。写真はパナソニック製の「P2101V」
 「Vライブ」は、NTTドコモがFOMA端末を利用して全国でフィールド実験を行なっている映像ストリーミング配信サービスです。現在は試行サービスとして提供されており、本サービスについては試行サービスの結果を踏まえた上で来年を目処に開始される予定となっています。

 このサービスでは、FOMAやカード型PHSを装着したPDAを利用するユーザーに対し、コンテンツ提供者が映像番組や観光情報などのオープンなコンテンツ、あるいは会員などの特定ユーザーの端末だけにクローズドなコンテンツを提供したりすることが可能です。

 配信できる映像としては、あらかじめ撮影して蓄積サーバーに保存してある「アーカイブ映像」と、リアルタイムの「ライブ映像」の2種類の映像が配信可能で、技術的には映像・音声データを同時に複数の端末へ送信することができ、多数のユーザーが同時に閲覧してもストレスなくライブ映像を見ることができるという特徴があります。

 携帯電話での映像配信は、これまで各端末とのコネクションをサーバーが保たなくてはならないため、接続するユーザー数などによってはサーバーの過負荷や輻輳が問題となりましたが、このサービスではあたかも放送のように多くの端末でライブ映像を見ることができます。

 対応のFOMA端末は、ユーザー側でプレーヤーソフトなどをインストールする必要なく、ビジュアルタイプのFOMA端末がそのまま利用できます。ただし、利用するには事前にVライブ用のIDとパスワードの取得が必要です。

 Vライブによるサービスとしては、ソニー・ミュージックエンタテインメントが新人アーティスト「SAYAKA」の期間限定オフィシャルWebサイトで、今年4月末にSAYAKA本人のメッセージ映像などをリアルタイムで配信するサービスが実際に行なわれたほか、国内外に設定されたWebカメラのリアルタイム映像を配信する、キンデンの動画コンテンツポータルサイト「千都泥棒」などもあります。


FOMAの最新技術を利用した新しい形のサービス

 最近はiモードでも画像メールが可能になるなど、これまでの基盤を生かして様々なサービスを提供しています。しかし、旧世代のシステムに頼っていては、いくらサービスを工夫しても提供できるサービスには限界があります。

 特にマルチメディアデータの配信に関しては、それが顕著です。これまでのPDCのiモードは、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を使ってiモードコンテンツを取り出しています。HTTPはWebページの転送には適していますが、エラー訂正に関しては、エラーが起きた場合に時間がかかっても、あえて再度データを取り出すことで正確なデータを取り出すというTCPに全面的に依存しています。

 このため、時間というファクターが重要となるマルチメディアデータの通信や配信には向きません(例えば、訂正のために時間をかけて正しいデータを取ろうとすると、それが音声の遅延の原因になる)。また、多くの端末に同じデータを一度に送信する「マルチキャスト」に関しても考えられていないのです。

 第3世代の携帯電話であるFOMAは、様々な新しい規格への準拠や新しい技術を利用しているシステムです。現在、わかりやすいところでは、例えばテレビ電話が利用できるようになったとか、電話の音質がよくなったなどの違いが挙げられますが、応用の仕方によっては、携帯電話の利用方法が変わるかもしれない可能性の芽がいくつも隠されています。現在でもいろいろなサービスがPDC端末でも実現されていますが、本当に新しいサービスは、やはりFOMAなどの第3世代携帯電話であればこそと言えるでしょう。


 例えば、FOMAのビジュアル端末がサポートしているオーディオビジュアル通信規格「3G-324M」も、3G携帯電話ならではの機能を実現できる芽のひとつです。これは、第3世代の移動体通信システムの規格を制定している「3GPP」による標準規格のひとつで、これに準拠することで複数台で同時接続してリアルタイムにコミュニケーションが可能になるなどの機能を果たしています。

 実際にFOMAで、これとテレビ電話他地点接続プラットフォームを利用し、4人までの会話の場合に映像画面を4分割にして画像付きのチャットとして利用、あるいはプラットフォームに複数接続(最大16端末まで)している利用者の一人が発言した音声の反応により、映像画面が切り替わるようなテレビ電話機能を作り出しています。

 今回説明しているVライブも、3G-324規格に準拠しているからこそ実現できるサービスのひとつです。このVライブには、米パケットビデオ社のPVPlatform技術、ビジュアルタイプのFOMA端末で採用されている「3G-324M」、ストリーミング転送プロトコルRTP(Real-time Transport Protocol)が利用されています。

 これまでの一般的なインターネットのストリーミングやFOMAでのそれも、配信システムとしては、1台1台のコンピューターとの接続をもってそこにデータを流していたため、システムの負荷が大きくなりがちでした。しかしVライブでは、FOMAのネットワークを利用して複数台のFOMA端末やPDAに同時配信します。いわば、これまでのサービスは通信だったのが、Vライブでは一斉に放送するかのようにデータが流されます。

 PVPlatformには、送出される動画のビットレートをダイナミックに変更できる機能があり、これによってエラーが発生しやすいワイヤレス・ネットワーク上で、途切れのない高品質のビデオやオーディオ・ストリーミングを提供できるようになっているのです。

 RTP(Realtime Transport Protocol)は、UDPを利用したリアルタイム・ストリーミング用のプロトコルで、マルチメディアデータストリームをパケットで送信することができます。Vライブの他にも、例えばIP電話で使われているVoIP(ネットワークを使った通話)やRealAudioなどのストリーミングにも使われている技術です。


・ 「Vライブ」公式ポータルサイト
  http://www.foma-live.tv/
・ NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/

ドコモ、FOMA映像ストリーミング「Vライブ」の試行サービスを開始
ドコモ、FOMAのライブ映像配信実験を全国で開始
パケットビデオ、ドコモのVライブに映像配信システムを提供


(大和 哲)
2002/07/23 12:17

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