特集:5Gでつながる未来
選手の動きをリアルタイム表示、ARで応援合戦――高校バスケ全国大会でソフトバンクの5Gプレサービスを体験
2019年12月24日 17:12
インターハイや国体と並んで高校バスケットボールの3大大会とされる「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」(以下、SoftBank ウインターカップ2019)が、12月23日~12月29日に東京都で開催される。
会場のひとつとなる武蔵野の森 総合スポーツプラザ(東京都調布市)では、ソフトバンクが一部の試合で5Gのプレサービスを実施している。5Gを活用することでどのような観戦体験ができるのか、実際に体験した感想も交えてお伝えする。
5Gプレサービスの通信環境
まず、今回のプレサービスで使用された5Gの通信環境を確認しておこう。基地局設備としては、スタジアムの一角に3.5GHz帯の5G用アンテナ、そしてアンカーとなるLTEのアンテナがコートに向けて設置されている。
コートのそばに設けられた体験コーナーには5Gスマートフォンが置かれ、Wi-Fi経由で体験者が手にするタブレットやARタブレット、そして後述の天井カメラが接続されている。
なお、5G商用サービスのための周波数として割当済の3.7GHz帯ではなく、4Gで利用している3.5GHz帯を選んだ理由としては、3.7GHz帯特有の事情である衛星との干渉対策を進めている最中であることから、このタイミングで確実に提供するための選択だという。
反対側のゴール下でのプレイもARでしっかり観戦
ソフトバンクによる「バスケ×5G」の試みは、8月にも日本代表の強化試合で披露された。その際の内容は、VR/ARヘッドセットやタブレットを使って視点を切り替えながら観戦できる映像コンテンツが中心となっていた。今回のプレサービスでは使用するデバイスや通信環境に大きな変更はないが、肉眼での観戦体験を補完するようなサービスに変化した。
透過型ディスプレイを搭載するメガネ型のARヘッドセットを装着すると、視界に重ねてスコアや選手の名前などの情報が表示される。装着したまま上を向くと、ちょうどコートの上にディスプレイが浮かんでいるような形でライブ映像が再生される。
この仮想ディスプレイには、コートサイドに設置された3台のカメラの映像が映し出され、ARヘッドセットに接続されたスマートフォンを使って手元で自由に切り替えられる。会場には4つのコートが並んでいて、基本的にどちらかのコートエンドの方向から見る形になるため、反対側のゴール下でのプレイが白熱している時などは、簡単に視点を変えて様子を確認できるのは便利だと感じた。
新たな試みとして、ARヘッドセットを装着した観客が手元のスマートフォン上で応援ボタンを押すことで、視界の上部に表示される応援ゲージが変化し「応援合戦」ができる機能が追加されていた。今回のプレサービスでは数台規模での提供となるが、5Gの強みを活かして会場全体にこのようなデバイスが行き渡るようになれば、新たな盛り上がりが生まれるかもしれない。
少し詳しくなった感覚で楽しめるリアルタイムスタッツ
一方、タブレットでの配信内容は、前回の多視点映像から「リアルタイムスタッツ」という情報表示がメインの内容に変更された。
天井に設置したカメラで選手一人ひとりの動きを捉え、各選手の得点や運動量などを会場全体の映像とともに配信する。画面右上のコート図には選手の背番号と位置がリアルタイムで表示される。
配信用映像のエンコードのために若干のラグがあるが、解析そのものは瞬時に行われ、解析用のカメラとは別に設置された俯瞰カメラからの映像に合わせたタイミングで表示させているということで、エンコーダーや配信サーバーの改良次第で今後さらに高速化できる余地があるという。
俯瞰映像とコート図で全体の様子を掴みやすいことはもちろんだが、一日に多数の試合が行われるウインターカップのような大会の場合、選手やチームについて十分知っている状態でどの試合も観戦できる観客ばかりではないだろう。リアルタイムスタッツがあれば活躍している選手のことがすぐに分かり、予習なしでも楽しみやすくなる実用的な機能だと感じた。