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LINEヤフーが語るAI「Agent i」の裏側、記憶をリアルタイム集約する新構想も――技術イベント「Tech-Verse 2026」基調講演
2026年6月29日 17:33
LINEヤフーは29日、技術カンファレンス「Tech-Verse 2026」を開催した。「AI」と「Core Technology」をメインテーマに、同社グループがこれまでの開発や研究で得られた成果や知見が披露された。
基調講演では、同社上級執行役員CTOの朴イビン氏から、推進するAI戦略の全体像とそれを支える技術基盤、そして全社的な変革として「AX」(AIトランスフォーメーション)への挑戦が語られた。
「Agent i」の誕生でユーザーとのギャップを埋める
同社は4月にAIエージェント「Agent i」を発表した。同社のサービス群とシームレスに連携するもので、さまざまな機能を持ったエージェントの集合体としてサービスを展開する。
朴氏は、AIの普及について「日常生活に根付いている利用率はまだ16%にとどまっている。急速に性能が向上しているAIと、日常生活に取り入れ切れていないユーザーとの隙間を埋めることで、「AI体験を次のステージに進化させようとしている」と述べた。
「Agent i」の裏側
ところで、「Agent i」で利用できるAIエージェント群を使う際、裏側ではどのようなシステムが動いているのだろうか? 同社CTOドメイン AI CBUおよびAI戦略企画ディビジョンリードの並木良太氏が、裏側の仕組みを語った。
同社のAIエージェントプラットフォームの全体像として並木氏は「Build & Manage」、「Run & Orchestrate」、「External & Capabilities」の3つのフローがあると説明する。
「Build & Manage」には、AI専門エンジニアがいなくてもエージェントを設計できるエージェントビルダーやエージェントを管理するエージェントカタログがある。
「Run & Orchestrate」は“実行の心臓部”だといい、多くのエージェントを安全に動かしたり、最適なエージェントを見つけたりする。選んだエージェントに、ユーザーのデータや過去の利用データを渡すと、エージェントがタスクをこなす。
「External & Capabilities」では、AIエージェントが生成AIモデルや各サービスのデータなど、“AIエージェント外”と接続する。これらのフローを経て、「Agent i」は「賢く動く」という。
これらのフローの基盤になるものとして「Governance & Observability」がある。品質と安全性の統制を担う基盤だといい、これらが組み合わさってAgent i全体が成り立っていると語る。
「Agent i」を展開するにあたり、特に重要な要素として並木氏は「エージェント開発の民主化」「高精度なパーソナライズ」「ガバナンス」の3つを挙げる。
並木氏は、多くのエージェントを迅速に生み出すには“開発の民主化”が不可欠と説明する。コーディングスキルがなくても動くエージェントビルダーやそれを実行する環境、プロンプトの設計や接続するAPIなどAIエンジニアでなくても自律エージェントを開発できる環境を整備することで、サービス運営に近いスタッフでも1日でエージェントを立ち上げられる。「仮説をすぐに形にし、ユーザーからの反応をすぐに察知する」一連の試行錯誤の速度を上げることを並木氏は「エージェント開発の民主化」と定義する。
エージェントビルダーと実行環境の開発にあたっては、品質とセキュリティを維持するためのシステムも取り入れられている。「自由度を上げれば上げるほどリスクも増える」と語る並木氏は、社内のさまざまなデータと接続するためのハブとなる「MCPハブ」を設計に組み込んだという。2カ月間で100を超えるワークフローが作られるほど急速に構築されるエージェントそれぞれが既存の社内データやAPIにアクセスすると「接続経路の管理は容易にカオスになる」とし、それを管理できる機能を持つ。ゲートウェイとしての機能のほか、登録されているエージェントを可視化するカタログを備えることで、エージェント開発者は細かい仕様の検証や接続管理、データの利用権限などを意識しなくても開発できるようになる。一方で、プラットフォーム管理者も、誰がどのエージェント経由でどのようなデータを使ったかを追跡でき、エンタープライズレベルの統制が実現できるようになる。
そして、さまざまなエージェントからどのエージェントが最適か、ユーザーの一言から最も得意なエージェントを瞬時に見つけ出すため「エージェントルーター」を開発した。要件として並木氏は「ユーザーの意図に合ったエージェントを選択」することと「スピード」の両立を挙げ、自然言語の裏にある要素を解読し、最適なエージェントを選択できるように、先述のエージェントカタログに登録されたプロフィール情報を中心としたメタデータから絞り込み、ユーザーの言葉や文脈、利用可能なツールを見ながら順位を付けて実行する。選択結果は、継続的に評価しており、精度と速度の向上を図っている。
また、高度なパーソナライズを実現すべく、「ロングタームメモリー」機能を導入している。ここでは、ユーザーとエージェントの対話履歴を要約して圧縮し、メモリーバンクに構造化して蓄積している。単なるログ保存ではなく、検索して応答に活用できる形で保持する仕組みで、エージェントはこれを使ってよりパーソナライズされた応答を返している。
ただし、すべてをそのまま記憶しているのではなく、「一時的な予定」や「昔の好み」「生活習慣」「センシティブな情報」など、データの種類により異なる方法で記憶、活用している。並木氏は、「Agent i」が「もう1人の私」として振る舞うために「何を覚え、何を更新し、何を忘れ、何を守るべきかを判断する必要がある」と指摘。これに加え、要約や検索、ランキング、アクセス制御、データ保護などの技術要素が関わり、意味のある記憶を適切なタイミングで使えるようにしているという。
また、「今後のチャレンジ」として、このロングタームメモリーのデータと同社のほかのサービスが蓄積したユーザーデータをリアルタイムで集約する「メモリアグリゲーター」を構想しており、同社でしか提供できない高精度なパーソナライズを実現するとしている。
大規模企業のAX
講演の後半では、朴氏から企業の「AX」について語られた。AXを進めるにあたり朴氏は「小さい組織なら比較的AIへの転換は早い。しかし、30年以上の歴史があり100を超えるサービスを持ちグローバルで複雑な企業では話は変わってくる」と同社におけるAXの困難さを語った。
AXを推進するにあたり、同社内では37の社内横断プロジェクトを立ち上げ、社内向けのプラットフォーム整備やソリューション開発などを通じて「AI Ready」な状況を作った。全社員のAIネイティブ化を進める取り組みも進めており、誰でもAIを活用できる環境を構築してきたという。
朴氏は、同社のAXについて次のフェーズ「Execution」(実行)へ移ろうとしていると説明する。これまでも個人や一部領域で大幅な生産性向上が実現できており、これを組織やサービスレベルまで拡張することを目指している。たとえば、これまで提供してきたサービス、いわゆるレガシーサービスでAIコーディングを推し進め、プロダクトのリードタイムの短縮を図るとしている。






























